空に挑む男と地べたを這う男
先週のことを忘れないうちに。
午前十時の映画祭『ライトスタッフ』を。三時間半近い長尺ながら、一気に見せてくれました。宇宙開発に携わった男たちの熱いドラマで、乱暴な言い方をすれば『トップガン・マーヴェリック』の冒頭20分を三時間強に伸ばしたような映画。いやこっちのほうが先か。戦後ノアメリカ。音速の壁をなんとか超えようと悪戦苦闘するテストパイロットたち。『トップガン』のトムクルーズはマッハ10の壁に挑戦していたが、牛のクソにも段々があるの例え通り、いきなりマッハ10ではない。それよりもはるか昔、その第一歩を踏み出そうと空の男たちはもがき続けていた。
そしてその壁を越えた男がいた。チャック・イエーガーだ。空を引き裂くドン、という音とともに偉業を成しえた彼はさらにその先を目指す。そして彼に落ち着け追い越せと空に挑む男たち。そして音速飛行が可能になった時、アメリカが次に目を向けたのがさらにその上、宇宙だった。おりしも米ソ冷戦時代、ソ連に負けてなるものかと宇宙開発に着手したアメリカ政府は選りすぐりの精鋭を7人選び、宇宙への冒険の夢見るのだった。
しかし、チャックはその選から漏れてしまう。物語は7人の精鋭と、彼らを奮い立たせるきっかけの一つでもあるチャックのそれからを交互に描いていく。ロケット発射が成功したなら、次は有人宇宙飛行、さらには地球周回軌道への挑戦……。男たちが笑い泣き、道への挑戦を続ける。一方チャックもまた、自分自身への新たな課題へと挑戦していくのだった。
空と宇宙に挑んだ、いい顔した男たちのドラマ。宇宙への遠い道のりを小気味よく見せていき、長尺だけど、だれない。でも休憩はあったほうがいいかもしれない。劇中にあったように尿意との戦いをリアルで体験することになるから。
実際の映像に織り込まれる精巧なミニチュアによる特撮も違和感がない。夢なんて諦めても次にまた新しい夢があるかもよ、そんな気分にさせてくれた。
名もなきパイロットたちはマッハ1に苦戦していたけど、こっちは60キロの壁に苦戦していた。あんな大掛かりな装置や機械を駆使したマーキュリー計画に比べてこっちはたかだか100ccのスクーターだ。ようし、とさび付き、穴が開いてへんな音が出るようになったマフラー、フルスロットルできなくなったアクセルワイヤーを交換し、シートも張り替えた。まるで新車のように生まれ変わったマイマシン、60キロの壁もすいすい超えられる。早くこいつを駆って遠出したいものだ。なので、今日はこの辺で。
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