久しぶりに髪を切りに行った話。

美容室が苦手。
もうこれはかなりの苦手で、1年以上行っていない。
下手したら2年行っていないかもしれない。
髪型へのこだわりもなく、髪色も特にいじる興味はない。
だから、大きな鏡の前で、首にタオルやカットクロスを巻かれて、知らない人に髪を触られるのは非常な苦痛でしかない。
もちろん美容師さんは悪くないのだが。
(しかし必要以上に話しかけてくる美容師さんは個人的に害悪以外の何者でもない。)
こういうたまにしか行かない場所での人間関係が得意でない。
それで行くのが億劫になって、やめてしまった。

では、年中髪を伸ばしていたのかというと、そうではない。
髪は定期的に切っていた。
髪にこだわりはないが、もさもさ長いのは苦手なのだ。
だから、2ヶ月とかに1回は切っていた。
髪を切るのは自分ではなく、彼女。
私が美容室に行かないのを見かねて、いつの間にか私の髪を切ってくれていた。
もう何十回も切ってもらっている。
それなりに上達したとも思う。
しかし、やはり素人は素人である。
1年素人が切り続けると、頭のいろんなとこでちぐはぐなことが起こり始める。
パッと見は普通なのだが、よく見ると細かい部分や大きな部分で不具合が起きている。
それで彼女の方から、頼むから一度お店に行ってくれ、と言われたのだ。
まぁ、私もたまにはプロに切ってもらってバランスをリセットしないと大変だろうな、とは思っていた。

それで今日、本当に久しぶりに髪を切りに行った。
近所にある美容室。
世代を選ばないフランクな営業スタイルらしく、無理におしゃれを気取ることもなく、とにかく安い。
カットだけなら1500円なのだ。
これは素晴らしい。
「髪にこだわらないけど、1000円カットって自分から言っちゃうお店は怖い人間」は助かる。
久しぶりの美容室だったので前日から緊張していて、とにかく行きたくなかった。
予約の電話(予約の電話ほど苦手なものはない)などできるはずもないので、夕方直接お店に行ってみた。
受付で名前を書いて待っていると、すぐに呼ばれた。
店内には年配の方から若い人まで幅広いお客さんがいた。
恥ずかしさを少しでも緩和するためにマスクを付けて行ったのだが、着席するとすぐに『マスクを外してください』と言われた。
このご時世だから付けっぱなしでもいいかと思ったが、ダメだった。
そこからは、あっという間だった。
『なんか、普通に短めで。特にないので。』とだけ伝える。
そうすると、すぐにシャカシャカシャカシャカと切り始め、途中で軽くシャワーをはさみ、またシャカシャカシャカシャカと切って、はい出来ました。
『ぁ、オッケーです。』
これだけ。

あれ、昨日の夜から身構えていたのに。
入店から15分後にはお店を出ていた。
ちょっと拍子抜け。
でも、考えてみれば当たり前である。
たった1500円で人の髪を切るのに、細かい注文を聞いたり、意味のない世間話をする暇はない。
とにかく切って切って切りまくって、回転率こそがこの人たちの仕事なのだ。
まったく利害が一致していた。
私はほんの少しの間、無私になり、座っていればよいのだ。
そうすればスッキリ。
毎回お店に行くのはきついが、今度からはたまに行こうと思う。
ふぅ、勇気を出してよかった。
美容室に行くだけなのに勇気??と思う人もいるだろう。
意外と人間そんなもんである。
面接に行くために髪を切りに行くのが面接に行くことより嫌な人と、面接のために髪をバシッと決めたのはいいけど本当に面接に行きたくない人と、いろいろ。

結局、人間は得意不得意だね。
超どうでもいいね。