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都市木造への考察⑨ 公共循環木質外装|ウッド・ストックによる新しい都市景観

公共空間と向き合い、循環し続ける木質外装の提案。人々の多様なアクティビティ、アメニティを創出し、それらを永続的に実現する社会システムを構築を目指す。

パブリックスペース/ファサード とは

 パブリックスペース及びそれらと向き合うファサードは、多様な人にアメニティを享受し、アクティビティを誘発すべきものであると考える。また、それらには持続可能性が求められ、官民が共同でそれらを構築、運営しいくことが必要不可欠である。現代のパブリックスペースを考えるにはこれらの複合的な課題を同時解決する必要がある。

多様なアクテビティ、アメニティを生む 
 多様なアクティビティを実現する為には、それに対応し得る可変性、創造性を担保した仕掛けが必要であると考えた。本計画では、自由に形状を変化させることができる、木質パネル(カーフベンディング加工)をファサードに配置し、パネルを自由に着脱可能とすることで、人々のパブリックスペースにおける多種多様なアクティビティを実現し、ファサードにおいても、テラスでの営みに応じたアメニティを創出する仕組みを考えた。

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持続可能性を担保する
〇 「サーキュラーエコノミー」を前提とした外装システム 
 木質パネルは間伐材を利用することで、日本の林業の再生に貢献する「地産外消」のサイクルを生成する。木質パネルは寸法等の規格化を図り、リサイクル、リユースを徹底することでイニシャルコストを最小限に抑える。また、外装に配置されるパネルは通風、採光等をコントロールする環境装置としての役割を果たす。

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〇 企業の広告媒体として    
 木質パネルを提供する各企業は、企業理念やイメージ、製品情報等を積極的にパネルに記載し発信する。パブリックスペースを利用する人々はそれらの情報に触れ、それらの企業への認知が進む。また、リユースによる日本各地への展開により、強力な広告媒体としての役割を果たす。

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〇 防災拠点として
 ファサードに配された木質パネル群は災害時における防災ストックとして位置付け、仮設建築や什器備品、また電力供給や飯盒炊爨等に用いるエネルギー源としての利用を想定する。

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新陳代謝を繰り返す「木質循環公共外装」
 木材はエイジングしていく。また、木質パネルの配置も天気、季節、人々のアクティビティに応じて刻々と変化していく。このファサードにおけるランダムネスは、時間、環境、人々の流れによって形作られ、生まれ変わり続ける。
 伊勢神宮・法隆寺・宇治橋などの1000年を超え、今尚現存する建造物がある。これらは丁寧な手入れをして長い間形を保っていくという文化があるからである。本計画は老朽化する木質外装が、連動するパブリックスペースでの人々のアクティビティに伴い更新され、新陳代謝を繰り返す「生きる」建築を目指す。

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ウッド・ストックとしての都市景観
 昨今ウッド・ショックの課題が浮き彫りになっている。これは安定した木材の需給関係が求められる中、ストックに関わるリスクを誰が担保するかという議論にも繋がるのではないか。都市において木材を使いながら保存し、持続可能な循環を作りながら、同時に新しい都市景観を形成する社会について改めて考察したケーススタディである。

(文:大庭拓也


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