都市木造への考察② 木材利用と森林保護の両立|産地へのロマン
国土の4分の1が人工林の国
日本の国土のおよそ2/3が森林と言われている。歴史を遡ると、そのうちのおよそ4割が戦後に植樹された人工林であり、つまり国土の1/4が人の手によって形成された「人工的な自然」ということになる。レジャーやキャップで我々が目にする針葉樹を基本とした森林のほとんどがそれらに該当する。この「人為的に作られた」森林は昨今の土砂災害や水不足、花粉等々の諸問題と深く関係していることもあり、現代を生きる我々にとってこの森林課題への積極的なアプローチは社会責務とも言えだろう。また、戦後から現代にかけて十分に育ち「使いどき」を迎えている樹木の合理的な活用は、木を「伐って、使って、植えて、育てる」森林のサイクルを形成していく上でも非常に重要な社会課題なのである。
木材利用促進法による「木材利用ブーム」
このような背景より、平成22年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(公共建築物等木材利用促進法)が定められ、木材全体の需要拡大を通して、林業の持続的かつ健全な発展を図るために、国が率先して木材利用に取り組む基本方針が定められた。
この法律の制定を皮切りに、ローカルである地方自治体おいては積極的に木材利用促進が進められ、「〇〇スギ」「〇〇ヒノキ」といったブランディングも進められている。これは、地産地消の概念を越え、「地産外消(地元で生産したものを都市部など他の地域で消費)」を前提としたもので、地方と経済、環境の循環が求められるSDGsの概念をまさに具現化する動きが進められている。
このような時事的な動きは、急速な「木材利用ブーム」を引き起こし、建築業界においても中大規模木造おいて、まさに百花繚乱の時代を迎えようとしている。筆者が実務の中で木造や木質化に邁進する動機や意義もここにあると言えるだろう。
違法伐採の現実
一方、何かが加速的に変化し成長する過程には副産物とも言える課題も見え隠れする。「木材を積極的に活用することは森林をサスティナブルにする」という概念をよそに、東南アジアやアフリカなどの熱帯雨林においては、大規模な違法伐採が行われており、木材利用が環境破壊に直結する悪しき慣習が常態化している。木材利用と森林保護の両輪に向けては、それぞれの立場においてリアリティのある課題解決が必要になるだろう。
森林認証制度の制定
こうした森林破壊への対策として定められたものが「森林認証制度」である。これは、適切に管理された森林から伐採された木材を認証マークとしてラベリングすることで、供給される木材とその生産プロセスそのものを評価するものである。森林認証制度は、国際的な制度として「国際NGO森林管理協議会(FSC)」や、国内の「緑の循環認証会議(SGEC)」などがある。森林認証制度の普及率はまだ道半ばのようだが、国際的な競技大会における施設への木材利用においては、認証材の利用が義務付けられる傾向にあり、スポーツや文化の祭典とともに木材の価値が再認識され、森林保護への動きが加速されることが望まれる。
産地へのロマン
「木材は出来るだけ利用した方が良い」という正義と、「森林の不法伐採は許さない」という正義の両立への道筋は、適切な制度の上で、需要側、供給側のそれぞれのリテラシーの向上が必須になるだろう。
また同時に、木造建築の設計に主軸におく筆者においては、建材のその産地についての考察は、コンクリート造や鉄骨造にない文化的想像を可能にさせてくれる点において、そこにロマンを感じざるを得ないのである。
(文:大庭拓也)
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