![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/68115843/rectangle_large_type_2_93e7f76e168db4d62c3bf0a8016aecf0.jpg?width=1200)
拓匠開発の「トイット」にはカレーパンもアンパンもない? 朝起きたらパンの匂いがする街はありかなしか!?
黒崎さとし
拓匠開発から依頼を受けた外部ライターが、“遠慮なし!でいいところだけじゃなくて悪いところも紹介する”をテーマに取材をしていく本ブログ。今回は、千葉県野田市の「オオソラモ野田みずき」に作られたベーカリー「トイット」についてご紹介です。
取材班も何度も訪れている「トイット」。グッドデザイン賞の記事でも触れられていましたが、閑静かつ、新しく造られた住宅街を歩いていると、“グッドデザインな”パン屋が現れるので、結構目を引きます。
パン屋ブームが訪れている昨今、便乗した狙いがあるのか……そんな若干斜に構えたスタイルで店主の丹羽祐介さんに、いろいろ話を聞きました。
●アンパンもカレーパンも無い!? それでも遠方からお客がくる理由
―今日(取材日)は1月の寒い日ですが、お客さんが途切れることなく来ています。お店は大規模に開発された街の一角ではありますが、閑静な住宅街の中にぽつんとあって、車でいらっしゃる人が多いですね。
丹羽祐介さん(以下、丹羽) はじめにこの立地でパン屋として経営を成り立たせていくのは、結構難題だなって思っていました。
―最初から結構お客さんがひっきりなしなんですか?
丹羽 いえいえ、もちろん最初はそんなことなくて。お店のPRについてもチラシを撒いたりみたいなことはせず、SNSくらいしかやってなくって、お店のスタッフや街の方が口コミで広めてくださって。ほんとうに地道に、1日1日お客さんが増えていったんです。
―お店をはじめるにあたって、拓匠開発のほうから「いわゆるパン屋さんにあるような、アンパン、カレーパン、メロンパンは出さないで」と言われたとか。
丹羽 そうなんです(笑)。私も長らくパン職人をやってきましたが、それらの商品は“パン屋さんの売れ筋商品ベスト5”に必ず入ってくるので、こりゃまいったな、と。でもまぁ「ここでしか食べられないものを作って欲しい」ということなのかなと開き直って、ないならないで別のものをさがせばいいか、と。
ちょっと形をかえたり名前をかえたりして、よくよく見ると、これクリームパンだよね? みたいな商品はあります。いわゆる丸いアンパンはないけれど、そこは工夫してそれに近い、あんこを使った商品はあるので。オリジナリティで勝負していますね。
―売れ筋はなんですか?
丹羽 オープン以来でいうと、やはり食パンなどはずっと買っていただいていますね。個人的に思い入れが深いものですと、ホワイトマカダミアという、生地にホワイトチョコとマカダミアを練り込んだハード系のパンですね。普段高価で、なかなか食べなれないものをカジュアルに、お客さんが手に取りやすいように仕上げていて、オープンからやってるんですけど愛されてます。
●デベロッパーが作るパン屋に最初は引いた
―そもそも丹羽さんはどのようにしてこちらのパン屋さんに関わるようになったんですか?
丹羽 もともと別のパン屋さんなどでフリーでパン職人をしてまして。あるとき拓匠開発がネットで、“街でパン屋さんをやりたい”という企画で職人の募集が上がっていたのを見つけて、応募したんですよね。それで担当の方とお話をして、トントン拍子で進んでいきました。
―「トイット」は、「オオソラモ野田みずき」の一角に作られています。まずはこちらの住人の方が朝起きたら、パンの匂いがする街っていうストーリーのもと作られたんですよね。
丹羽 そうですね。トイットができるちょっと前くらいからパン屋さんブームが来てまして、いろんな企業さんが経営に参入していたんです。なので正直、“デベロッパーがパン屋の経営”という印象だったので、ちょっと引いた気持ちで話を聞きにいったんですよね。
―それがなぜ、経営に参加することになったんですか?
丹羽 担当さんと直接お話したときに、「パン屋さんは街の人のためにやりたい」と話してもらったんです。
「自分たちは家を作って、それを売る商売なんだけど、売ってハイ、バイバイではなくて、もっと付加価値を提供していきたい。ずっとそのまま自分たちが売った分譲地で幸せに暮らしていったほしいがためのパン屋を」
という発想だったので。そこでじゃあ、自分も力を貸せれば、ということでした。
―今度、2号店が千葉市花見川区にオープンするそうですね。
丹羽 自分はここに愛着があるので複雑な気持ちもありますが…まぁやるからには、みなさんに喜んでもらえればいいのかなというのもあって。そこは割り切ったところもありつつです。このままチェーン展開とかになったら、私よりも経営に向いている人はいると思いますけどね。
―やはり街の中にあるパン屋さんというストーリーに共鳴したんですね。
丹羽 自分はパン職人なので、これまではなかなか直接お客さんから感謝されるってなかなかなかったんですよ。直接お客さんに手渡したりとかしづらい職業ではある。朝早く起きてパンを作って、翌日の仕込みをしておしまい。あとは販売のかたにまかせて、みたいな感じなので。なかなかお客さんに喜んでもらえてる顔をみられなかったりもあるので。そういう事をしたいっていう会社がある。それに力を貸せるのであればそれはすごく魅力のある仕事だと思います。