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経営に失敗し、ドン底だった僕を救ったアルバイト先のオジサンの話

2児のパパであり、ひとり社長でもある僕は200万円の借金を返済するため、38歳にして倉庫作業のアルバイトをしている。回転寿司レーンのような機械に囲まれて、黙々と作業にあたる日々。経営がうまくいっていれば、こんな仕事しなくていいのに…

このnoteは「肉体労働なんて」と斜に構えていた僕が、オジサンとの出会いをきっかけに、真剣に仕事に向き合い、大切なことに気づいた話です。


経営がうまくいかず、倉庫作業の仕事を始める

ー前回のあらすじー

警察官を辞め、起業したものの経営に失敗し、200万円の借金を抱えることに。生活費を工面するため倉庫作業員に。息子が通う幼稚園の費用が払えなくなり、ずっと隠していた借金を妻に打ち明けました。
すべてを受け入れてくれた妻と共に、パパが再起を目指して奮闘する様子を赤裸々に書きました。

黙々と作業する環境で心が腐る

体育館の何倍も広い倉庫は、そこかしこに荷物が積まれています。背丈よりも高い荷物棚に視界が遮られ、まるで巨大迷路に迷い込んだよう。

最初に覚えた仕事は、ピッキングと梱包。
倉庫の中央にある巨大な回転寿司レーンのような機械から、ピッキングされた商品が乗せられて、商品が各間口に振り分けられていく。その商品を段ボールに詰める仕事です。

22:00~翌6:00までの夜勤帯には80〜100人が働いていて、エアコンが稼働していても、人の熱気でとにかく暑い。

ムンとこもった空気の中、過酷な環境も相まって文句を言う人もチラホラ。警察官のときも、起業したときも、仕事に何かしら目的意識を持った人たちに囲まれていたので、これまでの職場との差にカルチャーショックを感じました。

僕自身も「こんな仕事がしたくて起業したわけじゃない」と日に日に心が腐っていきました。(当時は本当にそう思ってました。今はそんなことないです)

オジさんとの出会い

本来なら経営が軌道に乗り、時間も能力もクライアントのために使うはずでした。なのに僕の目の前には、誰が買ったかも、誰に届くかもわからない商品がどんどん流れてくる。

「こんなはずじゃなかった」

早く辞めたい、辞められるように経営を立て直さなくては。そんなことばかり考える僕の横で、いつも丁寧にピッキング作業を行うオジサンがいました。40代くらいの、僕より背が低くて小柄な男性だ。

新人の僕が休憩を取りやすいように、「谷本くん、休憩行こうか」と声をかけてくれる優しい人。ある日、休憩室で額にたっぷりかいた汗をぬぐいながら、オジサンが「谷本くんは昼間何の仕事してるの?」と聞いてきました。

元々は警察官だったこと、会社を立ち上げたことを話しました。オジサンは興味深そうに聞いてくれ、

「僕はね、こう見えて声優業をしてるんよ。でもね、それだけじゃ食えないから、夜は頑張ってここで働いてるんだ」

その言葉を聞いて、何か心臓をぎゅーっと掴まれるような何とも言えない感覚になりました。わかってた。僕もわかってたはずなんだ。好きなことをやるために、やらなきゃいけないことをやる。

そう言えばここの夜勤には40~50代の女性が多い。聞けば子どもに良い大学に行かせるため、熟年離婚して第二の人生を歩み始めるため。みんな自分のやりたいこと、叶えたいことのために睡眠時間を削って働いている。

「みんな文句ばっかりで、仕事に前向きな人なんていない」

僕は何もわかっていなかった。自分だけはここにいる人たちとは違うって思ってた。でも勘違い。腐っているの僕だけだったんだ。

どんな仕事も真剣に向き合えば結果がついてくる

オジサンにアドバイスを受けながら、ピッキング・梱包を丁寧に行いました。効率よく作業するノウハウも分かり、時間あたりの生産性もかなり出せるように。曲がりなりにも経営を通じて自分で仕事をつくる経験をしてきたおかげで、仕事の本質を早々に理解し、気づけばトントン拍子で現場リーダーのポジションを任されるようになりました。

これまで倉庫内はミスに厳しく、「次ミスしたらもう働けんよ」と脅しのような言葉が飛び交うこともありました。でも人の意識を変えるのは簡単じゃない。ましてや脅しでは人のミスは減らない。それどころか余計に萎縮してミスが増える。

現場リーダーになって数ヶ月後、僕は他の勤務員の人たちにこう伝えました。

「今日は僕がいるので、いっぱいミスしてもらってOKです。そのミスをフォローするのが僕の役割なので」

すると、みんなの表情が少し柔らかくなりました。驚いたことに、夜勤帯での全ての作業が終わったとき、ミスはほとんどありませんでした。

人は本当の力、生産性を発揮するためには、それに見合う「安心して働ける環境」が必要。経営者として人を動かすために、もっとも大切で本質的なことを倉庫作業のアルバイトで学ばせてもらいました。

さいごに

オジサンのおかげで、僕は心を改め、倉庫作業に真摯に取り組めました。興味のなかった仕事にも真剣に向き合うことで、「働くとは何か」「誰もが快適に働ける環境とは何か」と深く考える機会を得ました。

今回の気づきは、僕の本業にも大いに役立つものです。人生に無駄はなく、無駄にしているのは自分の捉え方次第であることを学んだ貴重な体験でした。

もしこのnoteを読んでくれている人の中で、自分の置かれている環境を悲観し「こんなはずじゃなかった」と腐りかけている人がいるのであれば、こう言いたい。

今、あなたの身に起こっている出来事すべてに意味がある。その出来事をあなたの価値観やプライドという色メガネで見てしまっては、そこから這い上がるのは難しくなってしまう。

うまくいってない時に「なぜ?」と考えると、言い訳(過去)ばかり思い浮かぶけど「どうすれば?」と考えれば浮上のためのきっかけ(未来)を探すようになります。

『あなたは、どうすれば今の状況を活かして、最高の未来をつくることができますか?』

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※ この記事は友人で、現役のプロライターでもあるママさん「ことロップ」さん代筆のもと制作しました✨
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