きょうの難経 十八難(2) 2021/11/18

十八難の後半です。
前回は人体が「上・中・下」の三部に分かれ、それが寸関尺の三部に対応し、さらに浮中沈を掛け合わせて三部九候とし、経絡と臓腑への接続が図られました。
今回はその続きです。

人病有沈滯久積聚 可切脈而知之耶
(人の病に沈滞して久しく積聚するあり、脈を切してこれを知るべきや)


診在右脅有積氣 得肺脈結 脈結甚則積甚 結微則氣微
(診して右脇に在りて積気有るときは、肺脈の結を得、脈の結すること甚だしければ、則ち積は甚だしく、結すること微なれば則ち気は微)

診不得肺脈 而右脅有積氣者 何也
(診して肺脈を得ず、しかして右脇に積気有る者は何ぞや)


肺脈雖不見 右手脈當沈伏
(肺脈あらわれずといえども、右手の脈まさに沈伏すべし)

其外痼疾同法耶 將異也
(其の外、痼疾も法を同じくするや、はた異なるや)


結者 脈來去時一止 無常數 名曰結也
(結なる者は脈の来去する時、一たび止みて常数なきを名付けて結というなり)
伏者 脈行筋下也
(伏なる者は脈、筋下を行くなり)

浮者 脈在肉上行也
(浮なる者は脈、肉の上に在りて行くなり)

左右表裏 法皆如此
(左右表裏、法みな此くの如し)

假令脈結伏者 內無積聚
(たとえば脈の結伏するものの内に積聚なき)
脈浮結者 外無痼疾
(脈の浮・結するものの、外に痼疾なき)
有積聚脈不結伏
(積聚ありて脈の結伏せざるもの)
有痼疾脈不浮結
(痼疾ありて脈の浮結せざるもの)
為脈不應病 病不應脈 是為死病也
(脈の病に応ぜず、病の脈に応ぜずとなす、これを死病となすなり)

この部分が後に発展して、寸口部の脈と臓腑を結び付けた「六部定位脈診」へと発展していきます。
ちなみに、現在の『新版 東洋医学概論』では、『素問』三部九候論第二十にある三部九候診と、今回の『難経』十八難の三部九候診を、ちゃんと違うものとして区別して記述されています。
さすが教科書。

六部定位をどのように臓腑に結びつけるかは歴代の医家の解釈に諸説あって、王叔和、李東垣、滑伯仁、李時珍、喩嘉言、李士材、張景岳など、そうそうたる先生方が自説を述べられています。
『新版 東洋医学概論』に挙げられている六部定位は、李時珍先生の説に一番近いように見えますが、実際はどうなんでしょうね。

理論と実践をどのようにつなげて臨床に生かしていくのかは、現代社会の中で鍼灸を実践する我々にとっても重要なテーマになるかと思います。


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