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クレカで投資信託を積立購入する金額の上限が引き上げされた話

いきなりですが、現在、クレジットカードで投資信託が積立購入できます。
積立購入というのは、自分で決めた投資信託を毎月決まった金額分買うことができるサービスで、証券会社が提供しています。
今話題の新NISAとは直接の関係はありません。NISA枠を使っても良いですし、枠以外でも可能です。

クレジットカードを使うとはいえ、借金して投資信託を買う、ということではありません。
1回払い限定です。

何故わざわざそうするかというと、クレジットカードのポイント目当てだったり、毎月積立購入が設定がしやすかったりするからです。
証券会社への入金を忘れた、などが回避できるため、私も活用しています。
証券会社にとっても、グループのクレジットーカード会社への囲い込みなどに有用なのだと思います。

さて、2024年3月8日の内閣府令改正により、クレジットカードで投資信託を積立購入できる金額が月5万円から月10万円に増額されました。

その増額の方法が興味深かったので紹介したいと思います。

中小企業診断士として、法律関係の動向は気にしておく必要がありますしね(1次試験の受験科目にも「経営法務」の科目もありますし)。

■ なぜ今までは月に5万円に制限されていたのか

内閣府令(内閣府が出す省令と同格のもの)にこう書いてあるからです。

金融商品取引業等に関する内閣府令
 第二章 金融商品取引業者等
 …
  第二節 業務
  …
   第六款 弊害防止措置等
   …
第百四十八条 法第四十四条の二第一項第一号に規定する内閣府令で定めるものは、信用の供与をすることを条件として有価証券の売買の受託等をする行為のうち、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
 …
二 同一人に対する信用の供与が十万円を超えることとならないこと。

金融商品取引業等に関する内閣府令

あれ?十万円と書いてあるじゃない、と思った方、正しい反応です。

実は、1回限りなら、10万円まで購入可能なのです。
ただ、クレジットカードの代金支払いの前に、もう一度投資信託を購入すると、未払い金が20万円になってしまう=20万円分の信用を供与している状態、と取れるため、これを避けるために半額の5万円に制限されているのでした。

下の図は、8日に積立購入、月末締め翌月払いのクレジットカード場合の、支払タイミングの例です。
クレジットカード引き落とし前に、2回分の積立購入が行われる=2回分の信用を得ていることが分かると思います。

月末締め翌月払いの場合の、クレジットカード利用とその支払いタイミング

■新NISAと内閣府令の改正

さて今年1月から始まった新NISAですが、積立購入できる金額が、月当たり10万円(年間120万円)に増額されました。
旧NISAでは月当たり33,333円(年間40万円)までだったので大幅アップです。
一方、クレジットカード決済枠は5万円までだったので、クレジットカードと積立購入の相性が悪くなってしまいました。

そこで今回の内閣府令の改正です。
新旧で比べてみましょう

金融商品取引業等に関する内閣府令及び金融サービス仲介業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令 より

少し難解な文書ですが、信用の残高では無く、その月の取引自体の金額が10万円までならOKと変更になったところがポイントです。

10万円という上限金額の表記は変わらないです。

もしかしたら、当初の内閣府令の意図としては、毎月クレジットカードで10万円まで投資信託の積立購入OKのつもりだったのかもしれません。
しかし、「信用の供与が十万円」と書いてしまったため、証券会社がリスクを考慮して決済2回分に耐えられるように、半額の5万円までに制限してしまったのでしょう。

今回はその行き違いを解く改正といえなくもないと思いました。

ちなみにですが、このような法律や省令関係の解釈は、大手各社さん流石にきちんとされてますね。法務部門が仕事をしているのだと思います。

中小企業は独自の法務部門がないことがほとんどだと思います。
中小企業診断士が最後の砦、とまで言うと越権行為になってしまいますが、少なくとも、法令の正しい解釈の精神は見習わなければと思いました。

IT系企業に所属する企業内診断士です。