適応力の正体
2023年も4月を迎え、自分の社会人生活も3年目に突入しました。あっという間です。3年目というのは、深すぎず浅すぎず、社会の構造、ビジネスの仕組み、学生のときにはふわふわしていたものたちの解像度が高まりだし、イキり出す、そんな年ではないかと思います。
ご多分に漏れずイキり散らかしていた僕は、同期と「自分の強みってなんだろう」という話をしていました。3年目に差し掛かり、自分が社会に提供できる価値とは何だろうか。他の社会人にはない、選ばれる理由は何だろうか、と。
すると、同期は「適応力」と言ってくれました。そしてそれは、今僕が出向で来ている会社の方が言ってくれたこととちょうど重なり、もしかしたらこれなんじゃないか?と薄ぼんやり思っています。
そしてこの適応力というのは、これまでの自分の過去、そして未来を考えると、磨いていきたい自分の特性の一つでもあります。なので、この適応力というものを自分なりに言語化し、自信につなげていこう、というのが本記事の試みです。
基本的には内的なもので、自分が満足できれば良いと思っています。同じように適応力に強みがあると言われたことのある方が読むことで、納得感や考えるきっかけを与えられることができれば嬉しいです。この単語は就活における「潤滑油」と同じくらい、ヌルヌルしたよくわからない抽象的な意味を帯びているので、具体を列挙することで、自分にも思い当たる部分を想起していただければなと思っています。
結論、僕の中で適応力は下記の3要素で構成されています。これが何なのか?一つ一つ順を追って、書いていきます。
①現状許容力
これは「いま起こっていることを偏りなく、受け入れる力」です。今までの経験や、過去正しかったことを一度すべて忘れ去り、こだわりフリーの状態で新しいことに臨める力です。
僕は小さい頃からゼルダシリーズが好きで、特に風のタクトは6週くらいしているのですが、2週目は1週目で集めたハート、お金、装備、全部まっさらな状態でゼロからスタートします。イメージ的にはこれが近いです。
基本的に人は未知の答えを出すときに昔の経験を掘り起こすので、自分が知っている範囲で一番近いところから答えを出そうとします。ただ、前提がいつも同じとは限らないので、同じ解を引っ張ってきてもうまく行かない場合は結構あります。ジャンプのできないリンクが、マリオの世界に行ってもクリボーを踏みつけられないのと同じです。
なので、一度状況を把握して前提を把握する必要があります。フラットに話を聞いたときにどこに問題がありそうか、昔のやり方で通用する部分・しない部分はどこか、クリボーに勇者の剣は通用するのか、クッパの吐く炎は盾で防げるのか…現状を偏見なく把握し、自分の手元の武器が通用するのかどうか始める前に見抜ける力が高い人は、適応力が高いと思います。
ちなみに僕は、ここの適応力が高くないです。今の会社が端的に言うと僕の2社目の会社なのですが、めちゃめちゃ過去の経験でゴリ押ししようとしてうまくいかないことが結構ありました。
ただ、「修正力」は結構あると思っています。やりながらうまくいかないところは現場の声を聞いたり、ミーティングしながらズレを修正してうまくまとまるように進めています。これができるのは、根本に「こだわり力の低さ」にあるかなと思っています。絶対にこうしたほうが良い、という押しの強さが自分にはないのが弱いポイントだと思っていたのですが、逆に言えば場に応じてひょいひょい変えていける強みにもなります。
昨今、アンラーニングが叫ばれまくっていますが、白紙で一度現状を受け止めて、新しく解を作っていく力、これは適応力の一つではないかなと思います。
②役割察知力
これは「周囲の人の役割、特性を理解して、自分の役割を見つける/創る力」です。他の人と重複していなかったり、まだ出せていない価値を見つける力のことです。
僕はバスケが好きでNBAをよく見るのですが、スリーポイント、ドリブルが神レベルのジェームズ・ハーデンという選手がいます。全盛期は1試合30点は当然のように叩き出し、得点王争いにもよく食い込んでいました。
ただ、5人全員ハーデンを揃えても連戦連勝できるチームができるかというとそうでもありません。このハーデン、オフェンスは超できますがディフェンスが鬼ザルなことで有名なのです。なので、5人全員ハーデンを揃えると、ディフェンスの強いチームに当たるとボロ負けします。
つまり、チームの中で役割が重複していたり、重複しているのに被った人以上の価値を出せていないと、お荷物になってしまうことが多いのです。なので、同じチームの中で自分の立ち回りを認識する力、この適応力は仕事をする上で重要になります。
ただ、ここはぶっちゃけ個々人がというよりかは管理職クラスが適切にリソース配分ができていれば自ずと担保されます。なので問題は、「入った後に何故かフィットしない」となったときに、どう対処するかを見極める力です。
方向性としては2つあって、1つは「被っているポジションの業務移管、別の業務に充てられる時間を増やす」、もうひとつは、「全く新しいかつ、できたらインパクトの大きい施策をスタートさせる」です。
前者はフォロワーシップ的な意味合いです。例えば、リーダーが担当している業務の一部を自分に移管し、リーダーがより重要な部分に時間を割けるリソースを作ることが価値になります。簡単に聞こえますがこれは結構難しく、リーダーと同じくらいの質と量をカバーできる力量が必要になります。なので、ここについていけるかどうか?矛盾的な表現になりますが、普段からフォロワーとしてどれくらいオーナーシップを持ってやれているかどうか?がここの適応力の鍵になります。
後者は僕の体感ですが、相当馬力のある適応力がないと難しいです。というのも、すでにインパクトが大きいであろう施策は緊急度も重要度も高いため実施されているケースが多く、ここで導き出せるのは良くて「緊急度は低いが重要度は高い」ものになりがちです。おそらく馬力のある人であれば、ここに入りながら徐々に緊急度の高さを周りにアピールし、自分に対して求心力を高めていくと思うのですが、かなり百戦錬磨でないと難しいイメージです。逆に言えばここができたら適応力は神クラスと言っていいのではないでしょうか。
これ意外にもパターンはたくさんあると思いますが、自分で思いつくのはこれくらいなので、平均クラスなのかなと思います。たぶん適応力がずば抜けて高い人は、ここの引き出しがたくさんあると思います。周囲を観察し、自分がどう動けば結果が出るのか、現状許容力と勝ちパターンの出し方の広さがこの要素を構成していると思います。
③対人関係75点叩き出し力
自分は結構ここが強い感覚があります。これが何かというと「コミュニケーションにおいて、ややプラスを継続的に出し続け、マイナスは出さない」力です。人あたりが良さそうとか、雰囲気が柔和とか、そういうオーラを持っている人には多いのでは無いかと思います。人の好き嫌いが少ない、上下関係の認識が良い意味であまり強くない、とかもこの特徴かも。
①にも関係しますが、個人を個人として接することができる(偏見をもたない)のと、「今話しかけないほうがいいな」「これは言わないほうがいいな」などの他人の負の感情ポイントに対する嗅覚が鋭いので、「なんとなく話してて気持ちのいいヤツ」という印象を持たれることが多いです。これがあることで、「必須ではないが、あったら嬉しくて、無いと困る」的なポジションを作ることができます。ルイージ的なポジションです。
これの一番の利点が、「どこでもある程度の関係性を作れること」です。僕はここに結構長けていて、東京恵比寿の会社だろうが、ケニアの土壁ライフライン全部なしホームステイだろうが、ミャンマーで僕が入るまでに5年間苦楽をともにしてきたメンバーの中に入るときだろうが、トルコでの留学生活だろうが、さほど人間関係だとか、順応に苦労した記憶がありません。というか、今までの人生で人間関係というものに苦労したことが一度もありません。(僕がニブいだけの幸せ野郎&若いだけかもしれませんが)
家庭がギスギスしていたこともあり、相手の壊れそうな堤防を決壊ギリギリで食い止める調和力的な部分は幼い頃に磨かれたか、という部分と、結構ユーモア(自虐力・機転力)には長けているほうだと自覚しているので、「適当に振っても面白い答え帰ってくるな」と使い勝手のいいクイックルワイパー的なポジションを獲得できているのかも知れません。
デメリットとしては、いざズバッとしたことを言おうとしたときに相手の感情に配慮しようとしすぎて思い切ったことを言えず、スタンスを切っていないナヨ虫野郎に映ってしまったり、ゴリゴリ進める推進力はないと思われがちなので、強気で攻めるが吉な場面では、このタイプは弱いのではないかなと思います。ただ、広く浅く、やりやすい環境を作るという意味ではこの適応力は強いです。
まとめ
ここまでをまとめると、以下になると思います。内的は自分で完結する部分、外的は自分以外の誰かを巻き込む必要のある部分です。今の自分の各要素の評価もつけてみました。現状許容力と役割察知力はもっと磨いていきたいところです。
適応力はキャリアに繋がるのか
色々と頑張って言語化してみましたが、「それって結局何の役に立つの?」が結構重要です。実利的なところでいうと、「キャリアに繋がるのか?」が一番大きいかと思います。
結論、ここはどれだけ磨いても転職だったり就職にはあまり役立たないんじゃないかなと思っています。ただ、ベーススキル・マインド的な部分として、自分はどこでも通用するという自信をもっておくためには重要なんじゃないかなと。
転職活動をまともにしたことがないので推測ですが、面接官が求めるのはこういう普遍的に通用するスキルよりも、営業だったりマーケだったり開発だったり、より特定的なスキル・経験なので、適応力はもちろんアピールできる部分ではあるものの、「持ってて当たり前」的な意味合いが強いと思います。
なので、自分に勢いをつけるためというか、ここは自分の強い領域だからなんとなくいけるやろ、的な謎の自信を担保するためにこの「適応力」を言語化しておくことは結構良かったと思っています。あとは、足りないところがどこかをあぶり出すための言語化。
僕もそうですが、自分に自信がない人は結構いいかも知れません。何かの参考になれば幸いです。