#2 ケース2
"人"のなんてのは簡単に信じられない。
でもそれは言い方を変えれば、自分が自分を信じられていないからだと思う。
自分がダメな人間かということを自覚すればするほど、純粋で真っ直ぐな人といるのが辛くなる。
「あの人みたいになれたら…」と思うと辛くなるからすぐ目を逸らす。
俺は立派な人間ではない。
「ホントまじめだよね」
「いい人だよね」
「頭いいよね」
これらのワードは聞き飽きた。
逆になんでこんなことができないんだろうと思うくらいに世間はバカで溢れている。
そんな集団の中で変わらない日々を過ごしている自分もある意味バカなのだろう。
今の会社に入ったのも特にやりたいこともなく、仕事内容、休み、給料などを見て無理せず普通に過ごせるかなってつもりで入社試験を受けた。
試験もなぜか普通に通って、ほかにもなんとなくで受けた会社が2、3社があったけど、内定が出たので全て断った。
みんな10社くらい受けている中で5社未満で内定を受けてそこに行こうとしている俺をまた、「やっぱすごいね」「やれるやつはやれるんだね」など、またそんなことを言われる。
もぉいいよ。
正直、頭は悪い方ではないと思う。
でも「頭がいい」のと「仕事ができる」は訳が違う。
『お前、俺の下にこいよ』
なんて言われたのは1年前に隣の支店の店長に誘われて昼ごはんに行ったときだ。
勝手なイメージで、そんな話って夜飯のときに話すんじゃねぇの??
最初は世間話から、前置きがあって、の、それ!!じゃねぇの???
2時間くらいの食事の時間を考えてのそれじゃねぇの???
オーダーを終え、メニューを持って店員が去るか去らないかくらいのタイミングでさっきの言葉を発するこの人は頭が大丈夫か?と思う。
単純な話、今の言葉だけ聞くと同じ社内だとしても他店からの引き抜きである。
正直人事異動に興味がない俺は毎回の人事異動にそわそわする社員に理解ができなかった。
『えっ?それって大丈夫なんですか??』
びっくりしたのと同時に単純な疑問を口にした。
その言葉を聞いた店長は口元を緩め安心したようでもあった。
『お前が今そう言ったことで俺の読みは正しかったと思うよ』
マジわけわらん…。
『まぁいいよ。お前の考えてることは理解できたから次の異動で俺の店な。』
いやいや、そんな簡単に異動ってさせられんの?怖いわ…。
そのあとは世間話をしながら食事をして解散になった。
引き抜きされたって思うとなにか期待されたり、なんか特別なことさせられるのかと思うとイヤになった。
あぁ…今日は雨だったな。