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ミケは、唐突に、現れた。ちょうど、僕らが、神社に、お参りをすませ、時の鐘が、鳴り響く。
「こんにちは。いかが、お過ごしでしょうか。拙者が、この時代に、身を置くことができる時間は、限られています。なので、お話を、進めましょう。
今回は、未来に、ご案内いたします。あなたと、つぼみさんが、めでたく、結ばれる日。どうして、そんな日に、いく必要が、あるのかって?お二人が、その瞬間を、目に写すことによって、どのように、関係に変化が生じるのかは、分かりません。ただ、これは、ただの、お導きです。拙者たちが、巡り会うことが、すでに、最初から、決まっていることと、同じように。」
僕らは、思わず、息を呑む。映画のクライマックスを、いきなり、観せられたみたいだ。いくら、したたかな願望を抱いているからといって、物事には、順序がある。それを、デリカシーと、呼ぶのかも、しれない。だけど、この喋る猫は、そんなもの、地球上に、存在しないかのように、話し続ける。
「時の入り口は、どこにでも、あります。ただ、それに、気付かないだけで。あそこの、電話ボックスの扉をくぐってください。2年半後に、飛びます。場所は、つぼみさんの家の前。準備は、いいですか?」
僕は、彼女の顔をみた。なにも、うろたえることのない表情は、貫禄すら、感じる。ただの、気の強い性格という訳ではない。なにも、考えていない馬鹿とも、違う。すべての感覚を研ぎ澄まし、今ある情報で、最大限の理解に到達する。目つきは、するどく、明朗さが、漂う。
「私と、あなたが、結ばれるかは、別として。とりあえず、ミケさんの、言う通りにしましょう。だって、なんだか、面白そうだもの。今とは、違う自分を、見ることができる。それは、ある意味では、この世界のルールに、反している。決まりを破ることは、若さの、特権よ。」
僕らは、静かに、だけど、大胆に、公衆電話の扉を、くぐった。