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美しいデニムの理由






溜め息が出た。


おそらく、このジャンルでこんな気持ちになるのは初めてかもしれない。


どこから見ても美しいし、そして履き心地も担保されていた。

ここまで惚れ惚れする美しさのデニムは見たことがないかもしれない。






はじめに言っておくが、デニムというジャンルに一番なんて無い。


『どれが優れているか?』で見ていくジャンルではなく
多数ある中で『どれが自分に合うか』を見ていくジャンルだと思っている。


これさえあれば、これだけ持ってれば、これでこのジャンルはアガリ
みたいに言うけど、割と幻想だと思っている。

むしろ、それは次なる『面白さ』に出会う機会を
完全にゼロにしかねない危険な行為。

『少しの違い』を無いものにして、全て同じと言ってしまうことの
つまらなさは自身が大好きで熱中しているものに置き換えてみれば
容易にわかることだと思う。


洋服、もっと言えば男性衣服のジャンルにおいてのデニムというのは
ある意味でサンクチュアリ的であり妙な敷居の高さがあることに気がついていく。


それはそれで楽しい世界なのだけど、窮屈でもある。



ただそこには確かな歴史もあるし、変えてはいけないようなものも存在している気がする。

それらに敬意を表しながらも、どうやって違いを見せていくのか
それが『面白さ』なんだと最近は強く感じています。


その上で、今回ご案内するデニムの凄さ。

そして、世の中にあるデニムとは違う角度での『非常にらしい』審美眼

幾千もある針山の中から、狙った一本の針穴に糸を見事に通すような
そんな、どえらいものを見せられたように感じている。


これは是非、デニムが好きと言う方。

いや、『美しいデニム』が欲しかったと言う方は
絶対に買うべき一本なので全力でご案内させて頂きたい。
















































パッとみたルックスはミニマルなブラックジーンズ。

視覚的な情報量の少なさと言うのはスタイリングにおいての
アドバンテージが非常に高いのはデニムを好きである人であればあるほどに
理解できるかと思います。

よって、この時点で『やばい』となっている人にこそ
刺さる一本です。


とはいえ、流石に何も無いのは良く無いので簡単にご説明を。


素材は近年某L社の古いデニムの高騰が著しく激しくなっている
先染めブラックと言われるものと
同様の染め方を施した岡山生産のデニム生地。


縦糸にブラック、横糸に白を入れた綾織は
洗濯を繰り返すことで縦糸の黒が徐々に褪色。

そうすることで、横糸の白とのコントラストが弱くなっていき
独特なグレーカラーが現れていく。

縦横が黒のスーパーブラックのよさも知りつつも
やはり、この先染めブラックと言われる独特な経年変化の面白さにも
虜になっている方は多いのでは無いだろうか。


私も昔からこのグレーカラーが大好きで
古着で何本か所有している。

スタイリングのしやすさと、少しドレッシーなアイテムと合わせた時に
ちょうどいい距離感が心地よく
よく組み合わせている。


このデニムの良さは、そこだけではない。
最初に見た時の『妙なミニマルさ』に違和感を感じないだろうか。


デニムと言えばアメリカなバランス。
素材的な大味なバランスと工業製品ならではの無機質さのコントラストが
一つの魅力であるのですが、これには無機質さと言うよりも
『静寂さ』と言うような表現が合うように感じる。



その理由は、これ全部まるっと一人の職人の手縫であると言うことが
一つの理由として挙げられる。


『一日に一本』


このデニムに掛かる時間は、本当にそれなんだそうだ。

なんで?と言われたら本当に単純なのだけど
こうしないとできないようなディテールが
静かすぎるくらいに各所にある。

全てを語ったらキリがないので少しだけ案内する。






















まず、これらをみて違和感を感じた方はいらっしゃるだろうか?

もしいらっしゃれば、きっとそれは縫製関係のお仕事をされている方だと思います。
そうなんです、巻き縫いの幅は細いですよね。

通常の量産体制で製作するデニムの場合は専用のミシンが存在し
本当に数ミリ程度なのですが巻き縫い(2本のステッチがある部分)幅が広くなります。

生地をセットし、専用の工業用ミシンを通せば
本来なら一回で縫い終わる箇所なのですが

このデニムはそれをしていない。

なぜなら、その部分が華奢になることで全体感が大味にならず
とてもシンプルになるから。

そんな理由から、とても面倒なのですが、工程を三倍ほど増やして縫い合わせています。

本当に数ミリなのですが、明らかに締まった印象になる。

シャツで言えば運針の細かさなどを見ていくと
シャツの方向性がわかるように、これを見るとこのデニムが
どういった立ち位置にあるのかが段々理解できてくるかと思います。










当然ながら裏側もシングルニードルになり、本当に些細ではありますが
ここに狂気が宿ります。










写真では伝わりにくいかもしれませんが
特に股下の縫製が交差する部分なんかは、それをするには至難の技とされており
本当に目を凝らしてみれば
とんでも技術が随所に感じることができます。














さらに、内臓部でのこだわりはパターンにも及んでおり
これは文章では伝わり辛いので、
できることならば店頭でご案内したいのですが、少し書いておきます。


デニムは工業製品と言う背景もあり
作業効率を上げる意味でも、様々な工夫を施し
作業の簡素化を図っています。

それらを否定するつもりはなく、そういった意図せぬ歪みが
名作と言われるようなデニムを生み出したと言う事は
揺るがぬ事実です。

ただ、それは万人にとってそうではなく
『好きが故に気になる』と言うポイントが募っていく事が多々あります。


今回のデニムのデザイナーであるHEUGNの小山さんは
製品としてのデニムを作ってきたわけではなく
あくまでも自信が培ってきたドレスのアイテムに
カウンター的にあるデニムをミックスさせながら
ユーザー目線で楽しんできたんだそうです。


最低でも週3日は着用する古い501や様々なデニムを履くことで
好きなんだけど、もう少しこうならと言うポイントが蓄積していき
結果として作ることに至ったんだとお話されていました。



そこで特に配慮したのが、股下の空間作り。

厳密に言えば『尻ぐり』と言われる箇所になるのかと思います。

良いパンツ、特にスラックスというのは股下に空間が違和感なくできるのだそう。
専門的な部分もあるのでかなり割愛させて頂くが
お尻から股下までがストレートではなく
緩やかに弧を描くことが大切なんだそうです。


ただ、デニムにはそれがなく
工業製品的であるが故に
その部分が非常に直線的に仕上げられているんだそうです。


そうすることで股下の空間がなくなり、つっぱり
何故か、履いていると後ろだけ下がって
常に後ろをグッと上げるような動作が生まれる。

ただスラックスにはそれがない。


完全なるドレス畑の人だからこその『気づき』なのですが
ただそこには大問題がある。

そう、先ほど申し上げた『巻き縫い』だ。

専門性の高いミシンでは弧を描きながら縫うのは至難の技。

ただ、今回のデニムのようにまるっとミシンで縫い上げるのであれば可能。
(だためちゃくちゃ技術がいる)

それらをクリアするために、世界的にもデニムの縫製にたけたOZONOに製作
を依頼。


そうすることで、小山さんが理想とするものを
具現化するに至ったんだそうです。

















デニムの当たり前を、しっかりと理解しつつ

そこに愛情を感じさせながらも
自分の中での当たり前にはめ込んでいくようなプロセス。

そして、それらを可能にさせる職人の技術力。

そうやって生まれた「おかしな普通のブラックデニム」


久しぶりに履きこみたくなる一本です。




















































シルエットはご覧の通りの美しさ。

極端なテーパードラインではない、ストレート寄りのバランス。
スリムなバランスに見えながらも履いてみるとご理解いただけますが
適度なゆとりがあり、窮屈さを感じることは無い。

そして、すでに製品に仕上げた後に洗いがかかっているので
ここから極端な縮みが出にくいのも嬉しいポイント。

どことなく90sな匂いを感じさせながらもお尻のポケットのディテールや
離れ方など古いデニムのような凛としたディテールも見える。

そして個人的には前にポケットの深さのバランスが本当に良い。


通常の5PKの場合はややポケット開口部の開きが下にくるのですが
少しフラット気味に浅い。


これによりインした時の雰囲気が締まる。
そして股上も寸法上少しあるのもあるが、視覚的にも股上が
上気味に見える面構えになり、なんとも品がある。


ちなみに使用している縫製の糸はコアヤーンという
ポリエステルフィラメントの芯にスーピマ綿を巻きつけた糸を使用しています。
そうすることで強度的な部分と古いデニムなどにあるデニムと糸が等しく褪色していき
色合いがとろけ合うような、あのバランスになっていくのだそう。

単なる綿糸ではなく、そこに現代的なエッセンスも入れ込んでいる
そんな部分も素敵です。


ちなみに私でウエスト2を履いています。
流石に既製服ではあるので、全てがドンズバでハマるわけではないが
ここは好みな気がします。

選び方的には私なら2か3です。

ウエストに関してはどちらも許容範囲。

レングス的な問題でしょう、個人的にはこれくらいの短さも
久しぶりにいいなとも思いますが
好みでお選びください。



ハマる靴に関してはやはり革靴でしょう。

写真ではスーパースターをギュンギュンに絞って履いていますが
そんなスタイルもいいかと思います。

もちろんオールスターやオーセンティックなども良いですね。

ベタなところではローファー。

あまり高さのない履きものとの相性はやはり良いです。

そこら辺はHEUGNのパンツを愛用する人なんかは
特に取り入れやすいのでは無いかと思います。





















HEUGN

hand craft black denim
made by OZONO

size 1.2.3

price ¥79860-(in tax)











さて、なんだかんだでものすごく語ってしまいましたが
こんな文章なんかよりも現物の素晴らしさが圧倒的に上まっています。


様々なデニムがあるので、迷ってしまいますが
個人的には以前ご案内したスウィングトップなどとの合わせや
これから着たくなるようなシャツ類なんかとの合わせを楽しむためにも
強くお勧めしたい一本です。


気になる方は是非ともtatazumaiizumaiの店頭にてお試しください。


オンラインストアに関しましては、3月2日16:00頃に掲載予定ですので
何かご質問などございましたらお気軽に私までご連絡くださいね。



それでは!






nariwai / tatazumaiizumai
director & buyer


山下 拓郎



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