夏コミC100購入本の感想(夕雲カナ本)

本の感想です。
夏のコミックマーケット(C100)で販売された艦これ現パロ小説
『訳ありコスプレイヤー夕雲改二との甘々巣ごもり同棲性活』
の感想です。作者はBERSERGAさんです。

https://twitter.com/BARSERGA

作品はこちら

では、書いていきます。

この本は「夢」の物語だなと思ったのが第一印象でした。まあ夢にもいろいろありますけども。囚われのお姫様を無敵のヒーローが救い出す、そんな誰もが小さいころに夢見たであろう物語。そういう意味での「夢」の物語だなと思いました。現パロ、コスプレ、オフパコ、そういう現代的な要素で表面がかっちりコーティングされていますけど、それをひとつひとつ剥がしていって最後に残ったのは、王道ど真ん中をいくストレートな物語だと思いました。この話が大好きで、本になる前からPixivでずっと追いかけていたので色眼鏡で読んでいるような気がしてならず、この感想もだいぶ傾いているんじゃないかと不安ですが続けますよ~。

ミツミネは無敵のヒーロー。ホテルで見た泣きじゃくるカナの背中を見て「ほっとけない」と思ったのがすべての始まりで、それは同情や憐憫といった感情にも近くって、作中ではその実カナのためではなく自分がしたいことをし続けているように見えた。ちょっと自信ないけどそう見えた。普通の人にはそんなことはできないし、やろうとも思えない。なんなら千歳に迎えにも行けないしね。カナの主張する不安要素を全部はねのけて、カラダでもって愛情を示して……なんて、超人かよって。でも、それくらいしないとカナは救えなかったんだろうと思う。それくらいカナは崖っぷちにいたのだろうから。まあ、そういう意味でも夢なのかもしれないけれど、物語ってのはこれでいいと思う。負けるのは現実世界だけでいい。

最初の間違いを正そう、これからふたりでやっていくために。
その展開にめちゃくちゃ興奮した。そうだよ!そうしなきゃ!それこそがほんとうのスタートラインだ!これはぜったい必要だよ!って読みながらガッツポーズした。これを言い出すのはカナの役割だろうし、言い出せるのがカナの強さなのだろうなと。もちろんやりなおさなくてもふたりはやっていけるだろうけれど、でも、それをしないとずっと心の中でもやもやとしたものが残ってすっきりできなくて、もしかしたらそれを火種にしたなにかがあるかもしれない。だからやらなきゃいけないんだけど、本当に勇気が必要だったと思う、これを言い出すにはね。物語の締めとして、最高の展開でした。そのあとは……ちょっと予想外でした。ミツミネ、おまえすげえなマジかよって。やっぱりこいつはヒーローだよ。カナはおまえにしか扱えないよ。男としてうらやましいよこんちくしょう。

ここ好きポイント
・ひどい女なのだ。でも、私ってひどい女でしょ、なんて同情を買うのはもっと嫌。
 こういうところがカナの強さでもあり脆さでもあるのかなと。
・ぐーぱんと「だめだかんね」
 読んでる最中はらしいからしくないかって言ったららしくないと思ったんですけど、でも、最後のやり取りを見るにこれが素なのかなぁと。かわいいね。
・浴槽のフチに足をかける
 Pixivで単話で読んでるときにはわからなかったんですが、同じことを二度してたんですね。ああ、これがカナの気合と覚悟なのかなぁってジーンときました。やっぱり一冊の本で、ひとつのつながった物語として読まなきゃダメですね。

上にも書きましたけど、やっぱり物語ってのは一冊の本じゃないとダメだなぁと実感しましたね。いろんなところに散らばったピースがパチパチとハマっていく感覚は、単話ごとの閲覧はもちろん電子版でもダメだなぁと。ページをめくらなきゃ感じられないですね。左手に紙があと5枚くらいしかない!ああ、最後どうなるんだ!ってね。はい、最高でした。

「もしもミツミネがカナを救わなかったら?」というのも考えてみたんですが、悲惨でしたね。ミツミネは夕雲はもちろん艦これはおろか創作から離れていってしまうかもしれないし、カナは……言わずもがなですね。だからやっぱり、こうならないとダメだったんでしょうね、この物語は。そしてフィクションってのはこれでいいと思うんですよ。胸いっぱいの幸せを抱えて本を閉じる。顔を上げると窓から街と青空が見える。この青空の向こうのどこかで、カナとミツミネは幸せに暮らしているんだろうなぁ……って、その読み終わったあとの一瞬の間こそが物語を読む醍醐味であり幸せなのだろうなぁと。
最高の物語をありがとうございました。幸せな時間をありがとうございました。



おまけ
聖地巡礼?してきました。いちおい言い訳をすると、もともと札幌旅行を計画していてそのついでに行ったのですけどね。まあ、行って大正解でした。ここにカナが、ミツミネがいたんかと思うとジーンとくるものがありましたね。



おまけ2
この作者さん、食べるのお好きだなと。それがところどころににじみ出ていて、それがリアリティを高める一助になっているような気がします。食べるのだけじゃないですけどね、実在土地とか建物とか、そういう現実感が夢の物語にリアリティを持たせているのかなと思いました。うーん、参りました。


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