自動改札のQRコード化で歯車業界の今後を考える
■ 自動改札のQRコード化
2024年5月29日、関東の鉄道8社から「磁気乗車券をQRコード乗車券に置き換える」旨の発表がありました
これは、自動改札において、紙に塗った磁気に情報を記録して、自動改札機の中の磁気ヘッドで読み取る方法から、紙にQRコードを印刷して、自動改札機の前面に取り付けられたバーコードリーダーで読み取る方式への変更です。
皆さんの中には、最近は電車に乗るときにはsuicaなどを使い、磁気の切符はあまり使わないという方もいらっしゃるかと思います。
少数派になったとはいえ磁気の切符も残しても良いのではと思いますが、鉄道事業者にはQRコード改札に切り替えると以下のコストメリットがあるようです。
自動改札機は内部で切符を送り出すための可動部品が多く、故障対応やメンテナンスが必要だが、QRコード改札は可動部品が少ないので故障やメンテナンスが少なくて済み、コストが削減できる
磁気切符をリサイクルする際に、磁性体を分離して廃棄する必要があるが、QRコード切符は単なる紙なのでリサイクルコストが削減できる
時々、駅で係の方が自動改札の中を開けて何かしているのを見ますが、あれこれいじっていて大変そうです。また自動改札機の中は複雑な機械がぎっしり詰まっている様子を見ることが出来ます。
■ モノを回したり移動させたりする機械は減っている??
QRコード改札のニュースを見て気がついたのですが、最近は「内部でモノが回ったり動いたりする」機械が減っているように思いました。
例えば以下のような感じです。
その他にも例があるかと思います。
■ 機械の部品産業はどうなっているのか
このような「内部でモノが動く機械」を支える部品の産業は、どのような変化をしているのでしょうか。
そこで部品産業として「歯車」に焦点を当てて産業の変遷を見てみました。
具体的には経済産業省の「工業統計調査」を見てみます。
工業統計調査では、産業毎の過去からの統計情報を見ることが出来ます。
経済産業省の説明文は以下の通りです。
ちなみに工業統計調査は2020年に廃止になって、「経済構造実態調査」の「製造業事業所調査」になりました。データとしては似たものを取ることが出来ます。
産業の分類は以下の「日本標準産業分類」から検索して決定します。
日本標準産業分類は経済活動の基本的な分類方法で、補助金申請なんかでも使われていますね。
「事業再構築指針の手引き」に良い説明図がありましたので掲載しておきます。
歯車業界としては、日本標準産業分類の細分類2531「動力伝導装置製造業(玉軸受、ころ軸受を除く)」としました。説明文を見るとちょっと違うような気もしますが、自動車系は除かれているのでそれほど外していないでしょう。
産業の規模は「工業統計調査」の「製造品出荷額等」という情報を見ます。
期間はデータが取れる1985年から2021年までを追っています。
結果は以下の通りです。
比較のため、製造業全体の出荷額等と、動力伝導装置製造業の製造業計に占める比率も併せて掲載しています。
バタつきはありますが、動力伝導装置製造業の出荷額はそれほど減っていませんでした。
ただ、製造業全体との比較では比率が0.28% 程度で頭打ちになり、ピークを迎えているようにも見えます。
■ 中小企業診断士として
このような、何か機械の部品を取り扱う中小企業が支援先となったら、どのようにアドバイスするのが良いでしょうか。
まず現状把握として、取り扱う部品の提供先が、今後どのように変化しそうか見ることが大切かと思います。
もし部品の提供先が自動改札機のメーカーだとすると、あまり状況は良くないように思います。
その先はよくある話かと思いますが、技術を磨いて高度化・小型化し、医療用などを目指す道が一つ考えられます。
自動改札機の場合は、メーカーの一つであるオムロンは医療機器も作っていますので、そのまま取引可能かもしれません。
また、製造技術を活かして思い切って別事業へ転換するのもありかと思います。
なんだか診断士試験の事例問題のようになってきましたので今日はこのへんにしたいと思います。
IT系企業に所属する企業内診断士です。