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素人カバン補修講座
日頃なんの変哲もない勤め人として働いております。リモートワークがこれだけ普及した令和の世で、月金で通勤、始業時間にラジオ体操と朝礼と言う、昭和スタイルを貫く職場で今日も今日とて、せっせと書類をめくったりPCカタカタして働く者です。
一応サラリーマンなので、それなりの鞄を使っています。イオンのワゴンセールで買った1万ちょいの革のビジネスバッグ👜
ストラップ付きで肩にかけることが出来る、
ホントにありふれたモノですが、国産品なのでとてもしっかり作られており、デザインや色ともに気に入って使っています。
会社帰りの習慣として、最寄りの一つ前の駅で降りて、歩いて帰ることにしています。
運動不足解消と、ダイエットの為です。
今の職場に赴任して5年間、雨降り以外は、3キロ強の道をカバンを襷掛けにして徒歩で帰るのです。今の鞄にしてからは2年位だと思います。この習慣が後に悲劇を引き起こす事になるとは知る由もなく。
2週間ほど前、いつものように勤務先の駅で降車して、ホームを歩きながら鞄を襷掛けにして歩き出した途端、何がベージュの紐のような物が視界を掠めました。
「何だ?」と思ったのも束の間、右肩に掛かってた筈の鞄の重みがなくなり、鞄がホームのアスファルトに転がりました。
「は??」上のファスナーを開けたままにしておいたので、上から財布とiPadがはみ出てしまっています。
落ちた鞄を慌てて拾い上げ、見てみるとなんと、ストラップの金具を留めている革のパーツが破れているではありませんか。
鞄が落ちた瞬間、すれ違いざまにビクッとしていた男の人、驚かせてごめんなさい。
2年以上の3キロ徒歩の荷重に耐えられなくなり、破損してしまいました。
1日3.2キロが週5、、、いや週4としよう。
週に12.8キロ✖️52週✖️2年
1331キロをこの鞄を襷掛けで歩いたことになります。
埼玉の自宅から種子島北端まで届く距離をこの鞄を肩にかけて歩いたのです。
ひょっとしたら3年くらい使ってるかも知れません。
日頃は財布やスマホや定期やタバコなど、それほど重くないんでずが、iPad入れたり、折り畳み傘を入れると一気に重くなります。
重い時は3キロ位あるかも知れません。
実は以前にも同じ経験をした事があるんです。
数年前、同じように駅のホームの長い階段を降りようとしたその時に留め具が壊れて、鞄が階段をツツーッと滑り落ちて踊り場で止まりました。ホントに焦ったし恥ずかしかった。誰にも当たらなくて良かったんですけど。
ここでこれを見て下さい。
今回破損したのは、この鞄側の金具を留めていた革パーツでしたが、金具自体もここまで摩耗していたのです。フックの形がそのまま出てますよね。もう針金くらいにまで細くなっています。これでは革が破れなくてもストラップが外れるのは時間の問題でした。以前壊れた時はこの金具が割れた事が原因でした。
なんて事だ!!
理屈はわかる。使いすぎて壊れただけの事だ。
だからといって歩いてる時に落ちるか普通⁉️
しかも2度目だぞ。人生2度目だ。このペースなら、定年までにもう一度起きてもおかしくない。こんなもん電車とホームの隙間にでも落ちた日には電車止めるハメになるかも知れない。
だからといって日頃そんな所気にしてない。
ストラップの留め金部分が壊れて落ちるなんて考えて暮らしてないんだよ誰だって。
俺だってそうだ。なんなら永遠に壊れないとすら思っている。
何故俺ばかり、、、と不貞腐れていても仕方がありません。早急に補修が必要になりました。
そこ以外は問題ないので、手提げ鞄としては普通に使えます。それが本来の使い方なのでしょう。
しかし、他に荷物があったり、傘をさしている時は、やはり鞄は襷掛けにしたいですよね。
以前はすぐに買い替えましたが、2度目だし気に入ってるから買い替えは気が進みません。
こんな事で買い替えさせられるのがなんか癪だし、買い替えたって何年かすればまた壊れて転がり落ちて行くに決まっているからです。
直そう。
そこでまず思い浮かべるのは、街の修理屋さんです。駅前などにスタンド形式で革靴や鞄の修理をやっている、Mr.MINITみたいな店がそこかしこにあります。
そこち持ち込んで直してもらうのがいいと思い、まずは値段を調べました。
そうそうこれこれ。俺の鞄もまさにこんな風に壊れた。やはり同じ様に壊れるんだなあ。
そして気になるお値段は、、、
高えよ!!!!!!
8800円から⁉️⁉️⁉️
カバンが1万ちょいだぞ❗️
1万ちょいの鞄の、ほんの一部の補修に8800円!!しかも「から」って事は最低価格が8800円なんだからそれ以上の価格になる事もあり得る訳だ。どうなってんだ日本の経済は!!捻れとる!中尾彬のマフラーくらい捻れてる。
経済が崩壊しないのが不思議でならない現象が起きている様です。
8800円と言うと、半世紀前にお袋が結婚した時に勤め先の社長から貰った陶芸の茶碗をメルカリで売り飛ばした(本人の希望で)時の利鞘と全く同じではありませんか。
とてもじゃないが払えない。
いや別に金がない訳じゃないが、どうしても納得出来ません。
ほかの修理店も調べましたが、同じような値段でした。
2.3千円くらいだと思っていたのが甘かったようです。
完全に詰みました。こんな一部が破損したまま、手提げ鞄として使い続ける他ないのでしょうか。そんな時ふと、ある考えが浮かびました。
自分で直せないか?
いやいや無理だろ? 革細工だぞ。経験ゼロの革細工なんかできる訳がない・・・革細工か・・
そう言えば昔付き合っていた彼女が、趣味で革細工をやっていた事を思い出しました。革で作ったキーホルダーをもらったこともありました。
頼むか・・・しかし久しぶりに元カレから(しかも俺から振った)連絡が来て、何かと思えば壊れた鞄直してくれなんて、彼女はどう思うでしょうか?
やはりそれは出来ない。そこまで無神経ではないのです。
試しにやってみようかと、ユザワヤに行って色々見てみたり、ネットでDIYみたいなサイトを見たりしましたが。結論は。
これは俺には無理だ
全く経験も知識もない。材料はおろか道具すら持っていない。一式揃えるのにそこそこかかるだろうし、そこまでやって直る保証もない。その間、会社にはプライベートで使っているカジュアルの鞄を使っていました。しかしなんともミスマッチでマヌケです。
やはり今度の給料日に新しい鞄を買ってしまおうか・・そんな風に思い直していたんですが、ある考えがひらめいたのです。
なにも革に拘る必要はない。金物でもいいじゃないか。
まさに天啓というやつです。悩める子羊に神が手を差し伸べてくださったのでしょう。革細工は素人ですが、前職が建築業だったこともあって、金物などには多少ですが知識があるんです。
これならいけるぞ!我ながら良いアイデアを思いついたものだとテンションが上りました。しかし問題は金物をどう使って直すかです。相手は革です。革にネジも何も効きはしません。そこで。
この様なステンレス製のフックと、同じくらいのフックのないプレートで、革を挟み込むという直し方を考えました。ネットだと簡単に手に入りますが、せいぜい一個270円位の物を買うのに送料かけるのもバカらしいので、近所で探すことにしました。
こういう時、ついホームセンターに行きがちですが、こういった金物は、街の金物屋さんの方が品揃えが充実していたりします。
プロの建築屋さんが、朝現場に行く途中で寄ったりする訳ですから、それなりに品物は揃えてあるし、朝7時とか早い時間から開いていることが多いです。俺も実際近所の金物屋さんで買いました。
問題は相手側、つまり鞄の内側に使うプレートです。フックは必要ありませんが、表側と同じ位置にネジ穴がないと固定できません。穴は自分で開けるとして、同じくらいのサイズで、厚みが2ミリ以上あるのが望ましいです。
意外とこれがない。ただのプレートってあまり用途がないのか見つかりません。困った末に、フックをもうひとつ買うことにしました。
フックは不要ですが、厚みもあるし、何より最初からネジ穴が同じ位置についている訳ですから、自分で穴を空ける手間が省けます。これが大きいです。フックは後で切り落としてもいいですし。ステンレスに穴をあけるのは簡単そうでも、このサイズだと小さすぎて結構手間なんです。普通の鉄より硬いし、専用のキリとドリルが必要です。キリも決して安くないので。
同じフックを2つで、革を挟み込んで、ビスとナットで固定する。これでイケそうです。
最終的にはビスとナットで固定する訳ですが、
それだけだと、長い間使い続けるうちに、穴から革が破れてしまうかもしれません。
なので、鞄の表面とフックは接着する事にしました。ビス穴だとどうしても点に力が加わりますが、接着剤すれば面で持ってくれるはずです。それに加えてビスナットで4箇所固定する訳です。おそらく永遠に壊れないでしょう。
接着剤にも色々ありますが、皮とステンレスを接着するならもうこれでしょう。
独特の匂いがする、ゴム系接着剤です。
建築屋時代に死ぬほど使いました。プロの間では「ブルダイン」と呼ばれていました。
尤もその頃使っていたのは、こんな少量のチューブではなくて、ペンキが入っているような丸い缶でしたけど。
これは、完全に固まっても、ゴム状になってくれます。他の接着剤だと、カチカチに固まってしまいますが、これは固まった後でもある程度弾力性があるので、振動する鞄の接着には持ってこいなのです。振動を吸収してくれるから割れたりしない訳です。
この接着剤は所謂両面貼りで接着します。
革とプレートの両面に塗布して、触っても指にくっつかなくなるまで乾燥させてから接着します。接着後は固まるまで圧着しておきます。
乾く前に接着しようとして、職人さんにいつも怒鳴られてましたから嫌でも覚えました。
そうやって覚えた仕事と言うのは忘れないものです。もう20年くらい前の事なんですけどね。
施工方法としては、プレート側に多めに塗布して、一度革に貼り付けます。そしてすぐに剥がします。すると革の方にも接着剤が付くので、付属のヘラで万遍なく広げてから、しばらく待ちます。接着後に接着剤がはみ出てしまうかも知れないので、あらかじめマスキングして置くと綺麗に仕上がります。俺はこれを忘れて、はみ出た接着材を取るのに少し手こずりました。
そして圧着ですが、平べったい物なら、上から重しを置いたりできますが、フックがあるのでそれは出来ません。なので
これを使いました。名前がわかりませんが、おそらくプラモデル作る時に、パーツを接着した後で挟んで圧着する洗濯バサミみたいなやつが今回には丁度良いです。元々持っていた物です。名前わかる方教えて下さい^^;
これは後で撮った写真なので、ビスが見えていますが、圧着した時はもちろん穴が空いたままの状態でした。このまま一晩放置しておきました。
書き忘れてましたけど、接着剤を塗布する面には予めアルコールなどで油分を取り除いておいて下さい。ステンレスプレートの方も、製造時に油を使っていたりするので、案外油分が少量でも付着している事がよくあります。こんなの基本中の基本ですよね。このご時世ですからアルコールはいくらでも手に入ります。
翌日、ハサミを外してみると、しっかり接着されていました。これだけでもかなり強度が出ていそうです。さすがG17。期待を裏切りません。
さて、いよいよ大詰めのビスナット固定の段階まで来ました。プレートには4.7ミリの穴が空いていますから、4ミリの皿ネジで長さは15ミリの物を選択しました。この長さもポイントです。
あまりこういう作業をしたことのない人は案外勘違いしている場合が多いんですが、例えば5ミリの穴が空いているところにビスを使って固定したりしようとする場合。同じ5ミリのビスを使おうとしてしまう人がいます。しかし
5ミリの穴に5ミリのものは入りません。
そりゃそうです。穴と棒が同じ太さだったら入る訳ないのです。これも建築屋時代に耳タコになる程言われた事の一つです。
ここを間違えると、またホームセンターに行かないと行けなくなったりしますので、是非注意して欲しい所です。穴が5ミリなら、4.5ミリとか4ミリとかを選択するのが普通です。
プレートが既に固定されていますから、穴を開ける位置は決まっています。穴にキリを入れるだけで良いのです。
革細工に穴を開けたりする時はどんな道具を使うのでしょうか?全く素人の俺には想像もつきません。専用のキリなどがあるのでしようか?
俺は鉄用のキリを使いました。これが案外苦労しました。革だがらよれるし、裏地の布に引っ掛かって中々貫通しませんでした。裏地の方はカッターを使ったりして何とか穴が空きました。
先程触れましたが、ビスの長さを15ミリにしたのは訳があるんです。
ナットで締め付けても、長いこと使えば振動で緩んでしまいます。そこで。
わかりますかね?ダブルナットを採用しました。
大した事ではありません。単にナットを二重にするだけです。しかしたったこれだけで効果は絶大なのです。緩むことはまずありません。
これも建築の現場で覚えた事です。耐震補強の現場等で、鉄骨の固定等でよく使われます。
ホントは緩み止めのダメ押しに、ハンダを流し込んでやろうかと思いましたが、ステンレスには普通のハンダは付かない事を思い出しました。ステンレス専用のハンダが必要です。なので諦めました。
これで完成しました!
取り付け位置が少し下になってしまったのは、鞄の内側に革の折り返しがあったので、そこに被ると取り付けしにくいからです。
ビフォーアフター
訳ながら見事な出来映え。欲を言えば色はアンバーかブロンズが良かったかなとも思いましたが、そうするとビスまで同じ色にしないと却って変になるし、探すの大変ですからね。
恐らくこれで永遠に壊れないと思います。
某SNSに挙げたところ、自分も直したいので詳しく教えて欲しいとの声がありましたので、書き残しておきます。長文にて失礼。