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恋せよ「戦術論」…。

「戦術論」が“からきっし”である。
“嫌い”ではなく“からっきし”なのだ、とついでに言い訳もしてみる。
スタジアムではおもに、選手の名前と「いいぞ、いいぞ」を連呼する「松木流」に属する私である。サッカー経験が中学、高校と6年間あるのに、である。
苦手なものは仕方がない。
もしも戦術論が「因果関係」と仮定するならば、目の前で起こる事象の結は受け入れることができても、その結果に至った時間を巻き戻しての原を探求する行為が苦手なのである。サッカー中継での解説、雑誌、ネットなどでの試合の戦術的寸評を目や耳にしても残念ながら苦手の前に
“さっぱり”なのである。「戸田流」にも「レオザ流」にも入門拒否される落第生だ。もはや私の受け入れ先は「前への推進力」と「おーーおっつつ!」を規範とする「健作流」しか残っていないのか?いやいや、それはそれで気乗りしない。むしろ拒否反応すらあるのは、なぜかしら?

しかし、である。今季我が北海道コンサドーレ札幌には新監督が就任した。今までのようにミシャ式の「いてまえ流」では観戦仲間からの評判も落ちてしまう。今季のフットボールライフを満喫するためには、言語化に長け、選手陣にももっぱら評判が良いとの噂で、「先生」との異名をとる監督の「戦術」を是非とも落第生の私も得とくし、納得し、習得し、妻と息子に披露したい欲も湧いてきているのである。「岩政流」への入門宣言だ。

しかし、また、しかしである。
そもそもフットボールにおける「戦術」とは何であろう?
「戦術の誕生の瞬間とその理由」は?
私は今季のコンサドーレライフの充実を課せられた一匹の子羊なのだ。
真摯に向き合うために得意の想像の旅にでる。
旅のお付き合いは今週運悪く<note>を開いてしまった皆さんである。そして私はみなさんと一緒に聖書<Bible>を開くのである…。

あなたは創造主である。”Creator”だ。
まず創造主のあなたは、フットボールが存在しない惑星に生物を22人創られた。この場合地球人になるべく近い体(できれば2足歩行)が好ましい。この22人を<アダムを中心とする赤黒ビブスチーム>と、<イブ率いる黄緑ビブスチーム>二つに分ける。そして主は「手は使わずに相手チームの長方形の枠にボールをより多く入れたまえ」と仰った。ゲームのルールを与えた訳である。(この点フットボールのルールは実にシンプル!)そして創造主は試合開始のホイッスルを吹く。どうなるか?22人の子羊達はボールに群がり我よ我よとボールを奪い合い蹴り散らかすであろう。
ボールの行先に22人が大挙する。四方八方に転がるボール。群がる集団。なかなかゴールは決まらない。主はその光景を見て仰った。
「つまらない」…。
いわゆる「団子サッカー」の誕生。
第一日である。

見かねた創造者は価値を与えた。「団子サッカー」を続ける子羊達に「より多く得点を決めたグループのみこの楽園に残れよ、敗れし者達は楽園からの去るのだ」と仰った。22人の子羊は色めきたった。目の色が変わった。そして考えた。やがて子羊の一人アダムはボールに群がる集団から一人離れた。すると群がるその集団からボールがこぼれ落ちた。いや、それは偶然を装う必然だったのかもしれない。こぼれたボールは勢いよくころがりひとり相手ゴール前にいるアダムのもとへ。無人のゴール。アダムは目の前のゴールへボールを蹴り入れた。主は仰った。「得点!」ファーストインパクト。アダム率いる赤黒ビブスチームは楽園に残った。イブ率いる黄緑ビブスチームは楽園を去った。オフサイドの制定される3000年前の出来事である…。

私は赤黒の【Bible】をそっと閉じ、再び考える。
妄想からの帰還…。
見知らぬ惑星に住む子羊達が創造主からフットボールのルールを与えられた時そこには「戦術」など存在しなかっただろう。
見かねた主が「楽園からの追放」という「勝負の価値」を与えた時、アダムがとった行為は記念すべき「戦術の一歩目」だったのか?
勝ちにこだわる行為=執着への思考がやがて戦術を生み、そしてそれを防ごうとまた新たな抵抗の思考「戦術」が生まれる。
そう考えると戦術論が苦手な私は今まで札幌のフットボールを見る時どこか勝負から目を背けていたのかもしれない。無論、勝ちを願ってはいた。しかし執着はあったのか?
札幌とわたしの長い付き合いがどこか優しく、どこか儚く、「勝負」そのものから目を背けていたのかもしれない。
だがフットボールが個人の創造と、見るものへの演出、そして勝負への戦術が「奇跡の黄金比」で成り立つときこそ人々は熱狂するのもまた事実。今季の札幌が「一年でのJ1復帰」が至上命題であるとしたら、北の地に降り立った新たなる創造主はどんな「ヒント」を迷える赤黒の子羊達に与えるのか。できる事ならどうかその「ヒント」が素晴らしき「黄金比」であらんことを。
私も今季はその赤黒の子羊達の群れに密かに潜り込み、創造主の「ヒント」を聞き逃さぬようにしたい。苦手な「戦術論」に向き合う決意だ。
できるかな?いや、挑戦しかない。
さらば松木、静かに健作である。
すなわちそう、恋せよ、戦術論なのである…。


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