ディープフェイク技術のストックフォトへの応用:モデル起用とニッチ市場の攻略法
ディープフェイク技術(DeepFake)は、多くの注目を集める一方で、悪用の懸念も伴っています。しかし、この技術を新しく有益な方法で活用できれば、大きな可能性を秘めています。
ストックフォトでの、ディープフェイク技術を考察します。
1. ニッチな分野で検索結果に出やすくする方法
2. ストックフォトのモデル探し
人気のある"businesswoman"という検索結果は8,361,270ありますが、それを200以下にしてみます。検索結果の1ページ目に掲載される可能性大。
ニッチなコンテンツを探る
ストックフォトのビジネスは、需要が高い映像や画像を提供することが重要です。Adobeストックの検索機能を利用すると、どのような画像や映像が多く、どのようなものが少ないかを把握できます。この情報を元に、ニッチな分野を特定し、そこに特化したコンテンツを作成することで、競争の激しい市場で差別化を図ることができます。
例えば、"businesswoman"で検索すると、膨大なコンテンツが存在します。8,361,354件です。
Race & Ethnicity
次に検索フィルターでRace & Ethnicityの”East Asian ”/ 人種(Race)と民族性(Ethnicity)にチェックします。そうすると検索結果は1/132の63,051件に減ります。
海外の人が、日本のビジネスウーマンのコンテンツを探す場合は、ここをチェックするかもしれません。この検索はモデルリリースに基づき、キーワード/タグ入力では機能しないようです。
モデルリリース
モデルリリースとは、写真に写っている人物が、その写真を商業的に使用することを許可する書類のことです。アドビのモデルリリースだと1の部分が検索の人種・民族性の検索に影響します。
さらに検索フィルターでAI画像生成にチェックを入れるとたった23件しか検索されません。
検索された画像を見ると、 いわゆる日本人のビジネスウーマンを連想されるイメージは1枚だけでした。 また、人物を実際に撮影して背景などをAIで加工していると思われるイメージが多く、いかにもAI画像生成されたと思われる画像は数枚しかありません。
この検索結果による実際の撮影コンテンツ63,051件とAI画像生成23件の比率はなんと1 / 2,741です。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
通常、AI画像生成のコンテンツの場合、そこに登場する人物は架空であるためモデルリリースの提出は求められません。 しかし、人物を特定できるかの質問に"はい"と答えるとモデルリリースを提出する必要があります。
例えば、実際に撮影した人の画像をサンプルにしてAI生成されたコンテンツをストックとして提出するのはどうでしょうか?
そうすることによって、人種と民族性の検索をした場合、他のAI画像では表示されませんが、モデルリリースを提出するので、検索結果に表示されます。
他の条件でも検索してみました。
もしも、Pacific Islander(太平洋の島々に住む人々やその子孫)の知り合いがいたら、モデルになってもらうのはどうでしょうか?それだけでAI画像、実写にかかわらず検索結果が1000件以内です。
実際にモデルを撮影して、ディープフェイクによって加工したコンテンツを提出することにはモデル探しの可能性が広がる別の利点も考えられます。
先に添付したモデルリリースの赤枠の2の部分には以下のようにあります。
モデルリリースの課題
ストックフォトのモデルリリースは、将来どのような広告に使われるかわからないため、プロのモデルにとってサインしづらいものです。例えば、ある化粧品会社の仕事をしている場合、その写真が競合他社の広告に使われるリスクがあるため、本職のモデルは通常ストックフォトのモデルリリースにサインしません。
ディープフェイクによる解決策
本職のモデルや女優がストックフォト用のコンテンツを撮影し、ディープフェイク技術で顔を変更することで、この問題を回避できます。これにより、モデルはストックフォトの仕事もでき、本職の活動に影響を与えることなく、収入を得ることができます。
有名人の顔の使用
最近では、有名人が自分の写真や動画の使用権を販売するケースがあります。
今後は 顔の使用権だけを与えて、実際の撮影は別の人で行い、ディープフェイク技術で完成させることも増えるかもしれません。
動画
さらに、動画にして検索の条件を絞ってみました。
動画は今後伸びていく可能性があり、販売単価も画像に比べて高額です。
検索結果は63,051件から12,308件。さらに1/5に減りました。
現在、AIで高品質な画像を作成する技術は非常に進化しており、クオリティの高い画像を生成することができます。しかし動画を一からAIで制作しようとすると クオリティーはまだまだです。
それでも実際に撮影された動画を使ったディープフェイクの動画のクオリティーは、既に十分なクオリティーです。
縦型動画
さらに、縦型動画にして、検索の条件を 絞ってみました。
検索結果は12,308件から166件。さらに1/74に減りました。
検索結果を見てみると、同じモデルのコンテンツも多く、 多くの男性コンテンツも含まれています。 日本人女性のビジネスウーマンのコンテンツをここに表示させることができればかなり優位なのではないでしょうか。
最近では縦型動画の需要も多く、各ストックフォトプラットフォームでも縦型動画の販売を開始しています。
縦型動画の可能性は、この本でも述べられています。
縦長映像の需要増加が見込まれる理由
スマートフォンの普及により、縦長の動画視聴が一般化している
縦長動画は視聴者の注意を惹きつけやすく、広告効果が高い
若年層を中心に、縦長動画の視聴が浸透しており、購買行動にもつながっている
ストックフォト業界への影響
スマートフォン向けのウェブサイトやアプリ、SNSなどで縦長の映像素材が求められる
広告動画やプロモーション映像の制作需要が高まる見込み
縦長映像に特化したカテゴリーやコレクションの充実が必要になる可能性がある
まとめ
ディープフェイク技術をストックフォト業界に有効活用することで、ニッチな需要に応じた高品質なコンテンツを提供することができます。これにより、モデルリリースの課題を克服し、本職のモデルや女優も安心してストックフォトの仕事に取り組むことができます。さらに、有名人の顔の使用権を活用することで、より魅力的なコンテンツを提供することも可能です。今後、ディープフェイク技術をさらに研究し、実際の応用例を増やしていくことが重要です。次回は、ディープフェイク技術に関するアプリやツールの検証結果について詳述したいと思います。