紅茶商人・松田卓也の日記 ~Vol.003~ 【プロの物書きの世界】
~前回からの続き~
今日も引き続き、『書く事』について。
私は、趣味で書いていたメジャーリーグのブログが、ここまで反響を及ぼすとは思ってもいませんでした。
結果的に私は『ブロガー』から、報酬を貰って記事を書く『ライター』になる事に。
そしてその瞬間、プロとしての自覚を求められました。
まず初っ端、出版社から言われた言葉。
『松田さん、これからは主観を入れないでください。例えるならNHKのアナウンサーと同じです。』
なるほど。
NHKのアナウンサーはニュースを読む際、決して『私は~だと思います』とか、『私の意見は~』といった事を述べません。
事実を淡々と伝え、意見や感想ではなく、一般論を述べます。
私に求められていた仕事は、アメリカ現地の記事を翻訳し、それを日本のファンの為に、分かり易く要約して解説する事。
当時、この仕事ができる人間が日本にはあまりいなかった事もあり、私のような人間でも重宝されました。
そして、さらに
『出版社の看板を背負って書いてください。野球ファンは、少しの事でも過剰に反応しますので、気をつけないとすぐに炎上します。』
これには毎回神経を使いました。
お酒の席やビジネスの場では、『政治と宗教と野球の話はするな』と言われています。
世の中には、ひいきのチームに対して、ある種の『信仰』に近いものを持った強烈な信者が存在します。
そう、実は野球の話題というのは、とてもデリケートな話題なのです。
私も本名で記事を書いていましたので、時折一部のファンからきついご指摘を頂くことがありました。
もちろん、わざと炎上させて注目を集める方法もあります。
プロの中には、誹謗中傷を、ことごとくペンの力で論破する強者ライターもいます。
しかし私には、そんなタフさは持ち合わせていませんでしたので、文章の中でうまく逃げ道を作るテクニックを身に着けました。
『プロの物書き』の世界は想像以上にシビアでしたが、毎回ヒリヒリする緊張感の中で書く行為は、ある種の中毒性がありました。
記事を書いていると、異常に集中する瞬間が来るんです。
自分の感覚だけが研ぎ澄まされ、周囲の物音が全く聞こえなくなるほど創作に没頭できる瞬間です。
『ゾーンに入る』という表現がありますが、もしかするとそれかもしれません。
これが『書く事』について、私が経験してきたことです。
今は、ライターの仕事は休業状態ですが、また昔のように書いてみる事にしました。
ただ今回は前回と違い、誰か(野球選手)について書くのではなく、あくまで自分の事について書く事になります。
これはこれで、新たな挑戦になります(笑)。
どうかお付き合いくださいませ。
松田卓也
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