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「SNSで呟きたくなる仕掛けづくり」KATE・リップモンスターの遊び心を刺激する企画【コスメのTAKURAMI】
「TAKURAMI STORY」では、商品、映像、音楽、写真、物語など世の中にワクワクする企画を提案してきた方々をお招きし、業界や肩書に捉われず、その企みを紐解きます。今回登場するのは、化粧品ブランド「KATE」のPR担当・若井麻衣さんです。
10代から20代の若い世代を中心に人気を博す、KATE・リップモンスター。
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2021年5月の発売から2年足らずで累計出荷数800万本超えの大ヒット商品は、「憧れの日光浴」や「3:00AMの微酔」などリップの色名とは思えないほど一色一色がユニークなネーミング。
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手に取った人たちからは、「つけたままの色が落ちにくい」「マスクをつけても乾燥しにくい」など、痒いところに手が届く商品力を支持する声が多く聞かれています。
2023年3月25日からは、限定コレクション「MYリップモンスター」を発売予定。
話題にこと欠かないリップモンスターのPR担当者・若井麻衣さんに、どのような企画で大ヒットへつなげたのかを聞きました。
若井さんがヒットの要因に挙げたひとつが、「SNSで呟きたくなる仕掛けづくり」。それは、世の中のルールに縛られず、自分なりの考えで仮説を立てることから生まれたものでした。
仮説から踏み切った「呟きたくなる仕掛けづくり」
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──KATE・リップモンスターが累計出荷数800万本超えの大ヒット商品になれた理由は、どういったところにあるのでしょうか。
リップモンスターは、KATE史上最も落ちにくい口紅にしようと、ただ色が落ちないのではなく“つけたままの”色が持続する「色持ち」と、マスクをつけていても乾燥しにくい「保湿力」といった技術にこだわりました。
ただ、それだけではここまで売れなかったと思います。「なにこれ、面白い!」「こんなリップ知ってた?」と誰かに伝えたくなるような“SNSで呟きたくなる仕掛けづくり”があったから、商品力がしっかりと広がっていったのではないかと思っています。
──呟きたくなる仕掛けづくりとは?
一番はやはりネーミング。一般的に口紅やリップの色名は、「RD-01」のように色や番号が振られていることが多く、KATEから出していた口紅やリップもそういった形でした。
でもリップモンスターは呟きたくなることを念頭に、一色一色に「欲望の塊」や「ラスボス」など、リップの名前とは思えないようなユニークな色名をつけていったんです。
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──「呟きたくなる」という部分に着目したのはなぜですか?
リップモンスターを企画したタイミングがコロナ禍だったからです。外出が制限されている中で、みんなで楽しめて、コミュニケーションを取れる場はSNS上の世界がほとんどでした。
そういった中で呟きたくなるリップがあれば、コロナ禍でも楽しくコミュニケーションを取るきっかけになるのでは?という仮説のもと、それまでの常識とはまったく異なる色名とすることに踏み切ったのです。
──リップモンスターは発売からもうすぐ2年を迎えますが、2022年下半期のZ世代トレンドランキングでは「流行ったコスメ」で堂々の1位。一過性の盛り上がりで終わらず、継続して売れ続けている理由も気になります。
そこもやはり、話題性が途切れないように呟きたくなる仕掛けをつくり続けていることにあると思っています。
色名をユニークなものとしたあとは、外出制限がされている中でもメイクを楽しめる場としてTikTok広告を出しました。音楽とエフェクト効果に合わせてリップモンスターの色味を楽しめる演出も「面白い!」と話題になり、動画を使ってどんどん真似してくれる人が増え、大きく広がっていきました。
@01310mu どれも色合いが良くって可愛い!!どの色がタイプ??✨ #リップモンスター#PR
♬ リップモンスター - KATE
その後に公式サイトや公式SNSから打った施策が、「ミックスモンスター」。
メイクをもっと楽しんでもらいたいという想いから、リップモンスターを混ぜて重ねて、自分だけのリップメイクを楽しめる“ミックスモンスター”という提案をしました。そこでは色を楽しむだけでなく、色名を掛け合わせて、オリジナルの色名をつくる楽しさも広がりました。
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どんな商品もそうだと思いますが、「自由に楽しんでください」とそのまま伝えても伝えられる側は「自由に楽しむためにはどうすれば?」とつまずいてしまう方も多いと思います。だからこそ商品やコミュニケーションのどちらにおいても、メイクを楽しみたくなるワクワクする仕掛けづくりが必要だと、KATEは考えています。
2023年3月25日には、個性豊かなモンスター12体が1年を通して登場する限定コレクション「MYリップモンスター」を発売。誕生日や記念日、リップにデザインされたモンスターの好みなど、「自分なりの視点でリップを選ぶ楽しさ」を感じてもらえたらと、1年間で限定色を3色ずつ、4シーズンに分けて展開します。
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リップモンスターは、KATEのブランドステートメント「no more rules.」を体現する企画
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──商品力に「SNSで呟きたくなる仕掛けづくり」が掛け合わされて大ヒットした、リップモンスター。そもそもどんな背景から商品企画が始まっていったのでしょうか。
コロナ禍でマスク着用や外出機会が減り、それに伴ってメイク市場が縮小していく中で生まれたのが、リップモンスターでした。特に口紅やリップはマスク着用の影響を受け、市場が大幅に縮小していたんです。
世の中には「マスクをしているから口紅はしない」という空気が流れていましたが、KATEチームは本当にそうなのか?と疑いました。なぜなら、私たち自身がマスクをしていても口紅やリップをしていたから。コロナ禍になる直前まで韓国コスメなどの影響もあり口紅市場がすごく盛り上がっていたのも、世の中の空気や固定観念を疑う理由となりました。
メイク好きな人たちは、マスクをしていても口紅やリップをしたいと思っているのでは? 私たちはこんな仮説を持って、SNSで呟かれている声などを拾っていきました。
すると思っていた以上に、「マスクをしていてもメイクを楽しみたい」「口元が見えないからってリップをしないのはイヤ」という声があるとわかり、口紅の新商品をつくろうと企画が走り出したんです。
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──固定観念や世の中の常識を破って企画するというのは、「色+番号」でないユニークな色名をつけた話とも共通する姿勢だと感じました。
KATEにはブランド立ち上げ時から、「no more rules.(自分を縛る、ルールを壊せ)」というブランドステートメントがあります。それはお客さまに届けたいメッセージというだけではなく、KATEチーム自体がそうありたい姿勢なんです。
リップモンスターが色持ちや保湿力にこだわり、それを実感する反応をもらえているように、KATEの商品は昔から「痒いところに手が届く」と言っていただけることが多いんです。こういう商品が欲しかった!という企画は、世の中の常識を「本当に?」と疑うところから生まれるのかもしれません。
企画の一歩は、自分の考えを入れた仮説を持つこと
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──「no more rules.」の精神を企画で実践しているKATEチームにとって、企画とはどういったことを考えたり、形にすることなのでしょうか。
KATEとしての想いについて聞かれるとき、私たちは「メイク欲を刺激したい」と口にしています。
「メイクをもっと楽しみたい」「もっと新しい自分になってみたい」そういった気持ちを刺激してアクションを起こすきっかけをつくるために、商品企画やコミュニケーションの戦略を日々考えています。
KATEチームは、開発担当者からマーケター、PRまで全員が企画に絡んでいて、みんなが企画者。メイク欲を刺激するためのすべてのことが、私たちにとっての企画だと思います。
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──メイク欲を刺激するために、その仕掛けづくりにおいては、世の中のルールに縛られないだけでなく「仮説を立てること」も大切にされているかなと、ここまでの若井さんのお話から感じています。
企画する上で仮説を立てることは本当に大切なこと。リップモンスターの強みである「つけたままの色が落ちにくい」ひとつをとっても、仮説をもとにしたアプローチなんです。
SNS投稿から「マスクでリップが落ちちゃった」「時間が経って色が変わっちゃった」のような声を拾っていく中で、「つまり、色が落ちないのではなくつけたときの色が変わらないものが欲しいということでは?」と仮説を立てました。
私も口紅を購入するとき、お店やSNSで見た色が好きで、その色をつけたくて購入しています。同じように「つけたての色を楽しみたい」というニーズは高いかもしれない。そういうふうに「自分なりの考えを入れる」ことが仮説を立てる上で大事なことだと考えます。
世の中にある小さな声に自分なりの仮説を乗せて、大きなニーズにする。新たなトレンドの種はそうやって見つけていくのではないかと思うんです。
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■プロフィール
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若井麻衣
花王株式会社 化粧品事業部門マステージビジネスグループ KATE PR担当。2006年に株式会社カネボウ化粧品に入社し、約4年間ドラッグストアの店舗営業を担当。2018年よりKATEのPRを担当する。PR担当として、プレスリリース制作やイベント・発表会の企画運営などに携わる。
取材・文:小山内 彩希
編集:くいしん
撮影:飯本貴子