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崩壊したデザイン組織を、もう一度チームにするためにしたこと (採用/チームビルディング/制作フロー構築編)
こんにちは、ココナラのデザイン責任者の外崎(@TakumiTonosaki)です。
デザインマネージャーの最初の1年間の奮闘記の後編になります。本記事ではチーム形成期の「採用」、「チームビルディング」、「制作フローの構築」について振り返りたいと思います。
(前編はこちら)
この記事について
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◉参考になりそうな人
・デザイン組織を立ち上げる人
・デザイン組織に課題を抱えている経営陣
◉書いてあること
・デザイン組織崩壊後、再びチームとして機能するまでやったこと
6.採用
1.情報をオープンにして、ミスマッチを防ぐ
採用での大きな課題が、入社後のミスマッチです。働いてみないとわからない部分はありつつ、僕らとしてはなるべく情報はオープンにして、納得感を持って入社して欲しいと思っています。
必ずお伝えしていることは、まず会社やデザイン組織の直近の課題とミッション。そして候補者の方にどういった役割を期待しているかは話すようにしています。
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同時に僕らの大事している価値観やスタンス、今のフェーズで活躍できそうな方・そうで無い方というのも率直にお伝えさせてもらっています。
特にココナラはカルチャーを大事にしているので、どんなにスキルがある方でも価値観が合わなければ採用は見送らせていただいています。
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2.エージェントとの関係構築、発信
採用の母集団形成において欠かせないのが、エージェントです。特にReDesignerさんに当初からお世話になっていて、彼らのネットワークを通じてたくさんの方とお会いさせてもらいました。
エージェントを使った採用は連携が大事だと思っていて、一緒に働きたいと思っているデザイナー像はもちろん、会社の価値観を知ってもらう必要があると思っています。
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そのために会社のバリューが書かれたカルチャーブックを配ったり、採用資料を読んでもらっていたりします。
担当の佐宗さん・宮本さん・石原さんはかなり距離感近く接してもらっていいます。特に宮本さんは、Goodpatch内の事業家育成プログラムでココナラを取り上げてくれているぐらい、当社の事業を分析してもらっています。
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このレベルで会社のことを知ってくれているエージェントは貴重だと思うので、一緒に採用をしていく仲間としてかなり心強い存在となっています。
そんな彼らだからこそ、去年はいくつか発信やイベントのコーディネートをお任せしています。
発信に関しては短期的な費用対効果がよく議論に上がりますが、デザイナーの採用市場においては情報がないことがマイナスになると思っています。
個人的にはオンラインイベントよりは、コンテンツとして残るものが良いと思っていて、採用時も候補者の方にコンテンツをシェアできて、面接時の話のタネになるので結果とても良かったと思っています。
3.とにかく人に会う
特に初期フェーズは、カジュアル面談含めて相当数の面接を行いました。多くの方からご応募いただいたので、「毎日選考している」という月もありました。
面談時ではこちらの見極めだけでなく、候補者の方もココナラに興味を持っていただけるように、会社のことや僕らが考えていることをお伝えしてきました。
僕の経験上ではデザイナーは100人選考して1人採用できるかという感覚なので、とにかく会うことが大事です。これはスキル的な話だけではなく、カルチャーフィットやその時のタイミングであったり、色々なご縁でこうした倍率になるのだと思います。
4.メンバーを採用に巻き込む
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採用でもう一つ大事にしていることは、チームのメンバーにも候補者の方と会ってもらうことです。これは採用活動に関わることで社内メンバーの組織づくりへの意識を上げること、候補者の方にチームの雰囲気を知ってもらうことの2つの目的でやっています。うちのメンバーは良いやつが多いので、僕と会うよりアトラクトになると思っています笑
5.経営陣を採用に巻き込む
経営陣を採用プロセスに巻き込むことも、とても大切です。うちの経営陣は得意領域が異なり、バランスが取れた素晴らしいチームです。僕も彼らに惹かれて入社をしています。
カルチャーフィットなどの見極めはしてもらいつつ、どちらかというとアトラクトの役割を担ってもらうことが多いです。代表の鈴木からは事業のミッションやプロダクトオーナーとしての考え方、会長の南からはココナラ自体のビジョンや社会的な意義などを話してもらっています。
経営陣からの1つ上での視座から話してもらうことで、「究極何のためにデザインをするのか?」を知ってもらうきっかけになると思っています。彼らの話を聞いてその場で即決という候補者もいるくらい、コミットしてくれています。
彼らには発信にも協力してもらっていて、経営陣の言葉でデザインや組織のことを語ってもらっています。
6.採用における反省
個人的な反省点としては、シニア・マネージャーレベルを早期に獲得できなかったことだとです。個人が高いレベルでバリューを発揮してもらうのはもちろん、ジュニアな子たちもシニアから学ぶことができるので相乗効果が出たりと、組織力にレバレッジを効かすことができます。実際にうちのチームもシニアデザイナーを獲得できてから、一気に組織としてのケイパビリティが上がりました。
ここを意識せずメンバーを増やしすぎるとマネージャーの負担が上がってしまい、非効率的な組織になります。採用難易度高いですが、一人目マネージャーの仕事は「シニアもしくは次のマネージャー候補を採用する」くらいの覚悟を持って採用活動するのをお勧めします。
7.チームビルディング
1.チームのビジョンやバリューを全員で言語化する
ココナラでは会社全体のビジョンやバリューはありましたが、デザイン組織のビジョンや価値観は言語化されていませんでした。
そこでチームが4人くらいになってから2日間の合宿を行い、全員で「ココナラにとって、どんなデザインが良いか?」という話を徹底的に議論しました。
合宿の流れについてには以下のような流れで行いました。
1.プロダクトやユーザーの全体像の共有(マネージャー)
↓
2.デザインする上で、大事にしたい価値観をキーワードだけ共有
(マネージャー)
↓
3.共有したキーワードについて、詳細にディスカッション(メンバー全員)
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サービスの全体像はカスタマージャーニーやペルソナを用いて説明しました。ここでのポイントは、ガチガチの定量データとかではなく、デザイナーにわかりやすい形で説明することが大事だと思います。
次にデザインする上での価値観をキーワードを作り、共有しました。共有したキーワードを元に、メンバー全員でディスカッションを行います。
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例えば価値観のキーワードの1つである、「直感的なデザイン」の事例を、各自メンバーが上げていってもらいます。それについて、なぜ「直感的」だと思うのかを説明してもらいながら、キーワードの詳細イメージをチームですり合わせていきました。
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このデザインの価値観に関しては、ココナラでデザインする上での「共通言語」にしたくて、「Design Language」と名付けました。
Design Languageを合宿後もチームで話し合い、下のスライドのように決定。これはデザインチームだけでなく、他のプロダクトを一緒につくるエンジニアやPMなどにも共有していています。プロダクトを作る際のデザイナーが大事にしているポイントを伝えるのに役立っています。
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2.ペアデザイン
チームの人数が増えていく一方で、マネージャーが一人ひとりに割ける時間が減ってきたことも課題でした。
そこで考えたのがチーム内で2人1組のペアになってもらい、1日30分ずつ時間を取ってお互いの制作物や仕事について、気軽に相談できる時間を作りました。
これは結果としてたくさんのメリットがあり、特に新しいメンバーと既存メンバーが組むことで、会社やプロダクトのキャッチアップに役立ったと思っています。
業務に必要な基本知識はメンバー間でキャッチアップできる体制ができてきたことは、マネージャーとして非常にありがたく、今ではメンバー同士がかなり柔軟にペアデザインに取り組んでくれています。
8.制作フローの構築
1.デザインの依頼の仕方を知ってもらう
デザイナーに課題をヒアリングしている中で「要件が不明確」という問題がある一方で、「受託的な扱いであると感じる」という悩みもありました。
良いプロダクトを作るためには、企画サイドとデザイナーの連携が不可欠です。そこで企画のメンバーにお願いして、下記のフォーマットに沿ってデザイナーに仕事を依頼して欲しいと伝えました。
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デザイナーに仕事頼むときのポイントは①「誰にどんな体験を提供したいのか?」を伝える、一緒に考える、②技術的な要件やhowを詰め込みすぎない、シンプルに伝える、ことが大事だと思っています。
①は言わずもがなですが、②関しては「デザイナーの考える余地を残す」、「要件をシンプルにすることで伝えやすくする、企画の工数を削減する」というメリットもあります。
2.デザインレビュー
デザインレビューは制作物のクオリティを上げるためには、かなり重要なプロセスです。まず大事なのは、メンバーにレビューの観点を知ってもらうことです。
試行錯誤を経て、レビューの観点チェックリストを作成し、自分のアウトプットをデザイナー自身に確認してもらうことにしています。
客観的に自分の制作物を統一されたリストでチェックすることで、品質を標準化することを目指しています。
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またリストには、チームのデザインの価値観である「Design Language」も項目として設定することで、改めてチームでの共通言語を自分のアウトプットで確認するという役割もあります。
デザインレビューの際に、もう一つ大事にしていることが、なるべくチームでも制作物をレビューすることです。
アイデアや観点の洗い出しという意味合いもありますが、メンバーにもレビューに参加してもらっている理由は、レビューする側に回ることでデザインを客観的にフィードバックする視点を養ってもらうというスキルアップの面と、他のプロジェクトがどう動いているのかを知ってもらうというプロダクトを理解するという2つの面があります。
レビューはする側も、受ける側もスキルやマインドセットが必要になります。ここは僕らも苦労した点で、適切な準備やマインドセットがないと、荒れたレビューになり、チームの雰囲気が悪くなってしまいます。
この課題感に対しては、「みんなではじめるデザイン批評」という本が参考になりました。デザインへのフィードバックのやり方、受け方、マインドセットなどについて書かれた本で、メンバー全員で読み合わせをしました。
特にレビューにおけるマインドセットや意見の伝え方はかなり具体的に書かれているので、本に書かれていることが実践できれば、レビューの精度はかなり上がると思います。
3.プレイヤーとして、プロジェクトに参加する
マネージャーがプレイングすることについては賛否ありますが、チーム形成の初期においてはそれなりにメリットもあると思っています。
まずはプレイヤーとして入ることで、現場のことやプロダクトのことを肌で理解できること。そして自ら実践することで、メンバーからの信頼感が作れることがあるかと思います。
僕の場合は8月にリリースされた新規事業であるビジネス購入専用のプラットフォーム、ココナラビジネスの大部分のデザインを担当したのと、トークルームという取引におけるUXの肝となる既存機能のフルリニューアルを経験させてもらいました。
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色々な反省はありつつ、ココナラにおける新規事業と既存の屋台骨となる機能の改修と新旧両面で関われたことは、サービスや事業を理解する上でかなり役立ったのと、チーム外のメンバーとの関係値も構築できたので、その後チーム内外でのいろんな活動の土台が作れたと思っています。
9.スタートアップでデザインチームを立ち上げる・マネジメントすること
スタートアップでデザイン組織を立ち上げて、マネジメントしていくことは苦労もあります。一方でこうした試行錯誤を重ねて行く中で、デザイナーとしても1人の人間としても、かなり成長させてもらっているなと実感します。
事業とデザインの関係を割とずっと考えて、説明したり、証明し続けていく必要があるし、そのための勉強やインプットも自然としていくようになりました。事業経営における「デザイン」の力を試せる立場なので、ここまで書いてきた通り様々なことを考え、実践し、時には失敗して改善していけることも日々学びが多いです。
事業会社おいてデザインの貢献の仕方を考えていく中で、ますますデザインの価値が実感できるようになったし、もっとデザインことが好きになったと思います。
あとは優秀な起業家や経営者、そして仲間と一緒に、新しい領域で社会的に意義のあるものを作っていけるのはやっぱり楽しい。大きなビジョンやミッションに向かいつつ、日々仲間たちと喧喧諤諤しながら、時には一喜一憂してものづくりができるのは幸せだなと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます。Twitterでも毎日デザインやプロダクトマネジメント、おすすめの本や思考方について紹介しているのでフォローしてもらえると嬉しいです^^
figmaのデザインマネージャーが、デザイナーのレベル定義をした話。
— 外崎匠 | UXデザイナー/プロダクトマネージャー (@TakumiTonosaki) May 16, 2023
作成のプロセス含めてかなり参考になるので、ポイントまとめる
◎作成プロセス
1.社内アンケート
2.他社調査
3.ドラフト作成
4.他チームのマネージャーからもフィードバックもらう
5.社内発表
(続く)https://t.co/uAOzYGWsxa pic.twitter.com/Yiy0Wl0AAD