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「駅から30分かかっても住みたい家」 「街ごと買う」というコンセプトのメリットとデメリットとは

「ただの建売住宅ではなくて、あるコンセプトを持って街全体を開発し、その中の戸建てを販売する」という、拓匠開発のメインコンセプトのひとつ。ただ、その言葉だけ聞いてもいまいちピンとこないかもしれない。
「家を買うんじゃなくて街を買う?」
 本稿では、拓匠開発執行役員の湯浅里実さん、不動産仲介業者との窓口を担当する藤原雄也さん、住宅などの設計デザインを手掛ける井桁勝さん、そしてもともとは拓匠開発で営業をされていて、現在は飲食事業を手掛けるグループ会社・取締役社長の阪本剛さんといった、販売やブランドPR、設計とデザインなどを担う同社のスペシャリストたちに、“街ごと買う”とは、具体的にどういうことなのか? を言語化すべく、お話を伺った。

――「家を買うんじゃなくて、街を買う」って言われたときに率直には理解できなくて。実際に行ってみて「こういうことか」と直感的に分かる部分はあるんですが、ここではまだ拓匠開発の物件を見たことがない方でも理解できるように言語化していけたらと思います。またその中で、これから物件を購入しようとしてる方に、「こういう選択肢もあるんだ」とアピールできればと思います。

阪本:そうですね…。まず全体像でいうと、弊社の場合は土地を仕入れて家が建つように準備して設計師が設計してPRしてアフターサービスもして…というところまで全部自社でやる体制を作っています。この“街ごと開発して、その中に建てた住宅を販売する”というコンセプトには、普通の建売住宅販売業者さんとは違うメリットを見出して、一般的には物件購入でデメリットと思われる部分にも目をつぶっていただけるようにすることが、目的のひとつだと思います。

湯浅:そこでまず違うのは、例えば弊社が開発した千葉県野田市の「オオソラモ野田みずき」のように4,000平米の緑地帯を街の真ん中に造るというのは、ほかがやらないことなのかな。売り上げベースで考えると、緑地帯も宅地として出したほうがいいはずですが、私たちは気持ちのいい家・ゆとりのある生活を焦点にすえた街づくりに重きを置いて、そこを付加価値として販売したのが「野田みずき」だと思っています。

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井桁:宅地の設計に関しても、毎回敷地がバラバラなので、画一的な分譲住宅を押し込むと狭い家を詰め込む事になってしまいます。そこで弊社では、その土地の一番いいところを活かすようになりました。そして街ごと設計することで例えば、夕方になると隣家がこの家に影を落とすので、ならばそうならないように窓の位置をずらそう、とか各戸がいつ家に居ても気持ちいいように、コントロールできるんですよね。また、窓の向きをそれぞれ微妙にずらすことで、プライバシーとパブリックを綺麗に棲み分けています。個別の住宅地の中に一軒家を建てるとなると、そうはいきませんから。

藤原:営業的におもしろいことがありました。
 以前、うちの物件と他のビルダーさん(中規模の住宅建築業)の物件で迷っているお客さまで、価格的には500万円くらい差があるわけです。正直、ビルダーさんのほうが建物のわかりやすいスペックというか…「床暖房ついてます」などの機能もいいし、駅も近いですっていう状況だったんですが、最終的にはうちの分譲地に決めてくださったお客様がいて。なぜなら、お子さんがまだ小さいので、楽しく遊べそうな分譲地だったことが決め手と、うかがいました。やっぱり普通だと元は1棟だった敷地に無理に2棟建てて、周りは古い家があって過疎化しているっていう感じだったんですよね。うちの分譲地は新しくて同世代の方たちもいて、お子さんもこっちのほうが友達できるし、小学校に通うときも周りとのコミュニティもできるし、ママ友もできるし、他のビルダーさんのほうは奥さんの実家も近くて優勢だったんですけど、最後に決めたのはお子さんのためだったそうです。

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阪本:一方でデメリットとしては、土地に対して戸数は減るので、販売価格の相場があるとすれば、1.1倍とか1.2倍くらいにはなってしまいます。数学上では無駄になる部分もあるんですよね。でも、その無駄が実はゆとりだったり快適だったりそこが強みになります。例えば山の手線の駅前に平屋を作りたいってなると、「5億円用意してくれますか」っていう話になってしまうので。「通勤に1時間かけてもらえれば、それが3000万円になりますよ」。駅から遠い、だからこういうことができるとか、駅から近い、だけどこういうことができないっていうコンセプトがはっきりしているので、我々はそれをはっきり説明するように徹底しています。

○「一戸建てでも共益費がある」ことの意味を理解できるか

湯浅:そうして他社様と差別化を図って、その変わったポイントに価値を感じてくださるお客様に住んでいただけると、同じ価値観の方が自然と集まって、住民の皆様で街づくりをしてもらえることを意識しております。

阪本:営業も街のコンセプトについては、一番最初に丁寧に説明しています。街のルールも含めて理解してくださってる方に住んでいただいているので、街でのイベントとか住んでいただいてからの快適性を共感していただけているのではないかなと思っていますね。

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藤原:ご覧いただいた、アラ・ラ若葉桜木は分譲地内の道路が共有地になっているので、修繕積立金などを毎月積み立てていただいてます。普通の一軒家を買ったなら、かからないお金ですよね。「シェアリングコミュニティ=街ごと買う」というコンセプトは、まだこれから伝えていかなければな、というところです。ただ単に「道路が共有地だから」「共有の植栽が植わっているから」年に数万円積み立てる必要があると言われて、テンションが下がってしまうお客様もいらっしゃいました。

湯浅:そうまでしてでも、やっぱり遊び心とゆとりで宅地を開発して、コミュニティとか人と人を大事にしている街を提供していくことが重要ですね。

井桁:設計に関しても、理性ではなく見た瞬間に言わなくても好きになってしまうっていう感覚を提供できるようにしています。もちろん裏打ちしているロジカルなものは存在しているんですけど、“うちの建物の体感”をより大事にしていくようにやってきました。

阪本:住宅営業が仕事ですけど、ただ家を売るだけじゃないといいますか、“街ごと売る”というのはそういうことだと思います。どちらかというと家はその街という作品の一部で、全体のブランディングからアピールしてもらったものを販売していくっていうのが基本的な形です。弊社ではみんな共通して、街づくりをしているんですよね。


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