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「写真を撮る」から「AIで創る」へ:ストックフォト10年の転換点

ストックフォトで10年、累計で数億円の売上を経験してきました。
業界の先行き不安を感じて数年前に制作を停止しましたが、それでも現在も年間1,000万円ほどの収益が続いています。

こんにちは。PhotographerのTakumiです。

この状況の中で、なぜいまAIでストックフォト制作に再チャレンジしようと思ったのか、お話ししたいと思います。


はじめてAIで作ってみて

6ヶ月前、試しにAI画像生成を使ってストックフォトを作ってみました。
予想以上に効率的な結果が出ました。

・制作時間:従来の100分の1以下
・作業人数:1人
・初期コスト:1枚あたり50円以下
・承認率:95%以上
・最初の売上:なんと3日で発生 (掲載までは、審査に1ヶ月かかりました) ・制作実費コストの回収:3ヶ月

以前は高額な機材と外部スタッフにも協力してもらって撮影していたことを考えると、この数字には確かな手応えを感じました。

思わぬ収入源の発見

実は、興味深い発見がありました。

売上自体は予想を下回りましたが、別の収入源が見つかりました。以前からAdobeはAI画像生成の学習用データとして使用した写真に対価を支払っていましたが、驚いたことに、AI画像で作った作品に対しても学習使用料が支払われたのです。

さらに今年からは、動画コンテンツに対しても使用料が発生するようになりました。

私が以前実際に撮影したコンテンツにも、その対価が支払われました。
今後、私たちのコンテンツの売り上げが下がり、AdobeがそのAI画像生成から利益を上げ続けることを考えると、その対価が実写のコンテンツに対してはフェアなものかは分かりません。

なぜいまAIなのか

正直、最初はちょっと様子見程度のつもりでした。
でも、いくつかの理由で本格的に取り組むことにしました。

・支払いがほぼ確実なAdobeの学習使用料だけで制作コストが回収できそう
・半年前と比べてAI動画生成の効率が格段に上がっている
・新規投稿されるストックフォトの多くが、すでにAI画像になっている
・ストックフォト以外でもAI画像の需要が増えてきている
問題を抱えながらも、AI生成は楽しく、可能性を感じる

量で勝負する戦略

AI画像は、まだまだクオリティーや質感の面では実写の写真には及びません。でも、ストックフォトの世界では、必ずしも最高品質の画像が求められているわけではありません。

むしろ、用途に応じた「必要十分なクオリティー」の画像を、いかに効率よく提供できるかが重要なんです。

さらに、Adobeの学習用データとしての使用料は、画像のクオリティーよりも登録数に応じて計算されているように見えます。つまり、より多くの画像を登録することで、ストック自体の売上に加えて、学習データとしての収入も期待できるということです。

そこで考えたのが、量で勝負する戦略
具体的には30,000枚という目標です。

なぜこの数字かというと、私があるストックフォトサイトで公開しているコンテンツが約3,000点。その10倍を目指そうと考えたんです(他のプラットフォームの別のコンテンツも合わせると、もっと多くなりますが)。

正直なところ、これだけの数のバリエーションのある画像が作れるのか、そもそもストックフォトのプラットフォームに全て掲載してもらえるのか、まだ分かりません。

でも、これは「チャレンジ」なので、結果以上にプロセスを大切にしたいと思います。20,000枚で終わるかもしれないし、逆に勢いに乗って50,000枚まで行くかもしれない。

そんな未知の可能性に挑戦できるのも、AIツールならではかもしれません。

このプロジェクトの目的

先日、「フォトグラファーの仕事は"写真を撮ること"なのか、それとも"ビジュアルでメッセージを伝えること"なのか」という記事を書きました。

ストックフォトのような仕事に対して、私の結論は「効果的なビジュアルコミュニケーション」が本質的な仕事だということ。

だからこそ、今回は制作プロセスをできるだけ自動化して、その分の時間を「この業界では、何が必要とされていて、どんなコンテンツを作るべきか?」という本質的な問いに使いたいんです。

知見をシェアする理由

以前は、ストックフォトの制作方法をシェアすることを考えたことがありませんでした。特殊な機材が必要だったり、コストがかかりすぎたりで、情報を共有しても実際に再現できる人が少ないだろうと思ったからです。

でも、AIの場合は違います。基本的なツールさえあれば、誰でもチャレンジできる。私自身もこれからの挑戦ですが、もし私の考えている方法がうまくいけば、同じように皆さんも再現できるはずです。

...とここまでは理想として考えていることなのですが、正直に言うと、AI時代のストックフォトは将来的にはそんなに大きな利益が見込めそうにありません。大量生産はできそうですが、最終的な売り上げは未知数です。

なので、業界あるあるですが、「ストックフォトが売れないからストックフォトの作り方を売る」という道も模索してみようと思っています。

次回からの記事は一部有料にすることも考えていますが、その分、具体的で実践的な情報を惜しみなくシェアしていきたいと思います。

これからの展開予定

このプロジェクトを通じて、具体的な手法やツールの使い方の情報を発信していく予定です。

・効率的なAI画像生成の方法
・マーケットリサーチの自動化手法
・メタデータ管理のシステム化
・アップロードの自動化方法

おわりに

「AIによって仕事を奪われる」んじゃなくて、「AIで10倍のことができる」。そんな可能性を、一緒に探っていけたらと思います。

私の感じだと、ストックフォトの場合は10倍の量のコンテンツを10分の1の時間で制作できそうなので、100倍の効果がありそうです。

今更Pythonを学んだり、新しい学びがあって今は楽しいですが、暗室作業やPhotoshopを勉強していたときのような楽しさが続くとは思えません。

私の好きな写真を撮るという行為から離れすぎてしまっているのと、誰かの著作物から生成されているという根本的なAI創作物の問題が心に引っかかっているからかもしれません。

実は私自身、ストックフォト以外の自分の写真がデータセットに使われているのを確認しています。つまり、AIの学習データのために無断借用されている側でもあるのです。

フォトグラファーとして長年築いてきた作品が、許可も補償もなく新しい技術の糧になっている。その事実に複雑な思いを抱えながら、いまAI側に踏み出そうとしている。

まさに時代の狭間に立っているような気がします。

次回は「効率的なマーケットリサーチ」についてお話しする予定です。
お楽しみに!


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