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【ライブレポ】sumika Ten to Ten Tour Final 名古屋day2

2/19(日)前日よりも気温が上がるとの予報だったが、天気は生憎の雨模様。同じ気温だが晴天だった先週に比べて体感温度はかなり低い。

名古屋駅からJRで約10分、日本ガイシホールへと向かうと雨の中傘を差して列をなすファンで溢れていた。会場周辺にはカフェなどの時間を潰せそうな場所が無く、開場までどうしようかと悩んでいた。
しかし、一切並ばずに物販を終えるも、ガチャガチャコーナー、フォトスポット、ツアートラック(ホストの宣伝カーのようだと思ったのは秘密)は長蛇の列となっていたため、当初の悩みは不要であった。物販の後ガチャを回し(ミント色のsumikaパンバッジをGET)、フォトスポットで写真を撮って、ツアトラに並ぼうとしたのだが、今から並んで開演までに間に合うのか訪ねたところ危ういかもしれないとのことで諦めた。
本日は開場15時開演16時という、小学生も安心の時間設定となっていた。

開場時間となり入場。座席に着くとチラシが置かれている。どうやら本日の公演がCSで放映されるらしい。
“庭”を模したような舞台セットが配置された、空っぽの舞台を前に、色とりどりのタオルが集まる様を眺めながら開演時間を待つ。

そしてその時が訪れる。
会場の照明が落ちるとモニターに映し出されるカウントダウン。10カウントから始まり、カウントが進むごとにアリーナ席をスポットで照らしながらステージへと近づきゼロカウントへ。一曲目「New World」から幕が上がる。
怪しげな雰囲気から一転、軽快なリズムの二曲目「Glitter」の演奏を終えると片岡さんが語りかける。

「ようやく声が出せる様になりました!みんな待っていたよね、声出せるようになるこの日が戻るのを。そんなときに唱える呪文をかける準備はいいですか?とんでもない、三年分の呪文をかける準備は出来てますか?行くぞ!『ふっかつのじゅもん』」
オーディエンスの声が、三年の時を経て、会場に“ふっかつ”する。

まだまだ声出せますよね!みんな頼むぞ!と4曲目「何者」5曲目「Lovers」を演奏すると、演奏後の暗転中にオーディエンスから「ただいまー」と声が上がった。「おかえり。けど、それ俺たちのセリフじゃない?(笑)俺たちもただいま」と片岡さんが応えてMCパートへ入る。

「みんな元気だねぇ…なんか泣きそうだよ…うれしいねぇ…。少し前からライブでの声出しが解禁されました。偶然なんだけど、最後に僕たちが声出しのライブを行ったのが2020年の2月19日でした。だからちょうど三年になります。そんな今日、ツアーファイナル。みんな今まで我慢してくれた分、今日は思いっきり楽しんでください。今日がsumikaのライブ初めてだよーって人もいると思います。そんなあなたにも楽しんでもらえるよう全力で演奏するので安心して楽しんでください。昨日もここでライブやって…セミファイナル、すごく盛り上がったんだけど、今日はファイナル。昨日よりも盛り上がる準備はできていますか?」
拍手と歓声が会場中から巻き起こる
「いいね。じゃあせっかくだから一箇所ずつ確認していこうかな。僕の(顔の前で掌を立てて会場を区切るジェスチャーをしながら)この、ここからこっち側(上手側)の、スタンド席の皆さん、そう、その後ろの方まで。盛り上がる準備できてますか!?」
「じゃあ今度はこっち側の、逆側のみなさん、楽しむ準備できてますか?」
「そしたら次、アリーナ席行ってみようか。アリーナの後ろの方…どこからっていうのは無いんだけど、この辺は後ろかな?私から後ろかな?って人!いままでで一番大きな声出す準備できていますか!?」
「その辺からが“後ろ”なんだね(笑)分かりやすかった、ありがとう。そしたら“後ろ”の人たちが基準を作ってくれたのでもう迷わないね、準備はできているね、アリーナ前方の人たち!この会場中の誰にも負けない一番大きな声を出す準備はできていますか!?」

そうやって会場にウォーミングアップをさせると「今までのどの日よりも最高にかっこいいライブと思ってもらえるように演奏して行きたいとおもいます!」と片岡さんの言葉とともに演奏を始める。
おがりんが立ち上がり「まだまだ大きな音出せるでしょ?そんなんじゃまだ曲始められないな!」会場を煽り始める。煽りに応えるオーディエンスに満足すると、勢いそのまま6曲目「1.2.3..4.5.6」へ突入する。

7曲目「Porter」では「黒い毛並み猫を撫でる撫でる」の後に隼ちゃんが険しい顔で「猫から生まれたねこ太郎」と合いの手を入れていて「え、なにそれ?どういうこと!?」と、驚き(困惑?)のパフォーマンス。ファイナルで高揚していたのだろうか。

演奏が終わるとバロンのドラム・ソロのパフォーマンスが繰り広げられる。
そしてドラム・ソロの勢いそのまま、8曲目「イコール」に入るのだが、会場中がここで思考が一時停止する。
それまでの片岡さんの声ではなくおがりんのハイトーンボイスで歌われているからだ。白い光で照らす演出も相まって神聖な雰囲気に会場が魅了される。

続く9曲目「いいのに」では片岡さんの歌唱に戻り、しっとりした雰囲気からハンドクラップのある曲で空気を一転させる。

「Ten to Tenツアーということで、去年の5月から今年の5月にかけて、sumikaは10周年Yearとなっています。順風満帆ではなかった僕たちがここまでこれたのはみんなの応援があったからで、そんなみんなに対して僕たちができることは何かなってメンバーと話し合いました。そうやって話し合って、俺達が伝えたいことは、気持ちは、感情は何かなって、話して、行き着いた答えが『愛』でした。何かをしてあげたい、それに対する見返りは求めない、ただ僕たちがあなた達にしてあげたい。返ってこななくてもいい。一方通行でもあなたに伝えたい。気持ちが愛なんだと思うんです。だから、そんな僕たちの気持ちを歌にしました。」

「愛している」と何度も繰り返す10曲目「透明」

「何にも染まっていない愛の歌『透明』という曲でした。聞いてくれてありがとう」という言葉で締める。

しっとりとした雰囲気になったところでステージが明転し、片岡さんの「やっほー」という言葉からMCパートに入る。
「これじゃなかったな、さっきまで愛してるとか歌っていた後の一言目、これじゃなかったわ…言って2秒で後悔したもん」と言って会場を笑わせた。

「ここで舞台チェーンジ!サポートメンバーは一旦コーヒーブレイク、紅茶ブレイク、have a breake!休憩してもらって、ここからはsumikaの4人のみで演奏したいと思います」といってゲストメンバーを見送る。
「信頼しているスタッフチームにセットを変えてもらっている最中sumikaの4人はしばし自由時間です。もう信頼していますからね、完全にお任せです」

片岡さんがおがりんを、変な名前(本名にかすりもしない名前)で呼んで「なんか言うことある?」と聞くと、変な名前(古めかしい名前)で呼ばれたおがりんも一切気にかけずに応答して「みんなも一回座ろうか。会場入りするときにみんな雨で傘差してるの見て、朝から立ちっぱなしで、疲れたでしょ。一旦みんなも休憩しよう」とオーディエンスを着席させる。

この舞台転換の合間、本当にメンバーは休憩タイムで、思い思いフラフラしていて、とても本番とは思えない空気感。リハでももう少し緊張感あるんじゃなかろうかという驚異的リラックス感。

「どう?今日見て、動くsumikaは?我々静止画と実物から受ける印象が全然違うみたいで、しゃべると結構な確率で嫌われるんだけど。スタッフチームからも、ブランディングが崩れるからあんましゃべるなって言われてるんだよね…」メンバーもうんうんってうなずいて聞いていたら片岡さんが「でさあ〜」と口を開いたので、すかさずおがりんが「いや、しゃべるんかい!」とツッコミを入れる。
「今もう完全におしゃべりしないって流れだったでしょ」「俺、自分でもまだ続きしゃべるんかいって思いながら話し始めた」って、ゆるい(笑)

舞台下手側で一人ちょろちょろしていた隼ちゃん。カメラで抜かれていることに気づき後ろを振り返ってモニターを指差すと「でかい僕がいますね〜」と言って会場を和ませる。さらに「せっかくだから、ここ登ってみようかな」と言って隼ちゃんがお立ち台に上がり、きょきょろすると、そのまま何も言わず、何もせず、ただ降りる。何もしないんかい(笑)
メンバーも「いや登ったからなんかすんのかと思った」「何も言わずに降りないでよ」とツッコミを入れる。ゆるい(笑)

ステージ中央の前方の方に椅子が用意されたところで「我々も椅子に座りましょうか」と片岡さんが促してメンバーが座る。
片岡さんが「隼ちゃんは調子どうですか?」との呼びかけると「え?」と戸惑う隼ちゃん「ごめん俺の聴き方が悪かった。今日ファイナルだけど、今日の会場の雰囲気とか、どう?」「いやー、最高ですね」と、大した中身もない、広がりもない、特に何があるわけでもない会話が続けられていく。ゆるい(笑)

そんなやり取りを続けるも遂に手持ち無沙汰になったsumikaの4人。少し無言の時間が流れると会場から「おーがりん♪」と可愛らしい呼びかけがあった。
「おーがりん♪だって、ほら、おがりん応えてあげて。懐かしいね〜こういうの」と片岡さんが促すとおがりんが笑顔で手をふる。
すると続けて「じゅーんちゃんっ」とまたしても可愛らしい呼びかけがあり、はにかんだ隼ちゃんが会釈する。
さらに「ばろーん」「ともくーん」という野太い呼びかけがなされた。いやいやと呼びかけを遠慮(笑)するバロンに「こういうのね、慣れてないからね」と片岡さんがリアクションを楽しむ。
こうなると当然残る片岡さんを呼ぶ声が上がるのだが「はいはい、そうやってね、惰性でね。みんな順に呼んだからね。最後残ったあいつの名前も一応呼んでおくかっていうね。義理チョコみたいなね!そんな情けいらないから!!」って拗ねてた(笑)

そんなたっぷりとゆるい時間を過ごしたところで[camp session]パートへと入る。
「もう長いこと活動できてないんだけど、我々4人、sumikaとは別に[camp session]というものをやっています。アコースティック形式で演奏する活動です。ややこしいんだけど、この[camp session]はsumikaをライバル視していて、sumikaより売れようと思っているから…いや、sumikaがやってる[camp session]なんだけどね、なんか哲学的な話に聞こえるかもしれないけど、そういうつもりでやっているから。
キャンプみたいな近い距離でみんなと接したいなって気持ちで始めた活動なので、こういうゆるい雰囲気もね、[camp session]なら許されるかなって思って。だって僕たち本当はみんなと一人ひとりと話したいからさ、最近どう?とか、元気?とか、あとは恋話だってしたいしさ(笑)そういう焚き火を囲んで近い距離で話すみたいな、そういう感じで、みんなもゆっくりと座って、一旦リラックスして聴いてください。」

そして3月に発売されるCDからの曲「知らない誰か」と紹介して演奏を始める。
おがりんはこのパート、ピアニカで演奏していたのだが、曲中ホースをぶんぶん振り回して手遊びしているのがなんだか面白かった。

演奏が終わると「ばろーん」と呼びかけがあり「ほら、呼んでるよ」と片岡さんが話を向けるもマイクの用意に手こずるバロン。「すみませんね、これの(座って叩いていたカホンという楽器)音拾うマイクと同じもの使ってるんで、タイムリーに受け答えできなくて」と言って会場を笑わせる。

バロンといえば、熱狂的なaikoファンであり、sumikaのライブでは自分たちのバンドタオルではなくaikoのツアータオルを使用するのがお決まりだが(なんでやねん)、この日バロンが使用していたタオルは黒いタオルでaikoのライブタオルではなかった。後ほど公式が掲載した写真で発覚したのだが、なんとこの黒いタオルは「バロン」タオル!いつの間にそんなもの作ったのか、そしてなぜグッズとして販売しないのか。もしや自分で個人的に作った…?このバロンタオルについて、「どんだけ自分のこと好きやねん」と帰り道話していたファンもいた。


続けて12曲目「春風」を演奏するとメンバーも一時退場し、舞台に片岡さん一人が残る。

「sumikaとしての活動を10年続けることができました。だけどそれは特別なことで、決して普通のことではないんです。僕たちはそれぞれsumikaになる前に別のバンドとして活動していて、それぞれがその元々やっていたバンドを解散させてしまった過去があります。…まぁ、そのおかげでsumikaのメンバーのことは大切に思えるし、前のバンドで活動していたときよりもメンバーに対して優しく出来てる気がします。当社比ね(笑)前と比べて優しいかどうかは僕しかわからないから。メンバーがどう思ってるか分かんないけど、僕的にはそう思っていて、だからたまにはこうやって一人になることで、今が当たり前じゃないこととか、メンバーへの感謝とかを考えるようにしています」

真っ暗闇の中、白い光でライトアップするというシンプルな演出で片岡さんのソロ。アコースティクバージョンの「ファンファーレ」を披露する。歌唱終わりに「今僕がこうして居られることは決して当たり前じゃない。いろんな奇跡の積み重ねがあって今に繋がっています。だから僕は今を大切にしたい」と、感謝の言葉述べた。

一旦退場していたメンバーが再入場すると、隼ちゃんによる合唱練習パートがスタート
「はい、じゃあ皆さん、ちょっと練習してみましょうか。そーだ、ないちゃいそうーだ。いいですね、じゃぁ同じように…。もう一回…。そろそろ先に進みたいですか?まだですよ〜…。次はもう少し長く行ってみましょう。そうです。みなさんもうバッチリですね?」と念入りに合唱練習を行う。隣でニヤニヤしながら見守っていた片岡さんが掛け声を上げる。

「さあそれでは後半戦、ここからまた盛り上がっていきますよ!頼むぜガイシ!」と煽ってしんみりした空気を一転、オーディエンスを立ち上がらせると、隼ちゃんのギター・ソロで再びエンジンをかけ、念入りに練習した「ソーダ」から後半戦へ突入。続く「Flower」「The Flag Song」「イナズマ」「Shake&Shake」と、オーディエンスの声出しによってラストへ向けて勢いを増していく。
「Shake&Shake」ではMVの楽しさそのままに、ステージ上はお祭り状態。おがりんが間奏中にステージ袖まで出てきておがりんがオーディエンスを煽るのに夢中になり、コーラスを忘れてキーボードまで慌てて戻ることになり、セットを飛び越えなければならない羽目に(笑)
また、片岡さんと隼ちゃんが二人揃っておがりんのペットボトルと手に取ると演奏中のおおがりんの口(鼻?)にストローを差すイタズラをして、されるがまま一生懸命演奏を続けるおがりん(負けるな!がんばれ!)
片岡さんのボーカルがおやすみになるとキーボードを弾くおがりんに後ろから抱きついて愛を表現したり、隼ちゃんとサポートメンバーが並んでスクワットしていたり(何故!?)、それに気づいた片岡さんもおがりんのところから走っていき途中から合流して一緒にスクワットを行って、何度か続けていたら危うくコーラスに間に合わなくなるところで、こちらもみんな慌てて持ち場へぎりぎり戻っていく。
オーディエンスもコーラスや腕振りで盛り上がり、パーティー会場と化していた。

ハチャメチャなお祭りパート終わりの暗転中にオーディエンスからの声援が上がるのだが、一部のマナーの悪い声援に対して「それ三回目くらいから自分が気持ちよくなっちゃってるだけでしょ、俺達のためじゃなくて。ステージはこっち側だから。」と苦言を呈す「嫌いじゃないけどね」と一応フォローを入れつつMC

「今やってきたように楽しい曲がたくさんあって、我々sumikaのイメージとしては明るい〜とか、楽しい〜とか、元気になれる〜とか、そういう背中を押してくれるバンドだと思って聴いてくれる人が多いんだけど、毎日色々なことがあったら、たまには笑顔ではいられない、そんな楽しい曲を聴く気分になれない日もあると思います。だけどそんな日があっても良いと思うんだよ。毎日楽しいだけなんて嘘だろ。生きてれば楽しいことも悲しいこともいやだなって思うことも平等に訪れる。喜怒哀楽は全部一緒なんだよ。並列なんだよ。始まりがあれば終わりもある。だから僕らは楽しい曲ばかりではなく、こんな曲も演奏します。楽しいだけじゃない、僕たちの感情のすべてを伝えるために」

19曲目「Lost Found.」

アルバム「For.」の最終曲。ライブをしたいっていう気持ち、ライブを見ている人に一緒に歌ってもらいたいという気持ちから生まれた曲だとインタビューで語っていた。

祭りはやがて終わって離れ離れ影追う

旅立つ者は決まって思い出を書き連ねる

舞台の背景が星空のように光り輝き、その点と点を結んでsumikaのエンブレムである家のマークが星座として光り輝いた。
「始めるために終わらせるんだ」というニュアンスの言葉を演奏終わりに放つのは、まるでフィナーレへの予告のようだ。

「10周年Yearということで、Ten to Tenというツアーを回ってきたんですけど、メンバーそれぞれのTen to Tenとは何なのかということを聞いてみたいと思います。まず隼ちゃんから」と、再びMCパートとなり、隼ちゃんから話し始める。

「“Ten to Ten”って、つまり“点と点”なんですよね。10周年ということで、sumikaになってからの10年があって、それとは別にsumikaになるまでの10年もあって、その色々な出来事が点と点になってるんですけど、それが繋がって線になって、僕になってます、隼之介です。そしてそれはみんなも一緒で、みんなの、ここまでの点と点と、僕の、ここからの点と点が(拳で点を打つようなジェスチャーをしながら)つながる。それが僕の考えるTen to Tenです。伝わったかな?緊張した〜。真面目なこと喋ったからあともう下ネタ言っていい?」と、一生懸命言葉を紡ぐと照れくさくなったのか、茶化して話を終わらせた。メンバーの優しい表情が「伝わったよ」と物語っていた。

続けてバロンにとってのTen toTen
「僕たちは昨日名古屋に来たんだけど、入りが遅かったから家でゆっくりしてから来たんですよね。朝起きてエアコン入れて、あ、部屋の電気も点けてね、それで、ご飯温めようと思って電子レンジであっためて、ケトルでお湯沸かして、洗濯もしないといけないなーと思って洗濯機も付けて…したらブレーカーが落ちたんですよ。最悪だなー、明日からファイナルなのによりにもよってブレーカーが落ちますかねって思って。配電盤探してブレーカー上げたんだけど…あのスイッチをパチンって上がるの気持ちいですよね!なんか強さがあって持ち上げたぞって感じがして!それで、電気が点いたんだけど、また全部リセットだから初めからやり直さないといけなくて…ケトルも沸いてんのか湧いてないんだか分かんないし、ご飯もこれどれくらい温まってんのかな、どれくらい後温まればいいのかなって分かんないし。一番最悪なのが洗濯機ね、洗い?濯ぎ?脱水?って…。
けど、それって僕も同じだなって思ったんですよね。僕も今日終わったら少し休めるから、休めるのかな?多分少しは休めると思うんですけど、今日の夜なのか明日の朝なのかもう少し後なのかは分からないけど、ツアーが終わって、僕もブレーカーが落ちたみたいになっちゃうと思う。でも俺にはその、上げるスイッチが無いから、パチンって一発で電気入れられないんだよね。でも、俺は機械とは違ってゼロからリセットにはならない、今日見たこと、聞いた声は忘れない。今日のみんなとライブやったなーって記憶があるから。だけど僕たちの記憶は機械と違ってだんだん薄れていってしまう。だから、そういう記憶の点を一つずつ繋いで行って、また次のライブに向かって動き出せるようになれる。それが僕の思うTen to Tenです。みんなも同じように思ってくれたら嬉しい。次に動き出せるように、いつでもここで待っています。」

「長々と何の話やねん」と思いながら聞いていて申し訳ない。ちゃんと帰ってきてくれて安心した。
始めは立っていたメンバーも途中から座って(おがりんは正座しながら)話を聞いていて、片岡さんは若干呆れてる感じがあったけど、隼ちゃんはずっとニコニコうんうんうなずいて、時には手でジェスチャーを付けて終始リアクションをとりながら聞いていてのが印象的だった。

続いてはおがりん
「今日は我々の入りの時ちょうど雨降ってて、物販の列も傘みんな持って並んでくれてて、家帰ったら風呂入って温まって、風邪ひかないようにしてね」とオーディエンスの体調を気遣いながら話始める。
「僕は前のバンドを解散させてしまった。一度音楽を辞めてしまった。それでもやっぱり音楽を続けたくて、sumikaとして迎え入れてもらって今があって。そんな僕が点を打つときっていつだろう、自分が点を打つ時を考えると、ライブが終わって、次のライブをやりたい、また音楽をやりたいと思ったときに点を打つ。それが僕にとってのTen to Tenだと思った。sumikaのキーボード/コーラス、そして、ピアノ/ボーカル小川貴之です」

メンバーが自分にとってのTen to Tenを語り、最後は片岡さん。
「みんなお話上手ですね、めっちゃ良いこと言うじゃん。どうしよう俺、この流れで何話そう、ちんこでもだす?ハハハ…冗談だよ?」との言葉にすかさずおがりんが「それは冗談であってくれ!」とツッコむと片岡さんも「あ!今日収録入ってんじゃん!どうしようここ丸々使えないなって、カットになっちゃう!…本当にちんこ出しとこうかな?」と、これまでの流れを台無しにするような冗談を言って話し始めた。さすがしゃべると嫌われるバンド(笑)

「コロナ禍で面と向かって話すことが少なくなって、LINEとかDMとかでやり取りすることが多くなったじゃない。そうすると、途中まで書いたのにやっぱり消して、そのまま送るの止めちゃったりしてさ。どうでもいい人だったら惰性で返事したり、スタンプだけ送って適当に終わらせてしまったりするんだけど、それでも十分済んでしまうからね。だけど大切な人だから悩むんだよね。言葉は小学校で習うのに使い方は習わなくて、ときには間違えて大切な人を傷つけてしまう。だから大切な人に対する伝え方って難しい。
人って失敗しないと学ばないから、僕も過去間違えた経験があって、あの時もっとうまく伝えられたらあの人ともっと一緒に入れたかなとか、自然と離れてしまった人と今も仲良くできていたかなとか考えて、どうしたら上手く伝わるかなって考えるんです。
言葉ってさ、箱なんだと思うんだ。そしてそれはきっと透明なんです。だから、言葉っていうのはあくまで単なる相手へ届けるための外側で。じゃあその箱の中に入れるものは何なんだろうって考えると、それはきっと気持ちなんだって思った。言葉っていう箱に気持ちを入れて僕からあなたへその箱を渡す。けどその箱っていうのは透明だから、その言葉にどんな気持ちが入ってるか伝わる。だから本心の無い言葉っていうのは相手にもそれが伝わっちゃうんだよね。また今度ご飯行こうねとか、行けたら行くねとか、いつか一緒になんかしようねとか、本当は思っていないんだろうなこの人はっていうのは相手も分かる。だから気持ちを伝えるのに大切なのは言葉なんかじゃないんだ。大人になると難しい言葉を沢山知ってるから、そういう小手先のテクニックで、見栄えの良い言葉を使って自分の伝えたい気持ちを誤魔化してしまう。だけど自分の気持を伝えるのに難しい言葉なんか本当はいらなくて、小学校で習うような、簡単な言葉で十分なんだ。小学生が使うような、シンプルな言葉でも、その箱の中にいっぱい詰め込んで、その箱をぶつければ、きちんと相手に、自分の気持ちは伝わるよ。
だから僕たちもあなたへの感謝を伝えたくて、沢山気持ちを入れた透明な箱をこうしてあなたにぶつけています。あなたから返ってこなくてもいい。ただ僕たちから伝えたいだけだから。だけど、僕たちがぶつけたその透明な箱の中が少しでも見えたなら、返してもらってもいいですか。あなたの心に嘘のない言葉をぶっ刺して、気持ちを、歌を届けて、帰っていきたいと思います。」

本編ラスト「言葉と心」片岡さんが叫ぶ「伝われ!!」
曲間の語り「Ten to Ten、点とは何なのか、その答えは『記憶』でした」

ことばとこころを繋いでいくもの

頭の中見せたいのに

心に近いことばを選びたいんだ

心の言葉で大事な君と向き合いたいのです

本編が閉幕
ライトが落ちると会場からアンコールアンコールという声が上がる。やがてアンコールの呼びかけに応えてライトが灯り、メンバーが再入場。

一度閉じた物語を、挟んだ栞から再び始める「フィクション」

「懐かしいですね、アンコールアンコールって声も。ようやく戻ってきましたね…。たまたまなんだけど。コロナになる前に、最後に声出しライブをやったのが2020年2月19日で丁度三年前だったんだよね。それで、言わなかったけど、本当は色々なことが決まっていて、予定も組んであって、それがコロナで全部できなくなって…。でも俺一人が“本当はさ”って言っても仕方がなくて、みんなそれぞれ勉強したりとか、学校行ったりとか、仕事や家事育児したりとか、ルールがぐちゃぐちゃになっても頑張って続けてきたから。だから俺も“本当は”の先はずっと言わないようにしてきた。みんな我慢している中、俺が言うとわがままになっちゃうからずっと言えなかった。けど、やっと言える。本当はずっと、あなたの声が聞きたかった!それでもう全部嫌になって、音楽も続けるのが苦しくて辞めたくなるときもなかったわけじゃない。だけど、もう絶対に音楽をやめるなんて言わない!たとえ雨が降っても!槍が降っても!辞めない覚悟!『雨天決行』!!」

片岡さんは気持ちをぶちまけると、天を指差し僕の大切なものを歌う。

やめない やめないんだよまだ 目を開いたままで見る

覚めない 枯れない 夢の中で

やめない 消せない 嘘の中で

「辛かった三年間、さんざん救ってもらったから、次は僕たちが恩返しする番です。約束します。必ず僕たちがあなたを幸せにします」

本日のライブを総括するように、何度も「伝えたい」と繰り返す「伝言歌」にて今度こそフィナーレを迎えた。

演奏を終えるとサポートメンバーを紹介。いつもはライブ中盤くらいで丁寧に紹介する印象があるため、本日はやけにあっさりとしていたと感じた。
サポートメンバーが退場する際、sumikaのメンバーひとりひとりと握手したり抱擁したりしていたのだが、ベースを担当されていたXⅡXの須藤さんの退場時、バロンと威嚇し合うような仕草からの握手を行っていた。それを見た片岡さんが「あぁ、ツアー最終日にようやく和解することができて良かった」とコメントしていて、このツアー中の別の公演で何かあったのだろうかと、何のことか分からなかったのだが、後ほどTwitterを確認すると、須藤さんがaikoのサポートメンバーとしてツアーを回っていたことが判明し、理解した。aikoをめぐる男同士の因縁があったのね(笑)

サポートメンバーが捌けるとsumikaのメンバーは揃って左右の客席へ挨拶。

「タオル掲げてくれてるよみんな。ありがとう、色とりどりで綺麗だね。こうしてみると本当いっぱいタオルも作ってきたね。公演限定タオルもね。このタオル一枚一枚も“点”だね」と、これまでの10年間の軌跡に思いを馳せ、しみじみとつぶやく。

最後にメンバーが並んで深々とお辞儀をする。感謝の大きさを表すように、長く、深く。
挨拶を終えるとメンバーが順に退場し、最後に残った片岡さんが話し始める。

「さっきの言葉、何言ってるんだって感じたかもしれない、俺も少し自分で思ったし。男性の方は俺には関係ないとか思ったかもしれない、けどそんなことなくて、男性とか関係なく、さっきの言葉に、俺の気持ちに嘘はないから。改めて最後に言わせてください」BGMが止まると使っていたマイクを下ろし、肉声で気持ちを届ける。

「幸せにします!!!!」

その言葉に合わせて、いつの間にかステージに戻っていたバロンが、体制を崩しながらもドラムをバーンと鳴らし、片岡さんのプロポーズの言葉に彩りを添えた。

笑いながら退散するバロン。「そんな演出いらないんだよ」と笑いながらそれを見送ると改めて会場に手を振って舞台を降りる。舞台袖でスタッフチームと抱擁を交わして去っていった。

今度こそ終わってしまったと、会場が一息ついたその時、会場が暗転し、ぽーんぽーんとカウントダウンのような音が鳴る。え、何?何!?と会場は大混乱。そしてモニターが点灯すると、メンバーひとりひとりの姿が映し出され、映像が流れる。かっこいい映像のはずだがバロンの姿が映ると何故か会場から笑い声が起きる(笑)

そして知らされた特報に会場から悲鳴が上がった。

劇場公開!全国ロードショー!放映期間3日!なぜ!?

ツアーが大団円を迎えたところだが、5月のTen to Ten to 10も控え、sumikaの10周年はまだまだ続く。


10周年ライブのため、セトリはどうなるのか気になっていたのだが、最新アルバムの曲に、代表曲の盛り合わせパックなセトリで、冒頭のMCで語った「初めてsumikaのライブ見に来た人も楽しませる」との公約のとおり、誰も置いてけぼりにしないセトリのように感じた。

また、庭を模した舞台の背景セットが曲ごとに次々と変わっていき、曲間には片岡さんが口上を述べ、さらに曲によっては会場中を照らして、腕振りやシンガロングによって一体となって形作る。ロックバンドのライブに来たはずが、まるでミュージカル映画を観たかのような、そんなライブ体験であった。そんなミュージカルは『透明』『言葉と心』『伝言歌』で示すようなテーマを、跳ねる曲の合間に置いて物語に起伏をもたせて観客の感情を揺さぶり、さらに言葉を尽くしてこのミュージカルに込めた思いを伝える。

どんな人も楽しませたい、感謝を伝えたい、そんな丁寧なバンドの姿勢が、演出に表れたように感じた。5月のTen to Ten to 10 ではスタジアムライブのためアリーナとは異なり舞台セットを組むことは難しいだろうが、11年目に向けた決意をどのような形で示してくれるのか。期待せずにはいられない。sumikaがもっと好きになる。そんな素敵なライブだった。


(追記)
このミュージカル映画のような素敵なライブが行われた5日後、ギタリスト黒田隼之介の訃報が公表された。
くしゃっと笑う、あなたの素敵な笑顔が、高い位置でギターを鳴らす変わった演奏の仕方が、一生懸命に言葉を紡いで、心を尽くして言語化して気持ちを伝えようとする姿勢が、今も鮮明に思い出されます。
片岡さんの声が出なくなった時、音楽じゃなくたって、農業でもなんでもいいから、何か別のことしよう。この4人で。そんな言葉をかけたあなたが、片岡さんを悲しませるようなことをするとは思えない。

どんな事情があったのか、我々リスナーが知ることはできないがどうかメンバーの心が健やかであって欲しい。

隼ちゃんのご冥福を心よりお祈り申し上げます

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