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サイクリングデッキにおける最適な土地枚数の導出

はじめに

2020年4月に発売されたMagic: The Gatheringの新パック「イコリア」にて、「サイクリング」が再録されました。リミテッドでサイクリングを含むデッキを組んだ際に、土地の枚数に困った方もいるのではないでしょうか?
本稿では、リミテッドでサイクリングを含むデッキを構築した際の、最適な土地の枚数を計算によって求めていきます。

結論から

サイクリングを前提とするカードの採用枚数を X とした時、最適な土地枚数は下表の通りです。

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以下、土地の枚数を変更する理由と、導出方法を記載します。

なぜ土地の枚数を変更するのか?

リミテッドの土地枚数は17枚が適正と言われています。しかし、サイクリングデッキで土地17枚を採用すると、あっという間にフラッドします。
何故ならサイクリングには「デッキを圧縮する効果」があるからです。

極端な例ですが、サイクリングすることが前提のカードが10枚入っていた場合、「30枚のデッキに17枚の土地が入っている」時と近い状態になります。
「40枚のデッキに土地が17枚入っている」場合よりも、デッキの中の土地の密度が高くなっていることが分かるかと思います。

そのため、サイクリングを多用するデッキでは土地の枚数を削る技術が必要になります。しかし、実際に何枚削るのが最適なのか、ということを経験則で求めるのは困難です。

そこで、高校数学の組み合わせの計算を用いることで、サイクリングデッキにおける最適な土地枚数を算出しよう、というのが本稿の内容になります。

最適な土地枚数の求め方

前提として、「初手には土地が2~4枚あることが望ましい」という目標を設定します。
これを言い換えると、「初手7枚の中に土地が2~4枚ある確率が最大となる土地の採用枚数を求めたい」ということになります。

以下、組み合わせの計算  nCrCombin(n,r) と表すことにします。
nCr は「異なるn個の中からr個を取り出した時の組み合わせ」の計算です。

まず、「40枚デッキで初手7枚を引いた時に、N枚採用しているカードをM枚引く確率」は以下のようになります。

Combin(N,M) * Combin(40-N,7-M) / Combin(40,7)  …… (式1)

「N枚採用しているカードをM枚引く」ということは、同時に「それ以外に(7-M)枚、(40-N)枚採用しているカードを引く」ということになります。
この組み合わせの数を上式の積の部分が算出しています。
その後、「40枚から7枚引いた時の組み合わせの数」で割ることで、確率を求めることができます。

式1から、「40枚デッキで初手7枚を引いた時に、N枚採用しているカードを2~4枚引く確率」は以下になります。

   Combin(N,2) * Combin(40-N,7-2) / Combin(40,7)
+ Combin(N,3) * Combin(40-N,7-3) / Combin(40,7)
+ Combin(N,4) * Combin(40-N,7-4) / Combin(40,7)  
…… (式2)

試しに、土地の枚数であるNに15~19の値を当てはめてみると、17の確率が最大で、通常のリミテッドでは土地17枚が適正であることがわかります。

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ここで、サイクリングには「デッキを圧縮する効果」がある、ということを思い出しましょう。
通常、リミテッドのデッキは40枚ですが、サイクリングをすることが前提のカードが X 枚入っている場合、そのデッキ枚数は「40-X」と置き換えて考える必要があります。

つまり、「サイクリングをすることが前提のカードをX枚採用した40枚デッキで、初手7枚を引いた時に、N枚採用しているカードを2~4枚引く確率」は以下となります。

   Combin(N,2) * Combin(40-X-N,7-2) / Combin(40-X,7)
+ Combin(N,3) * Combin(40-X-N,7-3) / Combin(40-X,7)
+ Combin(N,4) * Combin(40-X-N,7-4) / Combin(40-X,7)   
…… (式3)

以上のことをExcel表にまとめると、以下の結果表を得られます。
横軸にサイクリングをすることが前提のカードの枚数X、縦軸に土地の枚数Nをとり、縦列の中で確率が最大のセルを緑色で表示しています。

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上図から、サイクリングを前提とするカードの採用枚数を X とした時、最適な土地枚数は下表の通りである、ということが分かりました。

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導出は以上となります。

実際にサイクリングデッキを組む際の注意点について

蛇足ではありますが、実際にサイクリングデッキを組む際の注意点について記載します。

ここまでの導出で、サイクリングデッキを組む際の最適な土地枚数を計算することができました。ただし、ここで得られた結果は、実際のプレイの中でサイクリングに必要なマナコストを加味していません。
つまり、土地を切り詰めれば切り詰めるほど、サイクリングコストが重くのしかかってくる可能性がある、ということです。

そのため、イコリア環境で実際にサイクリングデッキを組む際には、サイクリングコストが1マナであるカードを採用するようにしましょう。
イコリア環境では、無色1マナでサイクリングできるカードが、下図の通り合計10枚収録されており、ドラフトピックの際にはこれらのカードを意識してピックすることが重要です。色が合わなくても、サイクリングできるならピックする価値があります。

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マリガン判断も重要です。
土地の少ない構成だと、土地1枚とサイクリングカード複数枚、という初手がくることも珍しくなく、それをキープすることが求められます。その際には、序盤展開負けする可能性が高くなるので、土地を引けたら即座に動いていけるかどうか、きちんと判断していきましょう。

最後に

ご挨拶が遅れました。
ニコニコ動画で「京町セイカの連コイン戦略」というドラフトピック動画を投稿しております、たくわんと申します。

私自身リミテッドはまだまだ勉強中の身で、新パックが発売されるたびにMTGArenaでミシックランクになるまでランクドラフトをプレイする程度の腕前です。本稿の執筆も、環境理解のための勉強の一環です。

以下、イコリア環境のコンバットトリックをまとめた動画のリンクを用意しておきます。参考になれば幸いです。

本稿執筆時点、まだミシックランクに到達していないので、イコリア環境のドラフトピック動画は投稿しておりません。
(追記5/3)ピック譜の動画も投稿しましたので以下にリンクを貼っておきます。

何かございましたら、以下にご連絡いただければ対応できるかと思います。
Twitter@takuwan_takusan

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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