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3. 約束

キリマンジャロに登ったという話を聞いてから、早2年が経過した。この2年の間、僕と相棒大橋は常にいつキリマンジャロに登るか?この話を酒の肴にしては語り合っては結局お金がないからという理由で水に流すというような、お金も時間のどちらも無駄にするという全く尊敬されない二刀流生活を送っていた。

しかし、ただダラダラと過ごしていたわけではない。この期間中、僕は語学留学兼インターンシップ活動を行いにメキシコへ。相棒の大橋はポルトガルへと行きワインの勉強と、お互い別々の道を歩み何かを模索していた。そんな中でも連絡をたまには取り合っていて、大橋の仕事が長期休みのシーズンに入った際はメキシコに来てくれ、メキシコ最高峰の山である「Pico de Orizaba」に登頂したのはいい思い出である。ちなみにだが、Pico de Orizabaの標高は5636mと、キリマンジャロよりもわずかに低い。

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そんな僕らも時が経ち、帰国をすることになった。帰国をすると待ち受けていたのは、「就職活動」という大学生の誰もがビビり散らす華の祭典である。今であったらもう少し幅広く業界をみてればよかったと思うが、当時の僕は業界云々より、とにかく有名大手企業に入社したい。そして特に理由もないがみんなを納得させたい。そんな思いで就職活動に取り組んでいたため、2・3ヶ月も立ってくる頃にはすっかり目的を見失い、俺は何をしているのだろうと自暴自棄になっていた。

そんなときである。休学を2年したため就職活動が僕と被らず、余裕綽々のライフを送っていた相棒大橋から登山にいかないかと連絡が来た。帰国してからほぼほぼ単位取得と就職活動に追われていた僕にとってはいい気分転換になると思ったため、その誘いにのることにした。

登ることにした山は、宮崎と大分の県境にそびえ立つ「大崩山」。高低差が激しいかつ、ハーネス(命綱)がないと登れないような急斜面がたくさんある、中級者以上ではないと登るのにかなり苦労する山である。しかし、苦労した先には素晴らしい絶景が待ち受けており、多くの登山者をこれまで魅了してきた。僕らも勿論の如くその景色に圧倒されたのだが、下山の最中死ぬほど怖い思いをしたため、そんな感動なんてのは一気にすっ飛んでしまった。写真を見ていただければ分かると思うが。

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なんとか無事登頂した後、僕らは麓にある山小屋でバーベキューをしながら酒を酌み交わした。疲れもあったのか、ワインのボトルを一本開けるとすっかり酔っ払ってしまい、僕らは珍しく真剣に今後の進路の話をし始めた。


「TKR、お前就活どうなの?うまくいってんの?」
「うーん。ぼちぼちだな。正直就活するモチベーションがないんだよね。仕事って言われても何するかもよくわかんないし」
「まあ確かにそうだよな。何か目的がなければ、その手段としての会社選びなんてできないしな。まあ普通だろ」
「そうかな?ただなんとなく会社に入るってだけでもいいのかな?」
「俺はいいと思うよ。とりあえず何かしてたら、それが面白くなるってともたくさんあるしな」
「うーんそうか。そうしたら、とりあえずまず就活頑張ってみようかな」
「そうだよ。そんな感じでいいと思うよ。よしそうしたら、就活終わったら何か盛大な事やって祝おうぜ!!」
「お、いい考えだね。だけど、ただ酒のんでパーティーってのも面白くないよな。なんか俺ららしく、こうパーッと祝えるようなビッグな企画したくね?」
「確かに確かに。うーん、なんかいい考えないかな、、、、」

二人で考えること数分。突然僕ら二人はお互いを見合った。そして、まるで神からのお告げがあったのか如く二人揃って、

「おい、キリマンジャロに登ろうぜ!!!!」

そう言うと僕らはすぐさま携帯を取り出し、我らが「キリマンジャロ先輩」に電話をすると、時間を忘れて朝まで話しをするのであった。

次回「キリマンジャロへ行こう」

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