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紅茶の貿易商人・松田卓也の日記 ~Vol.010~ 【弱者に向いている、輸入商材について】

私は、2015年から、紅茶の輸入を始めました。

それまでは主に、中古建設機械、トラック、乗用車の輸出を行っていた為、紅茶に関しては、全く異分野。

ある意味、挑戦でした。

バイヤーとして世界を回っていると、たくさんの魅力的な商材と出会う事ができます。

『こんなものは日本にはない!独占販売権をとろう!』
『こんなに美味しい〇〇は、食べた事がない!』
『この国の安い人件費で〇〇を作る!』

などなど・・・。

しかし、私たちのような従業員50人以下の中小企業が

『絶対に、手を出してはいけない商材』

というものがあります。

これはイケる!

と思い、輸入(投資)してみたものの、まさに『地獄』を見る羽目になった方々を、私は何人も見てきました。

私は、20代の頃、一部上場企業の海外営業部に修行に出され、色々と勉強させて頂きました。

先輩方は、国立大学出身のエリートサラリーマン。
まさに、デキる方々ばかりでした。

しかし、大企業のサラリーマンとしての貿易業務と、私たちのような中小企業が行う貿易業務は、全くと言ってほど違います。

そう、私たちは、絶対に『横綱相撲』をとってはいけないのです。

花形商材、目立つ商材、カッコいい商材は、大企業の仕事です。

私たちは、『花形商材を扱いたい誘惑』をぐっとこらえ、大企業がやりたがらないもの、地味で、ニッチなものを狙います。

紅茶も、日本では非常にニッチです。

そして、貿易初心者が、絶対手を出してはいけないもの、それは、

『資源系、エネルギー系』

すなわち、ガス、石油、水、材木といった商材です。

これらの輸入は利権も絡んできますし、中小企業の財力では、維持ができません。

また、食品を輸入するのであれば、最初は『なまもの』は、避けて下さい。

・肉
・魚、魚介類
・チーズ

これらは時間と共に、腐っていきます。

冷凍保存するにしても、維持費がとてもかかります。

ですから、確実に売れる販路、確実な運営ノウハウが必要になってきます。

私の知人で、魚介類を輸入していた方、花を輸入していた方がいらっしゃいます。

彼らが共通して仰っていた事があります。
それは、

『日本の港に船が到着するまで、不安で寝られない。』

もし、何かトラブルがあった場合、商材は港の税関で止められます。

なまものであれば、その間に、どんどん腐っていきます。

本当に寿命が縮まるので、こんな思いをするのはもう嫌だという事で、彼らは、商売を辞められました。

最後に、名将と呼ばれた、故・野村克也監督の言葉を。

『弱者には、弱者の戦い方がある』

自分を見失わず、身の丈に合った戦い方をしたいものです。

文●松田卓也


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