
2019年2月 カンボジアでプレーする日本人選手を中心にBLS講習会を行いました。
2003年、FIFAコンフェデレーション杯準決勝、当時28才だったカメルーン代表MFヴィヴィアン・フォエ選手が心臓発作に見舞われ、亡くなった。
2007年には将来のスペイン代表の主力選手として期待されていたMFアントニオ・プエルタ選手が不整脈源性右室心筋症により命を落としてしまった。彼はピッチで倒れたのち、一度は回復し、自分の足でロッカールームへ下がったがその後に再び命を落とし、帰らぬ人となってしまった。
2009年にはエスパニョールのダニ・ハルケ選手が遠征合宿で練習を終えてホテルの部屋で休んでいるとき、急性心筋梗塞で亡くなった。
2011年夏には松田直樹選手が練習中に倒れ、そのまま亡くなるという悲劇が起きてしまった。これは皆さんも忘れられない記憶として残っていると思います。
最近では2016年、ルーマニア1部リーグのディナモ・ブカレストに所属するカメルーン代表MFパトリック・エケング選手が、試合中に命を落としている。
サッカーは人々に感動を与えるスポーツである。その現場で、これ以上だれかが倒れる姿は見たくない。それは起こってはならない事だと思います。
危険は人ごとではない。自分の身にも起こりうる。
自分が関わってきたアジアの国々のスタジアムの多くはAEDが設置されていません。もし、そのスタジアムで試合中に悲劇が起こってしまったらどうなるのでしょう。
僕がモンゴルリーグでプレーをしていた2017年に目の前で悲劇が起こりました。
友人の試合を観戦しに行っていた所、プレー中の接触で彼が意識を失いました。 僕は目の前で起こる初めての光景にショックを受けました。
試合中には救急車がスタンバイをしているのですぐに対応をして病院へ運ばれ無事に回復をしました。
当時の本人の心境などがブログに綴られています。
そんな経験もあり、こうした危険は誰しもに起こりうるものだと目の前で起こる光景に強く感じさせられました。
いま自分にできることはないだろうか。
しかしながら、AEDを1台設置するためには高額な費用がかかります。
・AED機器本体の購入費用
・メンテナンス料
・バッテリーや消耗アイテムの購入費用
などなど、簡単に設置できるわけではありません。だからこそ、危険を理解しているのにも関わらず、多くのスタジアムでは導入に至っていないのです。
では、何ができるのだろうか。まず、僕はAEDがない場合にできることがないのかを調べました。
すると、BLS(Basic Life Support)と呼ばれる一次救命処置という救命処置の存在と出会いました。
BLSとは
人間の脳は2分以内に心肺蘇生が開始された場合の救命率は90%程度であるが、4分では50%、5分では25%程度と大きく低下してしまいます。
そのため、事故が発生した直後に救命処置を行うことができるかどうかが大きく命運を分けます。
救急隊到着までの数分の間に「現場に居合わせた人」(これを「バイスタンダー」「市民救助者」と呼ぶ)によるBLSが行われるかどうかが救命率を大きく左右することになるのです。
救える命を、現場に居合わせた僕らが何もできないことにより、失ってしまうこともあるということです。
BLSの処置の方法
1、状況の確認
(1)周囲の安全を確認する。これは二次災害を防ぐためであり救助者の安全が最優先である。
(2)窒息があり得るかを見てとる。溺水、あるいは子供か。この範囲は即座に見てとれるし119番通報までの間でよい。BLSのガイドラインは成人の病院外での心原性心停止にメインフォーカスしているが、119番の通報の受け手は聞き取った状況から窒息があり得ると判断した場合には指示の一部が変わることがある。
2、反応の確認
傷病者の両肩を軽く叩きながら「大丈夫ですか?」などと大きな声で呼びかける。 目を開けたり、何らかの応答や目的ある仕草がなければ「反応なし」 心停止直後は引きつけるような動き(けいれん)が起こることもあるが、この場合は反応なしと判断する。
3、応援を呼ぶ
呼びかけに反応がなければ大声で叫んで助けを呼び、周囲の人に119番通報とAEDの手配を頼む。
4、呼吸の確認
(a)不自然な呼吸は死戦期呼吸(=心停止)の可能性が高い。これを見逃さない。死戦期呼吸があるうちにCPRを開始すれば救命率は高い。
(b)普段通りの呼吸があれば横向き(回復体位)にして救急車を待つ。
(c)10秒以内に普段通りの呼吸が確認できなければ呼吸ナシとしてあつかい、胸骨圧迫を開始する。早く見切ってもよい。10秒はそれ以上かけてはいけないという上限である。
5、胸骨圧迫(心臓マッサージ【CPR】)
胸の真ん中に手の付け根を置き、肘を真っ直ぐ伸ばし上半身の動きで、5〜6cm程度沈むように、100〜120回/分の速さで圧迫を繰り返す。毎回の圧迫解除時には胸が元の位置に戻るよう、完全に力(体重)を抜く。
6、気道確保と人工呼吸
訓練を受けていない市民救助者は、救急隊が来るまで胸骨圧迫のみのCPR を行うべきである。訓練を受けた市民救助者であっても、気道を確保し人工呼吸をする意思または十分な技術をもたない場合には、胸骨圧迫のみのCPR(ハンズオンリーCPR)を実施する。
以上が、AED到着までの流れを説明したものですが、この記事を読んでいただいた皆さんには是非、BLSに関しての知識を身につけてほしいと思います。
自分の目の前で救える命を失ってしまうなんてことはあってはならないです。
みんなが、知識を持つことでより安全な環境を作り上げることができると思います。
カンボジアにてBLS講習会を実施しました。
カンボジアでプレーする日本人選手、カンボジアサッカー協会で働かれている方をお招きしてBLSに関する知識を共有する機会を設けさせていただきました。
こうした講習を行うことにより、少しでも関心を持ってもらうことが需要だと思いました。
AEDがないならばないなりに、防げる努力を怠ってはいけないと思います。