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JJF2024後の独り言

 初めましての方は初めまして。Juggling Donuts 4回生の中村拓也です。以下、Japan Juggling Festival 2024 Championships(以下CS) の演技が終わった直後に書いた日記です。感情がぐちゃぐちゃすぎて、文章が稚拙なのはお許しください。


9月14日
3ドロ(3コントロール、4導入、4FTS)
 いつものように、ミス数とドロップ箇所を書き留めた。何の面白みもないただの呪文のようなものだが、自分にとってはそれ以上の意味がある。
 2年前にCSに落ちた。あの時は自分が落ちたこと以上に、中学生の頃からずっと一緒に切磋琢磨してきた同期が通ったことが、何より悔しかった(南と廣岡、ごめん!)。もちろん通るわけないと思っていた。でも、それでも、何で自分は通らないんだろう、足りないものは何だろう。真剣に考えた。自分のジャグリングは何だろう。何のための、誰のためのジャグリングなのだろう。考えて分からなくて、ちょっと分かってまた分からなくなって、そんな模索を繰り返した2年間だった。
 CSを終えてみて、不思議な気持ちになった。もちろん演技内容の批評は山ほどある。よかった点も、反省点も両方。でもそういう技術的なことは一旦置いておく。今の感情は、達成感でもない、後悔でもない。虚無感といったところか。どんな感情なのか分からない。今の自分は、笑顔にもなれるし、泣くことだってできる。

 誰もいなくなった練習場で、1人日記を書いてみた。   


 こんなことをしていたら、閉会式のリハを完全に忘れました。申し訳ありません。

 知らない人も多いと思うので、簡単に自己紹介すると、私は2015年に東京の武蔵中学校に入学し、ジャグリングに出会いました。そして中高の間、4年程ディアボロをメインに活動しました。大学からは京都に移り住み、現在はJuggling Donutsに所属しています。今年でジャグリング歴10年目を迎えます。

 私が、本格的にJJFを目指そうと思ったのは、大学入学時です。ジャグリング自体、大学以降は続ける気はなかったのですが、同期からの強い説得と、中高でやり残したことがあったので続けることに決めました。その際、ダラダラ続けるのが嫌だったので、「昔からの憧れであるJJFに出場する」という目標を立てました。ここではJJF2024の舞台に立つまでの軌跡を、特に過去2年間でやってきたことを、少しだけお伝えできればと思います。

 上述のように、私は2年前にもJJFに挑戦したのですが、その時は予選落ちし、同期の活躍を複雑な気持ちで見つめることになりました。あの時、落ちた原因は、枚挙にいとまがないのですが、大きな要因(だと自分で思っているもの)は、基礎力の無さと、演技構成の主張の弱さです。この2点を、2年間で徹底的に改善しました。

 まず、基礎力。ここでいう基礎力というのは、基礎技の安定度、フォーム、再現性を指します。これに関しては、中高からの怠慢が原因なのですが、とにかく私は、2年前CSに落ちるまで、基礎練をやってこなかったのです。重要性に気づいていなかったのと、面倒臭いのと両方ありました。ただCSに出るような上手い人はみんな、基礎力がエゲツないんです。そのため、徹底的に基礎を見直しました。特に基底技の基礎練は絶対に必要です。練習の中で必ず基礎を見直す時間を設け、時に動画を回したり、お手本動画と比べたりし、校正を繰り返しました。今回CSで行った技も、まずは技を分解して、段階的に要素を取り出し、それらを1つ1つ、綺麗に再現することを、全てのシーケンスで、毎日行っていました(一部、Instagram にrecent basicsシリーズであげています)。特に、最初のうちは、練習時間のほぼ全てを基礎練に充てていました。具体例を挙げると、今回CSで行った2ディア、バックコラムのシーケンス。このシーケンスの基礎練は、2コラムのマルチアップとマルチアップピルエットです。基礎練はあくまでミスらないことが前提なので、安定している技を選びます。まず、マルチアップ。これがフロントで綺麗にできなければ、まずバックでは無理です。練習方法としては、コラムを基底として単発→連続(4カウント、2カウント)の順番にマルチアップを行います。特に技間のカウント数(ここではコラムの回数)が少ない条件下では、多少のマルチアップの起動の乱れが、ミスに繋がります。このようにして上手くいく起動を体に染み込ませます。マルチアップピルエットについても然りです。こちらはフロント→バックの流れを意識した基礎練ですが、同様に高さ、軌道、タイミングを覚えさせます。これらをやってから、初めてバックコラムの練習に入ります。もしそれで出来ていないのであれば、最初からやり直しです。といったことを全シーケンスでやります。

 続いて演技構成についてです。そもそも、良い演技構成とは何を指すのでしょうか。解釈は人それぞれだと思いますが、現在、私が思う良い演技構成とは「その人のジャグリングの良さが、技•シーケンスの順番、流れといった一次的要素によって簡潔にまとめられ、それらが楽曲、身振り、キャラクター性、照明などの二次的要素によって何倍にも増強されたもの」です。まず一時的要素について。こちらは色々な方がすでに指摘されているので、特に詳しくは書かないですが、構成のまとまり具合は、技の一貫性と緩急により決まる部分が大きいと思います。一貫性を高める要素は、技の段階を追った説明(3でやった技の上位互換を4でやるなど)、演技場所による系統の統一、蛇足な技の排除、などでしょうか。緩急は、シーケンス自体の長さの調整、技•シーケンス間の時間の取り方(タメなど)、盛り上がりを考慮した技配置(盛り上がる技と、落ち着いた技が上手く入り組むと効果的)によって決まると思います。続いて二次的要素、私自身は深い議論ができないので、参考になるかは分かりませんが、自分なりにまとめてみました。ゲストステージなどを観ているとよく分かるのですが、いい演技には、技術そのものによる感動とは別に、何か琴線に触れるものがあるのです。思うに、彼らには、彼らの世界観についての、とても強い主張があります。その主張は、一瞬にして観客のもつ個人的な欲望を遥かに凌駕し、会場全体を真白なカンバスに塗り替えるのです。おそらくCS でここまでは求められていないのですが、最低限、自分の中での主張はハッキリさせておくのが良いと思います。というのもそれをもとに、楽曲、身振りが決まるものなので、根が揺らいでいては、全体的に浮ついた演技になるのが必然なわけです。今回の演技の自分の主張は以下のようなものです。
「舞台は朝の森の中。清々しい空気感の中で、次第に活力に満ち溢れていく姿を、軌道の美しさと共に表現する」
実際にこれが、どこまで伝わったかは分からないですし、若干こじつけが混じっているのですが、基本これを軸に演技を組んでいました。結果ある程度まとまりのある世界観が作られ、一部の人にはちゃんと刺さったみたいなので良かったです。


 中身が軽薄ですが、以上2点が、この2年間の収穫です。最後に2年前CSに出した時の予選動画のリンクを貼っておきます。あくまで悪い例として参考にしてください。今になって思えば、あの時からジャグラーとして随分成長したと思います。支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。


 駄文でしたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。もし今回の演技が誰かの心を揺さぶることができたのなら、それが本望です。


2024.09.16 中村拓也

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