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なんでAmazonから学術書を出すことにしたのか?
博士論文とその後に各所で書かせてもらった記事をまとめて本を出すことになりました。私にとって初の単著書籍です。
タイトルは「FRM プロスポーツ組織の顧客関係戦略」。
こちらのnoteでもご紹介したとおり、「満員のスタジアムを創り出す研究と実践。」をテーマにこれまでやってきた成果をまとめたものです。
今回はいわゆる自費出版を選択しました。
とある出版社と「あとは印刷するのみ!」というところまで行っていたのですが、
納得できない点があったため急遽取りやめたからです。
なぜ出版社からの発行を取りやめたのか?
なぜAmazonを選択したのか?
今回はこの2点について書いていきます。
出版不況の中の学術書
データの時間「【出版不況の実情から最も読まれた本まで】日本の出版市場を今をデータで探る!」によれば、
出版不況が広く知られるようになったのは1990年代後半から。
実際、市場規模で見てみると1996年の2兆6563億円をピークに減少を続け14年連続前年割れとなった2018年には紙と電子を合わせた全体の市場規模が1兆5,400億円とおよそ20年で約1兆1,000億円(約42%)の大幅な減少に転じました。
とその凋落ぶりが指摘されています。
活字離れとか、娯楽の多様化とか、産業構造の陳腐化だとか、いろんな原因が指摘されていますが、端的に言えば、本はこの30年近く売れなくなり続けているわけです。
その中で、元々売れること(売ること)を目的としていない学術書は、更に小さな市場の中で細く長く、とにかくニッチをじわじわ攻めなければいけない状態にあります。
「ああ、だから大学の先生は自分が書いた本を授業の教科書に指定するんだな」
「絶対学生が買うようにテストのときに教科書だけ持ち込みを許可してるんだな」
みたいな事が透けて見えてきたりします(苦笑)。
そんな状態にある学術書を出版し続けてくれている出版社には頭の下がる思いでいっぱいなのですが、それでも私の場合はどうしても拭いきれない問題がいくつかありました。
金額の根拠が不明な「出版協力金」
結構痛い金額
その一つが著者に求められる「出版協力金」です。印刷や販売にかかる出版社の費用を著者が現物を買い取る形で賄おうというものです。とある出版社のサイトをみると、学術出版の場合には約100万円がかかり、このうち半分を学術出版助成金で、もう半分を自腹で、という大体の内訳が書かれています。
私の場合は数十万円の請求がありました。「学術出版助成金」についても、残念ながらタイミング的な問題もあり、これが獲得できませんでした。つまり、全額自腹で負担しなければなりません。5人家族の大黒柱にとっては結構痛い問題です。。。
確かに校正や版組、出版後の宣伝等を考えると必要経費とも考えられますが、問題はその根拠が曖昧なことです。客観的な見積もりなどは一切なく、いわゆる「言い値」や「感覚値」でしかないと感じられたことが「ここと組むのは止めようかな」と思った最初でした。
受け入れられない提案
しかし、せっかく大詰めまで共に作業してきたこともあり、この「出版協力金」のハードルだけ下がればご一緒したいという想いがあったので、次のような提案を私から出版社へしてみました。
それは、
①クラファンで出版協力金を募ること
②この出版社は紙の本のみだったので、私個人で同時に電子出版すること
という2点です。
①に関しては、私個人の負担が下がること、返礼品に書籍自体を設定することで一定の本の注文が入ります。幸い、この方針に賛同頂ける方々が一定数以上いらっしゃり、個人の買取よりも遥かに効果的であるという実感を掴んでいました。
が、
「『クラファンやって○○万円以上集まれば、あそこの出版社は本を出してくれる』って思われたくない」というナゾの一言で却下。
②に関しては、この出版社が紙の本のみで戦うならば、電子書籍とはカニバらないし、私も紙よりもやや多い印税収入で出版協力金を賄えそうと踏んでいました。
が、今度は
「電子化するなら紙の本が売れなくなるから2年後にしてほしい」とまたもやナゾの一言で却下。だったら早く電子書籍売ればいいじゃん。。。
本の価格もこの出版社が経験的につけたものであり、それを上げたり下げたりすることで出版協力金の額を下げられないか問い合わせたものの、客観的で合理的な返答は一切ありませんでした。
ちなみに、
「本の宣伝やPRも自社ではほぼやりません。どうぞご勝手に。読書会などで本を使うときは割引価格で手配します。あ、その分印税はありませんけど。」との事でして。。。
そんなことから、
「なぜこの出版社は著者の費用リスクと向き合ってくれないのかな?」
「あ〜、著者から費用を徴収して一定のリスクをヘッジする割に、著者の費用回収は考えてくれなんだな」
との想いが強くなり、とりあえずこの会社と組むのを止めました。
あるニュースとの出会い
その後、どうにかしてこの本を出版する方法を探していたのですが、やはり費用の問題にぶち当たります。その時も電子化は比較的容易だったのですが、紙の本がほしいという方の期待に十分答えられるサービスが見当たりませんでした。
また、できるだけこの本を手に取ってくれる人たち(特に学生・院生)にビジネス書並みの価格で届けたい、必要な箇所(全3部)を各部ずつ買えるようにしたいという想いも強くなっていました。
そんなときにふとネットを眺めていたら流れてきたのがこちらのニュース。
なんと、電子書籍のみだったものが紙の本も届けられるようになった、というもの。注文に応じて印刷をするので、在庫リスクを抱える必要もありません。その分買われる方に安くお届けできますし、著者の経済的負担もググっと下げられます。
「これだ!これに決めた!!」
こうしてAmazonの「Kindle ダイレクトパブリッシング」を活用することにしました。
幸い、京都サンガ時代に広報誌のDTPをしていたこともあり、原稿のレイアウトは不得意ではありません。また、よく調べたら、ワードでも書籍の印刷に対応したレイアウトや機能が十分にあることがわかりました。
既にある原稿を何度か推敲し、自分でレイアウトをやり、PDF化してあとはサイトからアップロードするのみ。これで電子書籍と紙の本が出せます。内容の質については、既に公刊された論文や記事が基であるため、一定の水準はクリアできていると考えました。
先程書いたとおり、全3部作を各部ごとに売る準備も進めています。これで必要なところだけを安く買いたいというニーズにもお応えできます。PRもSNS時代の特性を活用し、私の活動を応援してくれる方々の力をお借りしながらやっていく予定です。これにZoomを活用した読書会、講演会などを組み合わせながら、全国各地の皆さんとスポーツビジネスの発展をテーマに語り合いながら本を広めていきたいと思っています。
これがうまく行けば、若手研究者や芸術家、作家の皆さんにとっても自らの研究や作品を世に出す際の一つの方法を提供できると思っています。費用や制約がネックなっている皆さんの問題を解決できれば、より自由で、即時的で、届けたい人のニーズに合わせた出版ができるのではないでしょうか。
この動きが広がれば、既存の出版業界も変わらざるを得ません。
費用に見合ったサービス、プロモーション、販売方法が生まれるはずです。
あとは我々買い手が何を選択するか次第。
この決断と行動にご賛同頂けるようでしたら、是非応援の程よろしくお願い致します。
ご購入はこちら
【電子書籍】
【紙の書籍】
「はしがき」公開中
この本を書く動機、過程、想いを公開中です。
https://drive.google.com/file/d/1F8f5j3w8rhMgQuTSPIwuVZ5l3Io4JOeQ/view?usp=drivesdk