5/26日
ふとした瞬間に目が覚めた。
寒い。
羽毛布団にくるまっていても寒いと感じるこの気温、いったい何度なんだ。
壁にかけられた温度計を見ると、0度の線を優に下回っている。
その気温なんと−15度。
−15度といったら冬の旭川に匹敵するほどの気温だ。
それがここ九州で観測されるなんて、どういうことだ
しかも、今日は5/26日のはずだ。
5月でこんな気温あり得るわけがない。
昨日は酒を飲みすぎてしまったようだ。
友人が訪ねてきたから、もらったちょっといいワインなんてあけちゃうから
こういうアホな夢をみるんだ。
いい加減、タクシーの助手席に乗ると必ずある言葉「酒は飲んでも飲まれるな」
この言葉を理解する必要がある。
俺も今年で26歳。いい加減、少しは大人にならなければ。
反省と償いをして寝ようとしたとき、なにか巨大な物体が目に入ってきた。
外をみると、物干し竿に10年ものの自然薯を彷彿させるほど大きくなった氷柱が5本できていた。
しかも、どの氷柱をみても、中に空気が入っていない。
中に空気が入っている氷は、時間をかけて作らた氷である。
一方中に空気が入っていない氷というと
ほぼほぼ瞬間冷凍に近い形で凍結させられた氷である。
つまりなにを言いたいかといえば、今見てる氷柱は後者の瞬間冷凍により作られた氷柱であるということであり、
外は中よりも更に寒いということだ。
考えるだけで頭がおかしくなっちまう。
こんな悪夢から早く解き放たれたいと思い、寝ようとする
しかし、寒くて眠れない。
それならばと、メルカリでいっちょまえに購入した、小学校に置かれるサイズほどの灯油ストーブを出し、ガンガンに火を炊く。
しかし、温度計の血色の水銀は一向に上昇しない。
むしろ赤く燃え盛っている火と共に、あれよあれよと血色の水銀は下降していく。
不思議と下降すればするほど、健康的で鮮明な血の色をしていた水銀は、
高血糖の人によく見られるような、ボルドー色の水銀へと変わっていった。
それはまるで、全てが悪い方向へと進んでいるようなことを示唆しているように感じた。
一体全体どうなっちまったんだ。
世界は再び氷河期に突入したとでもいうのか。
昨日まで読み漁っていた羊をめぐる冒険が無造作に置かれ
ゴミ箱からすらも見放された、固く丸まったティッシュが散らばっている
俺が今日いる世界は5/26日ではないのか。
そもそも、世界に5/26日なんてもともと存在したのだろうか。
人間が勝手作った日であり、今まで俺が過ごしてきた日は
もともと架空の日常だったのではないだろうか。
居ても立っても居られなくなった俺は、体中の臓器が口から全て出るほどの雄叫びを上げた。
そしてガチガチに凍った部屋の襖を、寒さで内出血し、コッペパンのように膨れ上がった手を使い
全力でこじ開けた。
するとそこには、コーヒー農家が広がっていた。
そしてなぜか知らないが、コーヒーの実を収穫し終えた同居人Dが、半袖短パン姿でコーヒーを入れていた。そして
「アメリカンかブラック、どっちがいい?」
この一言で目が覚めた。
完
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