閑話休題 国の機関における審査請求について その2(審査請求について学んだこと)
国の機関の場合の行政不服審査法に基づく手続(情報公開関係)について
前回の記事で、審査請求書の記載内容と期間制限などの形式的なチェックについてご説明したので、その続きになります。
審査請求書の補正などが終わると、請求書を受け付けた審査庁は、不適法却下の場合及び審査請求を全部認容して当該審査請求に係る行政文書の全部を開示する場合以外、つまり、審査請求の審理を行った上で請求の全部又は一部を棄却すべきと判断した場合は、必要書類を準備して、総務省に設置されている情報公開・個人情報保護審査会(以下「審査会」といいます。)に諮問することになります(行政機関情報公開法19条1項)。
少しわかりにくいので噛み砕いて説明しますと、審査庁は審査請求が不適法却下でない場合には、審査庁として審査請求に対する判断の方向性を検討し、その結果として、全部認容とならないとの結論に至った場合には、その結論と結論に至った理由を、審査請求書と共に審査会に渡して、その考え方で良いかを検討してもらうわけです。
審査庁が諮問する場合には、情報公開・個人情報保護審査会運営規則(リンク先は、開示請求等が令和4年4月1日以降にされた場合に適用されるもの。それ以前の場合については、こちらのページの関連法令等のところの運営規則を参照。)に従って、諮問書に開示請求書の写し、当該請求に対する決定書の写し、審査請求書の写し、諮問庁(大体の場合は審査庁です。)の考え方及びその理由を記載した理由説明書(その裏付け資料を含む)や対象文書の写しなどを添付して、審査会に検討してもらいます。
審査請求人は、審査会に対して、審査会の定める期間内に意見書や資料を提出して、審査請求には理由があるということを審査会に説明することができます(情報公開・個人情報保護審査会設置法11条)。口頭で意見を述べる機会を求めることもできますが、審査会が必要性なしと判断した場合には、その機会は与えられません(同法10条1項)。
審査請求人から意見書等が出ると、審査会は、諮問庁に写しを送付し(同法13条1項)、意見書等に諮問書添付の理由説明書で触れられていない部分があったり、審査会としてさらに説明を求めたい部分があったりすると、一定の期間(要するに提出期限です。)を定めて、諮問庁(審査庁)に説明の補足を求めてきます。
これらの手続で、審査会として判断に必要な材料がそろったということになれば、審査会は検討結果を答申という形でとりまとめ、これを諮問庁と審査請求人に送付します。答申の内容は、匿名化などを行って、答申状況と題するウェブサイトで公開されています。これらは情報公開・個人情報保護審査会設置法16条に基づくものです。
ちょっと横に逸れつつ、正直な感想を申し上げると、対象となっている行政文書そのものを見ないと答申の言っていることがつかみにくいという場合もありますし、不開示とすることが妥当という場合には、その部分の情報を抽象化しつつその情報が不開示情報にあたるとの説明をしていますので、ほかの行政文書に当てはまるのかについてはかなり検討を要しますから、答申(裁判例でも同じですが)の抽象的な文言をそのまま素直に別の文書に当てはめてはいけないと思います。
答申が届くと、諮問庁(上で書いたように大体は審査庁です。)は、答申を尊重した内容で裁決を行います。法文上、答申に従う義務が定められているわけではありませんが、情報公開・個人情報保護審査会が設置された趣旨や目的に照らして、答申を尊重した裁決を行うのです。
裁決は審査請求人に送達されることによって効力を生じます(行政不服審査法51条1項)。送達する場合には、裁決書の謄本をもって行う(同条2項)ので、審査庁は裁決書を作成し(同法50条1項)、その謄本を作成して送付する、という手続を執ることになります。令和になってから、押印廃止が進んでいるところですが、裁決書の作成にあたっては条文上審査庁の記名押印が必要とされています。
裁決書は関係行政庁を拘束する(同法52条1項)ので、裁決によって一部不開示処分が取り消されたならば、処分庁は取り消された部分について改めて開示決定をしなければなりません。裁決では、審査請求の対象となった開示・不開示の処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更することができるのですが、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には当該処分を変更することはできないので、「〇年〇月〇日付け(記号)による処分については、これを以下のとおり変更する」との裁決は、審査庁が処分庁の上級行政庁であるか処分庁である場合に可能、ということになります。
情報公開請求に対する開示・不開示の決定についての行政不服審査法に基づく審査請求の手続の流れをご説明しました。