都市木造への考察⑩ 木は使えばよい?
「木を使う」=「環境に良い」は本当だろうか?
カーボンニュートラルやSDGs、木材利用促進という社会の大きな流れの中で、ますます都市や建築における木材利用がトレンドとなってきている。
組織の中で専門の活動を始めて数年が経ち、「木づかい」には適切なアクセルとブレーキが必要であることを学んだ。
その中で最近考えていることを整理してみる。
木は使うだけではダメ
一つ目が、戦後拡大造林の中、植えられた樹木がまさに「切りどき」となっていること。この木材をしっかりと使わないと、適切な森林循環に繋がらないという歴史的、物理的な課題である。
だからと言って、木は「使えば良い」のではなく、切った分は新たに「植林」が必要であることを忘れてはならない。建築や都市に一時的に貯蔵した炭素はいつかは必ずCO2として排出される。植林し新たな樹木が炭素を森に貯蔵していかないと、脱炭素の取り組みとは言いづらい。
コンセプトを実行できているか
二つ目が、木材を利用する理由と結果の結び付きの重要性について。「木づかい」において、例えば設計者が掲げる設計コンセプトが「脱炭素」の場合は、植林によるCO2貯蔵や建築で活用する木材の処理(不燃や耐火)のことを、「地産地消」の場合は、そのサプライチェーンやトレーサビリティについて真剣に考える必要がある。
それでも木が好き
三つ目が、とは言っても木材やそれが作り出す空間や景観は、我々日本人によって馴染みがあり、愛着が持てるものであること。
この文化的かつ心象的な「気持ち」が第一優先なのであれば、つべこべ言わずそれはそれで木を使う合理的な理由になり得る。
新しいトレンドへ
「木を使う」ことに対する社会的な要請や、物理的な課題、心象的な求めに対して、そのプロジェクトにおいて何にフォーカスし、またそれらをどうバランスして価値に繋げるかが、「設計」に関わる大事な責務である。
自分が担当した木質建築が長く快適に利用してもらえるように、建築に活用した木材の産地が建築の解体時に豊かな森になっているように、この当たり前のことを、当たり前に図面にし、語れる設計者でありたいと自問自答している。
建築知識さんに先日取材頂いたインタビュー動画
(文:大庭拓也)
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