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#1 ケース1

『またこんなところでサボってる...』

同期の彼はバックヤードの隅でスマホをイジイジ。彼のお決まりのおサボりポジションだ。うまく隠れてんなぁと思いながら...彼に声をかける。

ハッとして顔をあげたが、私ということが分かり表情が濁る。

『だって表にいてもお客様は来ませんし、やることはやってるので、文句を言われる筋合いはありません』

めんどくささ全開でそんなことを言う。

なんでも無難にこなし、仕事ができる男感が滲み出る彼は、私と同期にしてはかなり大人びた存在であることは間違いない。

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入社3年目の春。

入社式の「社長からの言葉」と言われる挨拶を退屈させずに話しきれる社長はどれほどいるのだろう。

参加した社員のみんなと社長の話を聞いている時、隣に座っていた店長が発した言葉がきっかけだ。

『おい、あいついねぇじゃん』

『えっ?誰ですか?』

と言って店長の視線の先に目をやるとすぐに分かった。

あいつ…

『探してきましょうか?』

『いや、いいよ。たぶん気付いてるのは俺とお前くらい。あいつの存在感の消し方は評価に値する』

どの評価だよ!って思いながら、褒めてるのか貶してるのかわからない口調で言う。

そう言われて持ち上げた腰を下ろしたが、今ここで立ち上がると私の方が圧倒的に目立つ。

『あいつとお前って同期だよな??仲良いの??』

『いやぁ…同じ店にいるので話しはしますが、連絡先も知りませんよ』

『へ〜。そうなのか。最近の子は名前聞く感じで連絡先の交換が行われると思ってたのに』

いやいや、そんなやついたら怖いわ。
冗談なのか本気なのかわからないことを言う店長は怖いくらい人のことを見透かす。

今思えば、このとき店長はすでに彼の本心を知っていたのかもしれない。

入社式が終わり、懇親会という上層部と新入社員以外には牢獄のような空間に放り込まれ2時間を過ごす。
新入社員と近い3年目までの社員が集められるため私は今年でこの会とはおさらばできる。

行くのが嫌なのを知ってか知らずか、入社式終わりの店長は、今度あいつにうまい飯でも奢ってもらえ。と手を振って帰っていった。

マジでそうしようと懇親会後の二次会は行く?行かない?どこ行く?のグダりきった空気感からサッと身を隠し帰路に着く。


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