「Yes, but」の話術は単なるテクニックではない、という話
相手の提案に対して、自分の意見が異なっていたとき、「いや、こうだと思います」というよりも、「たしかにそうですね。しかし、私はこうだと思います」という方が意見が通りやすい、という話を聞いたことがあります。
いわゆる「No」よりも「Yes, but~」のほうが良い、という話です。
今回の記事ではこの「Yes, but~」は単なるテクニックではない、という話をお伝えしようと思います。
結論から言うと、「話術はテクニックではなく、生き方」だと思っています。
1.人の話を聞いていますか?
会話術の基本として「聞き手に徹する」というのは基本中の基本です。
ただ、この「聞き手に徹する」という話術。これ単体では機能しません。
友人「昨日、近場に旅行に行ってさ―。レンタカー借りたんだけど」
私 「うん」
友人「塀と擦ちゃってさあ」
私 「うん」
友人「おかげで5万円とんじゃって、遠くに旅行行くのと値段とんとんになっちゃったよ。はは」
私 「あはははー」
私もよくやりがちなのですが、これなら友人はただ壁と話をしているのと変わりません。
ですが「聞き手に徹する」という言葉をそのまま受け止めてしまうと先程のような『壁』になってしまいます。
また、もう一つやりがちなのは以下の会話
友人「昨日、近場に旅行に行ってさ―。レンタカー借りたんだけど」
私 「うん」(あ、私も1年前に家族旅行に行った)
友人「塀と擦ちゃってさあ」
私 「うん」(これは、私の話をするしかない)
友人「おかげで5万円とんじゃって、遠くに旅行行くのと値段とんとんになっちゃったよ。はは」
私 「あはは、実は私も、同じようなことがあったんだよね。私のときは~」(話し終わった! 私のターンだ!)
これでは「会話」というステージにおける主導権の争いになってしまっています。
おそらくこういう人たち向けに「聞き手に徹する」というアドバイスがなされるのでしょう。
2.争いではなく協調が必要
友人関係や企業の取引において、どちらかが相手の優位に立とうとするのではなくwin-winの関係を築くべきです。
それは会話においても同じです。
自分のことを理解する前に、相手のことを理解することです。
そうでないと話が次に進みません。
簡単な例で説明しましょう。
取引先「これからの時代。インターネットを使って、幅広い顧客に商品をアピールしていくべきです」
私 「いえ、私は顧客層を絞って商品をアピールしていくべきだと思っています」
取引先「でも、幅広い顧客にアピールしたほうが良いということをデータが示しています」
私 「ですが、そのデータが弊社の製品に適用できるとは限りません」
取引先「ですが、他にデータはありませんし……」
……(以下略)
いかがでしょうか。互いに反対意見ばかり述べていると、議論はひたすら発散していき、論点すら見えなくなってきてしまいます。
これが科学や数学など「明らかに間違っている場合がある」話でなければ、まずは相手を理解しましょう。
そうしなければ、相手は「私の意見が通らないのは、理解してもらっていないからだ」と考えるはずです。
そうなると相手は「理解してもらうまで納得させよう」という気持ちになります。
このポイントが重要で、逆に言えば「納得した」ことを示さない限り議論は先に進みません。
3.テクニックではなく、真の意味で理解し、理解したことを示す。
ここまでで「相手のことを理解することが重要」だと言ってきました。
議論をすすめるための方法として「Yes, but(そうですね、ですが~)」の話術が有効なのも同じ理由からです。
取引先「これからの時代。インターネットを使って、幅広い顧客に商品をアピールしていくべきです」
私 「確かにそうだと思います。ですが、基本路線として一定の層をまずはじめにターゲットとして据えたほうが初期段階としては集客効果が望めると思います」
このように話すだけで、議論が進みやすくなります。
ただ、もちろんこれは信頼関係の度合いにもよります。
「あ、こいつただ適当に『そうですね、でも』って言っているな」と思われたら、この話術は成り立ちません。
一方で、相手のことを理解しない限り、議論は先に進みません。
ですので「あ、この人私と意見が違うな」と思ったら、まずは相手が何を言っているのかを理解するように努めましょう。
「いや、私は相手の言っていることを理解しているよ。でも相手の言っていることが100%間違っているから」
こういった場合でも、相手のことをまず理解していることを示しましょう。
「理解した」ことよりも重要なのは「理解していることを示す」ことです。(ところで、この辺が、仕事というか人間関係で非常に面倒なところです)
そうして、相手のことを理解した上で、相手の言っているところと「ここが違いますよね」と納得していただくとよいでしょう。
あくまで、お互いに話し合って「認識の齟齬に気がついた」とするイメージです。上記の例でいくと、
取引先は「将来的な顧客層」について
私は「直近の顧客層」について
それぞれ語っていたことが容易に想像できます。
始めに比べて、相手のことを説得、あるいは議論が進んだ感じが格段に上がったのではないでしょうか。
結局の所、単なる話術ではこのような話の展開はできません。
改善前「いえ、私は顧客層を絞って商品をアピールしていくべきだと思っています」
改善後「確かにそうだと思います。ですが、基本路線として一定の層をまずはじめにターゲットとして据えたほうが初期段階としては集客効果が望めると思います」
改善した「Yes, but」の場合では文章自体が大きく変わっているのが分かると思います。
先程述べたように、「Yes, but」をつけただけでは相手に「あ、ただ否定しようとしてきているな」と取られてしまいます。
とにかく相手の言っていることを理解しようとする姿勢で生きること、その生き方が相手に鏡のように伝わり、自分の意見を理解してもらいやすくなります。
また、同時にとりあえず「Yes, but」とつけ、その後、違和感のない言葉をつなげることで、相手のことを固定する「生き方」ができるようになります。
最後に以下の言葉をのせて終わりにします。
“思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。(マザー・テレサ)“
今回は以上です。ノリハラでした。
・参考本
Win-winの人間関係について学びたいなら
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