見出し画像

みんなが知らないスマートコンテナの世界 #IoT #コンテナ

現代の物流業界は、グローバル化や消費者ニーズの多様化により、より効率的かつ高度な輸送技術が求められています。その中で、輸送中の貨物の状況をリアルタイムで把握できる「スマートコンテナ」は、ますます注目を集めています。スマートコンテナは、温度、湿度、衝撃、振動、位置情報などのデータを収集し、輸送の効率化と貨物の品質管理を実現するための最先端技術です。今回は、スマートコンテナを提供する企業や、実際に導入している企業の事例について、詳しく紹介します。


スマートコンテナとは?

スマートコンテナとは、IoT技術を活用し、輸送中の貨物の状態をリアルタイムで監視できる機能を持ったコンテナのことです。これにはGPSを利用した位置追跡、温度や湿度のセンサー、衝撃検知機能などが含まれます。これにより、物流業者や荷主が輸送中の貨物の状態を遠隔でモニタリングし、異常が発生した場合には迅速に対応できるようになっています。


スマートコンテナを提供する企業と製品

1. Maersk - Remote Container Management (RCM)

  • 製品概要: MaerskのRemote Container Management (RCM)は、冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)向けに設計されたスマートコンテナシステムです。冷蔵食品や医薬品など、温度管理が必要な貨物の輸送に特化しています。

  • 主な機能:

    • 温度・湿度管理: コンテナ内の温度や湿度をリアルタイムで監視し、設定した範囲外になった際には通知が送られます。

    • 位置追跡: GPSを使用し、コンテナの位置をリアルタイムで追跡できます。これにより、輸送中の貨物がどの港にいるのか、陸上輸送に切り替わったのかなどを正確に把握できます。

  • 導入事例: MaerskのRCMシステムは、世界中の食品メーカーや医薬品企業に導入されています。例えば、ワクチン輸送など、温度管理が重要な医薬品を取り扱う企業は、このシステムを使って輸送中の品質を保つことができます。

2. Traxens - Traxens Box

  • 製品概要: Traxensはフランスのスタートアップで、スマートコンテナ向けの「Traxens Box」を提供しています。このデバイスを既存の標準コンテナに取り付けることで、コンテナをスマート化できます。

  • 主な機能:

    • 多機能センサー: 温度、湿度、衝撃、振動、コンテナのドア開閉状態などを監視し、データをクラウドに送信します。

    • 長期間バッテリー駆動: バッテリーで長期間稼働し、長距離の海上輸送にも対応します。

  • 導入事例: Traxensのソリューションは、世界的な海運会社であるCMA CGMやMSC(Mediterranean Shipping Company)に採用されており、これらの企業はTraxens Boxを使ってコンテナ輸送の効率化とトレーサビリティの向上を図っています。

3. ORBCOMM - CT 3000/3100 Series

  • 製品概要: ORBCOMMはアメリカの通信会社で、冷凍コンテナやドライコンテナ向けの通信デバイスを提供しています。CT 3000シリーズは、特に冷凍食品や医薬品の輸送に適しています。

  • 主な機能:

    • リアルタイムデータ送信: 温度、位置、ドアの開閉状況をリアルタイムで監視し、データをクラウドに送信します。

    • 地上・衛星通信対応: 地上だけでなく衛星通信にも対応しており、海上や遠隔地でも安定したデータ通信を提供します。

  • 導入事例: ORBCOMMの製品は、アメリカの大手物流会社や食品メーカーに導入されており、特に冷凍チェーンの管理に利用されています。例えば、乳製品メーカーや冷凍食品の輸送業者が、温度異常の早期発見に活用しています。

4. Sensitech - TempTale GEO

  • 製品概要: Sensitechは、温度管理が厳しい医薬品や食品輸送の分野で広く知られている企業です。TempTale GEOは、温度と位置情報をリアルタイムで監視するデバイスです。

  • 主な機能:

    • 温度異常アラート: 輸送中に温度が設定範囲を外れた場合、即座にアラートを発信して、担当者に通知します。

    • リアルタイム位置情報: GPSによる位置追跡機能を備えており、貨物がどこにいるかを常に把握できます。

  • 導入事例: Sensitechの製品は、世界的な医薬品メーカーや冷凍食品メーカーに導入されており、特にワクチン輸送や精密な温度管理が求められる製品の輸送で活用されています。例えば、COVID-19のワクチン輸送時には、温度を一定に保つためにこのシステムが活用されました。

5. Globe Tracker - Smart Container Solution

  • 製品概要: Globe Trackerは、コンテナのトラッキングと監視ソリューションを提供する企業で、特に長距離の海上輸送に適した製品を提供しています。

  • 主な機能:

    • 衝撃・傾きセンサー: コンテナが輸送中に受ける衝撃や傾きなどを検知し、貨物の損傷リスクを把握できます。

    • クラウドベースのデータ管理: データはクラウドに保存され、スマートフォンやPCから簡単にアクセスして確認することができます。

  • 導入事例: Globe Trackerの製品は、北米やヨーロッパの大手物流企業や輸送業者に採用されています。特に、輸送中に壊れやすい電子機器や精密機器を扱う企業がこのシステムを利用して、貨物の損傷リスクを軽減しています。


スマートコンテナの実際の導入事例

スマートコンテナは、さまざまな業界で活用されており、以下のような企業が積極的に導入しています。

1. 医薬品メーカー

  • 導入の背景: 医薬品の輸送では、温度管理が非常に重要です。特にワクチンや血液製剤などの輸送では、輸送中に温度が一定に保たれていることが求められます。

  • 導入の効果: SensitechやMaerskのRCMなどのスマートコンテナを使うことで、温度管理を徹底し、輸送中に品質を保つことができるようになりました。これにより、輸送中の温度異常による商品の廃棄リスクが大幅に減少しています。

2. 食品メーカー

  • 導入の背景: 生鮮食品や冷凍食品の輸送では、輸送中の温度変動が品質に大きな影響を与えるため、リアルタイムでの温度監視が求められます。

  • 導入の効果: ORBCOMMやTraxensのデバイスを使うことで、温度管理と位置情報の追跡を行い、食品の品質を維持したまま市場に届けることが可能になりました。例えば、乳製品や冷凍食品を扱う企業では、温度の異常を検知して、輸送ルートの調整を即座に行うことで食品ロスを削減しています。

3. 精密機器メーカー

  • 導入の背景: 精密機器や電子機器の輸送では、振動や衝撃が故障の原因になるため、輸送中の状況を監視することが重要です。

  • 導入の効果: Globe TrackerやTraxens Boxを利用して、輸送中の振動や衝撃を監視し、適切な輸送条件を保つことで、故障リスクを低減しています。また、顧客からのクレーム対応にも役立っています。


まとめ

スマートコンテナは、物流の透明性と効率性を大幅に向上させる画期的な技術です。医薬品、食品、精密機器など、温度や品質管理が求められる業界で特に導入が進んでおり、リアルタイムでのデータ収集と監視により、トラブル発生時の迅速な対応が可能になっています。これにより、物流業界全体の信頼性とコスト削減が実現されています。

スマートコンテナの世界は、まだまだ発展途上ですが、今後ますます多くの業界でその利便性が認識され、広く活用されることでしょう。物流の裏側に隠されたテクノロジーを知ることで、私たちの生活にどのような変化がもたらされているのかを、改めて考えるきっかけになるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?