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動画解説:Palantirのデータマイニング帝国が引き起こす物議とその背景



1. Palantirの設立背景とミッション

Palantirは、2003年にピーター・ティール氏、アレックス・カープ氏、ジョー・ロンズデール氏、スティーブン・コーエン氏、ネイサン・ゲティングス氏によって設立されました。設立当初からのミッションは、膨大なデータを統合し、セキュアな環境で解析・解釈するためのソフトウェアを提供することでした。特に、9/11のテロ攻撃を受け、アメリカの安全保障を強化するためのデータ分析ツールを提供することが目的とされました。

2. Palantirの初期の成長と主要な顧客

Palantirは設立当初から、CIA(中央情報局)が主要な顧客として名を連ねました。CIAは、会社の初期投資家の一つでもあり、Palantirの技術を利用して、テロリストの追跡や麻薬密売組織の摘発に貢献しました。FBI(連邦捜査局)やNSA(国家安全保障局)といった他のインテリジェンス機関もPalantirの技術を採用し、その能力を活用して、アフガニスタンやイラクでの軍事作戦を支援しました。

技術の具体的な応用例

Palantirの技術は、手作業で行われていた危険な現地でのインテリジェンス活動を、テクノロジーによって効率化することを目指しました。特に、兵士たちが手作業で爆弾製作者のネットワークを地図化していた状況を改善するために、この技術が導入されました。これにより、Osama bin Ladenの追跡と殺害に貢献したとされており、この点に関してはPalantir自身も否定していません。また、Bernie Madoffのポンジ・スキーム(詐欺的投資スキーム)の発見や、ダライ・ラマのコンピューターにインストールされた中国のスパイウェアの除去にも貢献しました。

3. 商業部門への進出と拡大

Palantirは、政府機関向けのサービスを基盤として成長してきましたが、2010年代からは商業部門への進出を強化しました。最初の商業顧客はJPMorgan Chaseで、2009年に従業員の不正行為を監視するためにPalantirのソフトウェアを採用しました。しかし、このパートナーシップは、JPMorganの特別作戦部門が同社の幹部をスパイするために技術を悪用したというスキャンダルによって終了しました。

その他の商業顧客とその活用例

商業顧客の中には、Fiat ChryslerやAirbus、BPといった大手企業が含まれます。Fiat Chryslerは部品の故障の兆候を検出するために、Airbusは製造プロセスの問題に迅速に対応するために、そしてBPは掘削データを分析し、北海での石油生産を10%増加させるためにPalantirの技術を活用しています

4. 政府との密接な関係とその物議

Palantirの技術は、多くの政府機関によって重要視されてきましたが、その中でも特に物議を醸しているのが、ICE(移民・税関執行局)との契約です。Palantirは、ICEと約9200万ドルの契約を結び、同局が不法移民の取り締まりや家族の分離政策を実行するために技術を提供しています。この契約に対する抗議は、2018年に始まり、シリコンバレー内外で激化しました。

内部と外部からの反発

Palantirの従業員の中にも、この契約に反発する者が現れ、内部で抗議活動が行われました。これにより、一部の従業員は会社を退職する事態となりました。共同創設者のピーター・ティール氏は、ドナルド・トランプ大統領の有名な支持者であり、2016年の大統領選挙に125万ドルを寄付しました。一方、CEOのアレックス・カープ氏は、トランプ政権に批判的な立場をとっており、それでもPalantirは米国政府を支援し続けることにコミットしていると述べています。

5. シリコンバレーとの文化的対立と本社移転

Palantirはシリコンバレーで設立されましたが、その文化や価値観と徐々に疎遠になってきたとカープ氏は感じています。特に、シリコンバレーが広告モデルに依存し、ユーザーデータの収集と収益化を行う企業が多い中で、Palantirは政府との協力に重きを置いています。このため、同社は最近、拠点をパロアルトからデンバーへ移転することを発表しました。この移転は、シリコンバレーのビジネスモデルに対する批判的な姿勢を示すものであり、また、税制や生活コストの観点からも、デンバーがより適切な場所であると判断されたと考えられます。

6. IPOと投資家への影響

Palantirはこれまで利益を出していないにもかかわらず、同社の成長に期待する投資家は多く存在します。同社は2020年9月に株式市場への直接上場を果たす予定で、この上場は伝統的なIPOとは異なり、新しい株式を発行せず、既存の株主が保有する株式を市場に出す形で行われます。このため、株式の価格は市場の需要に基づいて決定され、新しい株主にとっては割安で購入する機会はほとんどありません。

投資家の関心と懸念

投資家にとっての最大の関心事は、Palantirが高成長のテクノロジー企業として評価されるのか、それとも利益率の低いコンサルティング企業として見られるのかという点です。Palantirは、政府機関や大企業向けにソフトウェアのカスタマイズサービスを提供しており、これには多大なコストがかかるため、利益率が低くなる傾向があります。しかし、最近では自社のプロセスを自動化し、より効率的な販売プロセスを確立することで、収益性の向上を目指しています

7. 将来の展望と課題

Palantirは、政府機関向けの「Gotham」と民間企業向けの「Foundry」という二つの固定料金プラットフォームを提供しており、これらを通じて効率的な運営を目指しています。現在、同社のターゲット市場は年間売上高が5億ドル以上の6000社とされており、1社あたりの平均年間契約額は500万ドルを超えています。トップ20の顧客が全体の約3分の2の収益を占めており、全体の顧客数は約125社と、他のソフトウェア企業とは異なるビジネスモデルを展開しています。

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