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みんな心で蛍光灯割ってる

 ちょっと外出ただけでまるで海水浴に行ったような日焼けのヒリヒリ感、クーラーきいた部屋にいても、熱中症かな? と思ってしまうけど、それは冷房きかせすぎなのかもしれない。先週まではゲリラ豪雨に注意、とか言ってたのに、一転してこのカンカン照りですよ。そんな先週のこと、車でみなみ会館へ。まだ長袖がいるかな、傘はどうかな、とかそんなことを思っていた頃です。

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 葛西純、職業はプロレスラー。といっても主にデスマッチ専門のレスラー。デスマッチ専門レスラーや団体があるというのは90年代のFMWやW☆ING等々で知ってたけど、今もなお続いていたとは。そんなプロレスは好きだけど、そこまでディープではなかった自分が初めて真っ向から見るデスマッチドキュメンタリーが『狂猿』でした。

 普段は大柄で前歯のない顔をくしゃくしゃとさせ、どこか愛嬌のあるおじさんが、リングに立てば蛍光灯をバンバンぶつける、割る、リングを炎に包む、脚立からダイブする、竹串を指す、剃刀で切る……もはやプロレスという概念をどこかに置いてきたすさまじい死闘を繰り広げている。そのすさまじい試合内容に、はじめは『やりすぎかも……』と思いつつ、なんだかおかしくなってきて、心の中で声援を送っていた。だってジャイアント馬場は『プロレスラーがリングの上では何やってもいいんだ』って言ってたし。これでいいのだ。

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 けがによる不調から回復した葛西選手を待っていたのは、コロナ禍による興業の休止。アメリカ遠征という新しい道も見えてきたのに、それもダメになってしまい、すっかりやる気を失っていく。傷だらけの体が小さくなっていく。映画はそんな葛西選手の姿と同時に彼の生い立ちや関係者のインタビューを交えた構成になっている。

 デスマッチに選ばれた男とでもいうべき葛西選手の嬉々とした、鬼気とした表情にパフォーマンスが客を大いに沸かせる。どこかお笑い芸人にも通じる『いかに受けるか』を真剣に考える人なのだ。一級の猿ターティナーであり、数々の凶器と技に加え、傷だらけの体もまた、彼の武器の一つなのだ。

 ようやく興業も開催され、彼の新たな目標が見つかる、スポーツ映画らしくタイトル戦だ。プロレスという非日常の世界で、蛍光灯が常備される試合という異次元の世界。結末はどうでもいい、いかに客を沸かせ自分が奮い立つか、なのだ。邪道でありつつスポーツものの王道、なによりも自宅で黙々と凶器を作っている姿がほほえましく、自室やマイカーに飾られた怪獣ソフビが気になった、そんな映画でもある。

 さあ、今週末は『ヘドラ誕生祭』ですよ! 

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