事業の「あるべき姿」を描く


3年~5年での中期経営計画を立てる際に、まず10年先の「あるべき姿」を大胆に描いて、そこから逆算して計画やアクションを立てる、いわゆる「バックキャスティング」という手法を使う企業が増えています。バックキャスティングによって中期経営計画を描く場合、下記のような3ステップで進めるケースが多いです。

①:全社のあるべき姿を、まず大胆に定性的に描く
②:①を踏まえ、各事業ごとの「あるべき姿」を具体的に描く
③:事業別10年成長戦略を描く(あるべき姿を定量目標に落とす)
④:成長戦略から逆算して、今後3~5年の事業計画を具体化する

当然、①~④が明確に接続していないと、①や②を大胆に描く意味がなくなるので、互いに接続性をもたせることを意識しながら、①→②→③→④と具体化することが大切になります。よく陥りがちなケースとしては、①、②をいったんパワーをかけて策定したものの、いざそれを③に落とし込もうとすると「どうやって目標設定に落とし込むか・・・」と迷ってしまうことがあるようです。そういったことを回避するためには、②を規定する際に、③の定量目標設定を意識した切り口で考えるということがポイントになります。

今回の記事では、「業績目標に落とし込める」ような「事業のあるべき姿」を描くために、下記4つの視点をご紹介します。

パターン①:「事業モデル」の視点
◆考えること:将来の事業のモデルはどうあるべきだろうか?
◆テーマ設定の例:ビジネスモデルを大きく転換する
研修を標準化・パッケージ化し、営業パーソンの力で市場拡販していくモデルから、定額課金で定点サービスを提供するSaaSモデルへ転換する。
◆目標設定の方針:対象市場の売上シェアをフェルミ推定などで概算して設定する

パターン②:「事業の対象顧客」の視点
◆考えること:将来の事業のモデルはどうあるべきだろうか?
◆テーマ設定の例:商品・サービスを提供する顧客の幅を拡張する
これまで特化していた〇〇サービスの幅を広げ、その後までカバーする▽▽サービスまで事業を大きく拡張する。
◆目標設定の方針:拡張後の対象市場の獲得顧客シェアをフェルミ推定などで概算して設定する

パターン③:「事業規模」の視点
◆考えること:10年でどの程度の成長がそもそも可能なのか?
◆テーマ設定の例:非連続的な成長を成し遂げる
これまでの業界の慣習に問わられず、とにかく規模拡大を志向し、10年で3倍成長など前例のない非連続的な成長を遂げることを目指す。
◆目標設定の方針:「規模」「業種」の観点から、比較すべき企業(事業)を決めたのち、情報収集して設定

パターン④:「市場ポジション」の視点
◆考えること:市場の競合に対して、どのようなポジションを目指すか?
◆テーマ設定の例:市場でのポジション・イメージを転換する
これまでの「〇〇メーカーとしてのイメージ」から脱却し、「◆◆分野を中心とした〇〇ブランド」として、市場での存在感を高める
◆目標設定の方針:例えば上記の〇〇のイメージがチャネルに起因する場合は、チャネル別売上構成比の変化(特に新しいチャネルの成長)から逆算して事業目標を設定する、など

上記以外にも、例えば新規事業であれば「〇〇億円以上の事業に育てる」などのテーマ設定もあり得るかと思いますが、バックキャスティングで難しいのは「では、何億円に目標を設定するのか?」を決めることかと思います。ですので、上記の4種類、もしくはその組み合わせで、納得できるテーマを設定するのが良いと思っています。テーマと業績目標の接続が大切であると冒頭で述べましたが、それらを完ぺきな整合性をもってを規定できることは実はかなり難しいため、むしろ「業績目標とテーマに明らかな不整合がないか」をクリアできていれば良いと割り切り、ある程度の粒度でも方向性を決めていくことが大切かと思います。また、テーマが決まったらからといって一直線に業績目標が決まるわけではなく、複数の業績目標オプションを洗い出しながら、議論を重ねて決定していくというのが現実かと思います。

今回は以上となります。


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