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Blue Yonder CEO Duncan Angoveのサプライチェーンマネジメントに関する対談解説

Blue Yonderの概要と名前の由来

Blue Yonderは、サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア業界のリーダーであり、世界の主要な小売業、製造業、物流企業など3,000社以上が利用しています。Blue YonderのCEOであるDuncan Angove氏によると、同社の製品はサプライチェーンのあらゆる場面で利用され、消費者が製品を目にするその背後にBlue Yonderのソフトウェアが関わっていると言います。

もともとBlue Yonderは「JDA」という名称でしたが、ドイツのクラウドネイティブAI企業「Blue Yonder」を買収した際に社名変更が行われました。名前のインスピレーションは、広がる青い空や遠くの地平線を見渡すイメージに基づいており、AIを駆使して先を見通し、将来の需給変動や市場変化を予測するという同社の目標を象徴しています。

AIを基盤とするBlue Yonderの技術戦略

Blue Yonderは、デジタルトランスフォーメーションにAIを活用し、サプライチェーン全体の予測精度や迅速な意思決定を向上させることに取り組んでいます。Duncan氏は、AIによるサプライチェーンの自動化と最適化により、企業がより利益を上げ、顧客満足度の向上を図り、環境に配慮したサプライチェーンの実現を支援しています。特に、各企業が抱える業務や生産効率の課題を解決するため、今後3年間で10億ドルを研究開発(R&D)に投資する予定です。

Blue Yonderの技術の根幹には、SnowflakeのAIデータクラウドを利用したアーキテクチャがあり、従来の分散したデータサイロを解消して企業全体でデータを統合することで、情報の可視化と意思決定の迅速化を図っています。これにより、従来のようにデータを個別に処理する必要がなくなり、リアルタイムでのデータ連携が可能となりました。さらにBlue Yonderは、AIによる10億回を超える日次予測をSnowflake上で行い、効率的な意思決定を支援しています。

消費者行動の変化とサプライチェーンの課題

COVID-19パンデミック以降、消費者のニーズが多様化し、個別カスタマイズやオンデマンドサービスへの期待が高まる中で、サプライチェーンもより複雑な対応を求められています。たとえば、消費者が自動車のオプションを選択する自由度が増したことで、製造ライン上での工具の切り替えや部品供給の調整が必要となっています。Blue Yonderはこうした複雑さに対応するため、生産ラインの効率化やタイミング調整を支援するソリューションを提供しています。具体的には、ツールの切り替えを最小限にし、部品の供給タイミングを最適化することで、消費者の多様なニーズに応えつつ、製造効率も向上させています。

持続可能な豊かさへの取り組み:「Sustainable Abundance」

Duncan氏は、Blue Yonderのビジョンとして「持続可能な豊かさ(Sustainable Abundance)」を掲げています。これは、AIとデジタル技術を用いてサプライチェーンを効率化し、より多くの人々に持続可能な方法で豊かさを届けることを意味します。サプライチェーンは世界の経済活動を支える基盤であり、歴史的にもシルクロードのような貿易の道が人々の生活向上に寄与してきました。しかし、サプライチェーンの発展には負の側面も存在し、食品の廃棄や過剰生産が環境への負荷となっています。たとえば、世界では毎日10億食が廃棄されている一方で、約8億人が飢餓に苦しんでいるといわれています。Blue Yonderは、こうした問題を解決しながら持続可能な豊かさを提供することを目指し、サプライチェーンの効率化と環境負荷の削減を同時に進めています。

ジェネレーティブAIと技術の未来展望

Blue Yonderは、ジェネレーティブAIとSnowflakeデータクラウド、リレーショナルAI、ラージランゲージモデル(LLMs)など、さまざまな最新技術を活用して、リアルタイムかつ統合されたデータによる意思決定支援を行っています。Duncan氏によると、ジェネレーティブAIの登場により、従来のユーザーインターフェース(UI)から進化し、ユーザーそのものがAIによって強化される「認知的アップグレード」が進んでいると言います。たとえば、従来は在庫や需要の管理を手動で行っていた業務担当者が、今後はデジタルエージェントを管理する立場にシフトすることで、生産性が向上し、より戦略的な判断が可能となります。

また、AIの普及に伴い、エネルギー消費の増加が課題とされています。米国ではAIによるエネルギー消費が4.4%を占めており、今年末には10%を超えると予測されるため、Blue Yonderでは効率的なアルゴリズムやエネルギー消費の最適化にも取り組んでいます。Duncan氏は、AIの活用が企業や社会全体に与える影響は計り知れないとし、今後もAIを駆使してより持続可能な未来を創り出すことが重要であると述べています。

将来への展望とBlue Yonderの使命

Duncan氏は最後に、Blue Yonderの目指す方向性として、持続可能で効率的なサプライチェーンの実現が人類全体にとっての利益になると語りました。サプライチェーンの変革は、単に物流や製造の効率化だけでなく、社会全体の豊かさと持続可能性を追求するものです。Blue YonderはPanasonicの一部門として、今後もサプライチェーンの革新をリードし、エネルギー効率や環境負荷の低減に貢献することで、次世代のサプライチェーンを構築していく考えです。

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