血まみれ十代と家族愛
8月の終わりにまとめてみた映画あれこれ。
8・31みなみ会館三連荘。まずは『ヒルコ/妖怪ハンター』。
劇場で見るのは30年前の初公開以来ではないか? あの時はすっきりしない感じがもやもやしていたけど、そんな痛快なお話ではなかったのだ。塚本晋也監督が諸星大二郎原作をベースに、少年ドラマシリーズとウルトラQと死霊のはらわたと物体Xを混ぜ込んで、自分のフィールド(舞台が『塚本中学校』)で思う存分暴れた映画なのだった。美しいヒロインは、主人公が行動した時点でもうすでに人間ではなくなっているという展開は切ないし、友人たちもまた次々と化け物に代わっていく。孤独になった主人公の少年を慰め、そして共に戦うのはこれまたトラウマ持ちの考古学者だった。スプラッター描写にメカニカルパペット、人形アニメ、操演、ハイビジョン合成と小規模ながら特撮技術を駆使した贅沢な映画でした。血はぴゅーぴゅーでる。
続いて『ターボキッド』。7年前の作品が『サイコ・ゴアマン』の登場によって再浮上。同じカナダの映画で、80年代テイストのSF低予算映画ということで共通項が多いから、ということらしい。
核戦争後の1997年、悪の支配する荒野に、ヒーローに憧れる少年が敢然と戦いを挑む、登場人物は全員自転車移動! 自転車版マッドマックスといえばそれまでだけど、てっきり自転車テクニックを駆使して戦うものとばかり思っていた。でもちゃんと降りて戦闘。それぞれが持つお手製武器による血まみれの肉弾戦。主人公はヒーロースーツの装着していたレーザー光線で戦うけど、辺り一面に肉片が飛び散る破壊力。チェーンナックル、ハンマーヌンチャク、飛び出し電動鋸に、ちぎれた上半身が乗っかってリアルピグマン子爵とかさらに数が増えて人間トーテムポールとか、馬鹿なアイデアを考えるのはとても楽しそう。血まみれ描写はもちろん、ヒロインの首チョンパとか、自転車アクションとか『ヒルコ』との共通点もあった。血はぴゅーぴゅー出る。
そして最後に『サイコ・ゴアマン』おかわり。宇宙着ぐるみ怪人バトルに大満足。狂暴なドラえもんをてなずけるさらに凶暴なのび太。宇宙の危機と家族の危機、何度見てもルールがわからないクレイジーボール。なんだろうか、この中毒性は。思わず輸入盤ブルーレイを買いそうになるのをぐっとこらえての劇場鑑賞。残酷だけどしつこくないところがいいのかも。三本とも少年少女が主人公の、血まみれジュブナイル。8月は『サイコ・ゴアマン』に始まり『サイコ・ゴアマン』で終わってしまった。
そして翌日は映画ファーストデー。9・1防災の日にふさわしい『白頭山大噴火』を。タイトルに偽りなく、冒頭から中国と北朝鮮の国境にある活火山、白頭山が大噴火する! その影響は韓国、ソウルにも甚大な被害をもたらす。このままだと半島が沈没してしまう。そこで、北朝鮮の核弾頭を盗み出して、白頭山で爆発、その動きを静めるという無茶に無茶を重ねる作戦に出る。ミッションを実行するのは実践経験のない爆弾処理班。隊長はじめ、みんな頼りないメンバーだけど、和気あいあいと決死の作戦へ。手引するのは北朝鮮の二重スパイ。まず収容所から彼を救出し、核弾頭のありかを教えてもらうのだが、素直に話を聞く相手ではない。北朝鮮軍初め、米中の思惑の中、プルトニウムを積んだ呉越同舟の珍道中。銃撃戦にカーアクション、もちろん災害スペクタクルも織り交ぜるというてんこ盛り状態。さらにベースには家族愛があるから、韓国映画は娯楽に貪欲である。マ・ドンソクが腕力を封印して地質学者を演じる意外性。『日本沈没』の田所博士ポジションだ。
続いて『OLD』。あのシャマラン監督の最新作だから見ないわけにはいかない。もうこの人の映画はどんな落ちが待っているのか、それだけで期待してしまう。
とあるリゾート施設の秘密のビーチを訪れた数組の家族。おかしなことに子供の成長が早くなっている。さらには大人にも老化の兆しが表れ……なぜそうなるのか、どうすればこの異変を脱することができるのか? 謎解きミステリーものである。大どんでん返しではないものの、『あぁ……そうですか』と思うラスト。異変も怖いが、認知症が加速することや、発作が怖い。シャマラン映画はあまり内容は詳しく書くのは憚れるので、これまで。
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