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俺の人生は…

今、俺はスマホを眺めている。
何か面白いものはないかと、俺の指はスマホ画面の上をせわしなく滑っている。

女の尻が俺の尻に当たった。
そう、ここは満員電車の中だ。
あの鬱屈した、重苦しい満員電車の中だ。
俺は毎朝この電車で仕事場に向かう。

画面に現れた見出しが、ふと目に止まる。
だが見出しを見れば、中身は大体予想がつく。
こんなもの、読まなくても、別に大して後悔はしない。
後悔もしなければ、あとあと気になることもない。
でも、ちょっとした好奇心は俺の癖だ。
少しでも目に止まってしまうと、何も考えずにそのページを開いてみたくなってしまう。
俺は満員電車の中で指先だけを器用に動かして、リンクを開く。

ああ、またいつも通りだ。
大したことなんて書いてやいない。
やたらとベタベタ貼り付けられた広告だけが目につきやがる。
こんなものに俺は時間を使いたくはない。
俺はもっと面白い情報を、もっと有益な情報を、時間をかけずにさっさと手に入れたいのだ。

だが、なんとはなしに、読み進めていく。
どんどんどんどん読み進めていく。
なぜだ?
面白くもない事実がただただ並べられているだけだというのに、俺はこの文章を読まずにはいられない。
まるでこの文章は、他人事ではないみたいだ!

俺の鼓動が早まる。
満員電車の中で、俺の息は上がっていく。
だが俺はもはやこの満員電車の中にいて、この鬱陶しい人の圧を感じない。

俺だ。
ここに書かれているのは俺だ。
そう、何もかもつまらないと思って毎日を生きている俺だ。
そしてつまらない毎日に飽き飽きして、どうにかしてこの生暖かい永劫回帰を抜け出そうとハイエナのように刺激物を求めている俺だ。
俺はいつからそんなつまらない世界に生きる、つまらない人間になってしまったのか?

ふと、列車がスピードを緩めていることに気づく。
人の圧が俺の肩と足にかかってくる。
さっきの女の尻がまた俺の尻に擦れた。
車掌の無機質な声がもうじき駅に着くことを知らせる。

列車は完全に止まった。
だが、ここはまだ、俺の降りる駅ではない。
ドアが開けば、人は降りるよりも乗ってくる。
俺は顔を上げて、さらに高まる満員電車の圧に備えようとした。

ドアの外の景色が目に入る。
そこに見えたのは、快晴の下、眩しいまでに白く輝く駅のホームと、はるか遠くに臨める少し霞んだ山々だった。

ああ、俺は今、ここで降りたら自由になれるのだな。

そう感じて、俺の足はドアの外へと浮きかけた。

だが、俺の足が一歩を踏み出すことはなかった。

俺は人の波に飲み込まれた。

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Takuto Ito
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