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バカと巨人と魔獣、そして亀

 先週のことを書こうと思っていて忘れていました。だから備忘録というのか。
 先週はまず梅田で『梅切らぬバカ』を。シネ・リーブル梅田は一昨年元日の『ゾンビ』以来。絶賛再開発中の新梅田シティにぽつんと立つバベルの塔、梅田スカイビルの映画館。そこにたどり着くまでが一苦労。大阪駅からだと近いのかな。

『梅切らぬバカ』は知的障害の息子とその母の姿を静かに、淡々と描く映画。障害者を扱ったフィクションはやたらと彼らを美化したりする傾向があったりするのですが、これにはそんな奇跡もビッグイベントがない。いよいよ老々介護が迫る中、息子をグループホームで住まわせるが、ほんのちょっとした事件が起こる。もともと障害者のグループホーム建設に反対する住人もいれば、彼らを受け入れる住人もいる、主人公たちの隣家の家族も最初は訝しがっていたが、最後にはお互い打ち解ける。なんてことない、よくある話を飽きさせずぐいぐいと見せ地区のは夏木マリさんと塚地武雅さんの親子の関係がしっかりと、そして面白おかしく描けているから。塚地さんの障害者演技がまるで本物のようで、『障害者あるある』が出るたびに場内は笑いに包まれていた。たぶん、ご家族にそういった方がいるのではないか。大きな盛り上がりもミラクルもない、でも面白い映画なのです。どこかの町の、とある親子の日常を切り取ったようなお話でした。
 でも、グループホームを一人で切り盛りするのは大変やぞ、と同業者は思うのでした。

 梅田は広い、遠い。スカイビルから大阪駅へ。東急ハンズで行われている『平成ガメラ梅田にあらわる!』を見に行く。


 撮影で使ったイリスの頭部とガメラのマケットが展示してあり、あとはチョットしたガメラショップ。もうすぐガメラ降臨祭もあることだし、心の中にガメラを置いておくにはちょうどいいタイミングのイベントでした。

 クリアファイル、書籍等を購入し、今度は大阪駅前ビルの地下へ。梅田は遠い、広い。
地下の古書店で今度はゴジラ関連をあれこれと購入。

 日にちが変わって、土曜日、今度は京都へ。いつものみなみ会館。キネピアノという、ピアノの生演奏で見る無声映画というイベント。出しものは『巨人ゴーレム』。圧政に苦しむユダヤの民が作った泥人形が命を吹き込まれ、暴れまわる……という筋書きは後に『大魔神』に翻案されたのだけど、これがなければ大魔神もマジンガーZもなかったかもしれない、そう思うとがぜん見たくなってきた。

『巨人ゴーレム』は百年前の作品だが、ミニチュア、合成に特殊メイクという当時の最新技術を駆使し、さらにはゴーレムが高い塔に上ったり、少女と戯れれながらその命を絶つ等々、『大魔神』のみならず『フランケンシュタイン』『キングコング』やのちのモンスター映画の片鱗を見せている点に驚いた。まさに原点である。

 映画の上映前後には無声映画についてのトークも。無声映画とモンスター映画の歴史を学ぶことができました。人間やってることは基本的には変わらんのだな、と思いました。


 そして続いてみなみ会館で着ぐるみホラー『ドーン・オブ・ザ・ビースト魔獣の森』を。最古の怪物映画から最新の怪物映画へ。配給はあの『食人雪男』のトカナで、雪男の次はビッグフットのお話である。ビッグフット探索に出かけた学生グループが山小屋で遭遇する恐ろしい出来事。一年のある月にだけ現れる森の悪霊とその配下の食人鬼たち。いわくありげな書物に描かれるおぞましい姿。女学生がミイラ化した死体の首からペンダントを外し、身に着けたとたん(そもそも死体の装飾品を身につける神経がよくわからないが、落ちてるものを拾ってひどい目にあうのはホラー映画あるある)、悪霊たちが復活した。なるほど宣伝文句にもある『死霊のはらわた』×『ゴジラVSコング』のテイストはほんの少しある。でも『ゴジラ×コング』要素は? というか、途中でビッグフットのこと忘れてしまっていた。キャラが渋滞してしまってるんですよ。で、いろいろあって、最後に一人残った主人公に迫るし食人鬼たち。もはやこれまで……と思ったその時、やってきました、ビッグフットが! そうだった、劇中で『ビッグフットは人間に石を投げて警告する』とか言ってた。それと何度か窓ガラスにコツコツと何か当たってた。あれはビッグフット本人がやってたことだったのか。って押しが弱いから伏線になってないよ。ともかく、森を荒らすやつらは許せんとばかりにビッグフットがバッタバッタと食人鬼たちをなぎ倒す! ビッグフットの造形は『食人雪男』のそれとは違い、かなりしっかりした着ぐるみでした。『フランケンシュタインと地獄の怪物』のモスンターのがっちりしたボディに『北京原人の逆襲』っぽい頭部が乗った、いい感じの造形。ついでに主人公は悪霊に取りつかれたガールフレンドを焼き殺します。ヘタレ男が色々あってバケモノに怖じないタフガイになっていくのも『死霊のはらわた』っぽいと言われれば、そんな感じもする。ホラーかと思えばモンスターVS映画だったので、なんだか得した気分になりました。でもこれが面白く見れたのもあのグズグズな『食人雪男』があったからかもしれません。そんなことばかり書くとあのもう二度と見ることもない『食人雪男』が愛しくなってしまう、困った。

 と、先週は障害者から、古今東西の科物を堪能した、まあいつも通りな休日でした。


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