写真_2019-10-31_13_56_03

建築は社会の中でどこにいるのか

つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝「欅の音terrace」が2019年のGOOD DESIGN AWARDにおいてBEST100にノミネートされました.
今年は応募総数4,772件で,そのうちグッドデザイン賞は1,420件,さらにそのうちの100件ということで,これは大変光栄なことなのですが,GOOD DESIGN AWARDは大賞・金賞・グッドフォーカス賞と,BEST100の中からさらに選考されるわけです.ということは,良くも悪くもBEST100止まりだったと.ということは,他の建築作品と何が違かったのかを反省する必要があるなと感じまして,なぜBEST100までだったのかについて雑感をまとめようと思います(あくまで超個人的主観なので,主催者側の意向は全く知りません.予めご了承を).


*****

最終的に大賞は「結核迅速診断キット」.グローバルな平和と健康のための,大賞に相応しい内容.
建築の中で一番評価が高かったのは,金賞のうち大賞候補まで選出された「Ginza Sony Park」,次点で金賞の「MITOSAYA薬草園蒸留所」,「須賀川市民交流センターtette」,「U-mkt」の3作品,加えてグッドフォーカス賞に「プライムメゾン江古田の杜・グランドメゾン江古田の杜」が選出された.

このうち,「欅の音terrace」と同じユニット(ユニット12:建築(戸建て〜小規模集合住宅))だった作品は無く,どれもより大きな規模のものだったが,それが結果を決める要因だったのか?

というと,少なからず,スケールメリットはあると思われる.例えば,ブランディングの仕方や資本力,テクノロジーの観点など,建築をより魅力的にするためのチャンスは多いためである.


ただ,最も重要だったのは,いかに建築的なプレゼンテーションをしないかだったのではないかと.

この建築は何を目的につくられ,ここで何が起き,何が実現されたか

というのは,建築のプレゼンテーションにおいて重要なコンテンツである.この時,プレゼンテーションの主語は建築になっている.


一方で,グッドデザイン賞を評価するのは,必ずしも建築系に限った話ではない.プロダクトデザイナー・グラフィックデザイナー・医療福祉関係・ディレクターなど,数ある領域の中で,建築家が位置づけられている.その誰もが納得する,共感できる,価値を共有できる内容であることが求められる.

つまり,グッドデザイン賞でより上位に評価されることは,社会的な価値として意義深い内容である,と審査員方に認められることである.BEST100に至るまでにもそのフィルターは入っているが,そこからさらに選出するとなると,大きなハードルがある.

確かに,より上位の入賞作品のプレゼンテーションを見ると,ストーリーがあって,グラフィックやプロダクト的な観点があって,社会的な意義を提示する中で,建築の話は全体の20%ほどしかない.そこがとても周到だったと思う.

翻って,自分たちのプレゼンテーション内容を見返すと,これは建築から見た話しかしていないのではないか,あるいは建築的なボキャブラリーでプレゼンテーションしてしまっているんじゃないか,と痛感してしまった.

他の分野領域・業界の人々に言葉を伝えたいとき,彼らにこちら側の(建築の)言葉を理解してもらうのは無理で,彼らと共有できる言葉に翻訳しなければならない.

同じ日本語で話していても方言の割合が多いと上手くコミュニケーションが取れないように,ジャーゴンばかりの話が伝わるわけがない.


だから,グッドデザイン賞において,私たちは建築的なプレゼンテーションをしない必要があったのではないか.

*****


あまりにも建築界は内輪の言語でしか話していないように感じるし,そもそも外の分野領域を意識しなさ過ぎているとも思う.

これは賞に評価されることが重要かどうかという議論ではなく,社会的に価値があると正当に認めてもらうための手段をいかに獲得するかである.

私たちはもっと沢山の言葉を話せるようにならなければならないし,沢山の人々と関わらなければならないし,同じ土俵で戦わなければならない.

改めてそう感じさせてもらった貴重な時間でした.

いいなと思ったら応援しよう!

若林拓哉|ウミネコアーキ
1991年神奈川県横浜市生まれ.建築家.ウミネコアーキ代表/ wataridori./つばめ舎建築設計パートナー/SIT赤堀忍研卒業→SIT西沢大良研修了