アフターデジタル時代のマーケティング思考:vol.1
~ビジネス・マーケティングそのものがデジタル化した時代の戦い方~
アフターデジタルというのは、デジタルが生活の隅々に浸透し、私達の生活そのものがデジタル化した時代のことをさしている。本連載はそうした時代のマーケティング思考法についてまとめていきたい。
「デジタルマーケティングではなく、マーケティングそのもののデジタル化」
デジタルマーケティングという言葉が躍っている。しかし、常々疑問を感じているのは、マーケティングという大きな傘の中に、デジタルというカテゴリーがある構造だ。この構造で今のマーケティングを捉えると、大きな間違いを犯す。私はそう常々感じている。
デジタルという”メディア”が出現した際に、そのデジタルメディアを活用したマーケティング≒デジタルマーケティングという領域が生まれた。しかしこのデジタルマーケティングは、”デジタルメディアの活用”を前提としたものであり、デジタルメディアの進化とともにその中身も専門特化してきている。すると、デジタルメディア活用をするだけで、あたかも”デジタルマーケティング”という取り組みをしているかのような錯覚に陥る。
一方で、私達の生活の大部分が”デジタル化”しつつある昨今、マーケティングもそのものがデジタル化しつつある。これは、世の中の生活者を知り、そのニーズを捉え、ニーズに合った商品・プロモーション・チャネルを創り出し、そこでの生活者の体験の評価を知り、そこから次のマーケティング活動に活かすといった一連の活動が、”デジタルを活用することで”シームレスに出来るようになっていることからも理解することが出来る。
具体的には、私達は大規模な調査をすることなしに、ソーシャルメディアのデータを活用して世の中の生活者が話題にすることを知り、自社のマーケットの中からターゲットの仮説をたて、そのターゲットに自社プロダクトの魅力を広告等を使ってあててみて反応を試し、優良なターゲットとなりそうな層を自社のメディアに誘導し、そのターゲットが自社のオウンドメディア上でどのような行動を起こし、実際に商品を購入してくれているのかを分析し、購入してくれた顧客がどれだけ商品を使い続けているのかを把握しながら、優良なファンになってもらうようにコミュニケーションを続けていく。これらを、顧客のデータを取得することで実現させていく。
私は様々な業種の数十を超える企業のマーケティングプラニングに携わってきて、その中で「マーケティングそのもののデジタル化」を本質的に理解し、”マーケティング思考”をベースにしながら、デジタル時代におけるうまい戦い方を視野にした戦略と戦術を組み立てていくことの重要さを痛感してきた。これは”デジタル”という大前提をとことん理解した上で、デジタル以前から変わらない”マーケティング思考”をしっかりと出来ること、これが重要ということなのだ。
デジタルマーケティングというくくりで入ると、この本質的にマーケティングをする為の思考法が抜け落ちてしまうことが多い、ということを伝えたい。
本連載においては、マーケティングを一貫した軸足として、デジタル領域・データ領域・メディア領域・システム開発領域と様々な領域を掛け算しながら積み上げてきた経験をもとに、アフターデジタル時代のマーケティング思考をまとめていきたい。
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