DXの全体像をつかもう
こんにちは、ベンチャーキャピタルSTRIVEの古城です。デジタルトランスフォーメーション(DX)というワード、最近ニュースやTwitterのTLで毎日目にしますね。DXって何?といわれると、アナログ⇒デジタル化、業務オペレーションの最適化、AIやロボットでの最適化・自動化、アジリティ(アジャイル的)etc、様々な角度からの答えがあり、全体像の把握が難しいテーマだと思います。DXは奥が深く、無限に議論できるテーマ(笑)な気もしていますが、今回は全体像をつかむことを目的に、以下4つの視点でDXを整理してみました。
1.DXの概念:提供価値向上や業務効率化が目的
DXは、経済産業省やIDC Japanの定義から、「提供価値向上や業務効率化を目的に、新しい技術を活用しながら、サービスやビジネスモデル、業務そのもの、組織、プロセス、企業文化・風土を変革する」ことだと解釈できます。提供価値向上は売上・顧客数の拡大、ロイヤリティの向上、参入障壁などに繋がり、業務効率化はコスト削減や人材などのリソース利活用に繋がります。また「社会や技術などの激しい変化に対応できる組織・企業文化をつくる」こともDXの大事な要素だとわかります(図1)。
【DXの定義】
●経済産業省(「DX 推進指標」とそのガイダンス)
"企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること"
●IDC Japan
“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(UX)の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”
※"アナログ⇒デジタル"や"AIやロボットでの最適化・自動化"もDXの一要素ではありますが、あくまで手段の1つです。
2.DXの手段:ビジネスやSCでテーマが異なり、必要なケイパビリティ・アクションは多種多様
DXの概念がわかったところで、解像度を上げてみます。DXについて議論する上で、B2B or B2Cの話なのか、B2Bの中でも業務オペレーション or サプライチェーン(物流 or 製造)なのかを把握することは非常に重要だと思います。これはそれぞれDXのテーマや必要となる施策が異なるためです(図2)。
例えば、B2Bでは本社の業務オペレーションだとワークフローのデジタル化・一気通貫化などがテーマですが、サプライチェーン(SC)の物流だと自動化やSCのシームレス化・最適化(いわゆるLogistics4.0)、製造だとIoT/AIによる見える化・最適化(Industry4.0)、B2CだとEC化/OMO(オンライン/オフラインの融合)やAIレコメンデーション、C2Cプラットフォーム(ライドシェアや中古売買など)と、テーマが全く異なります。それ故、DX実現には、それぞれ適したケイパビリティやアクションが必要です。
またDXは、各ビジネスにおいて技術の進歩とともにそれぞれ高度化してきました(図3)。自社の状況に鑑みて、どのレベル(フェーズ)のDXを目指すのか、どのようなステップ・規模感でやるのかは、DX実現においてとても重要な論点です。
3.DXのシステム:ソフト/ハードウェアを利用・連携し、ワークフローと共に最適化
DX、特に業務オペレーションのデジタル化・一気通貫化やSCのシームレス化・最適化では、ワークフローそのものの改革およびシステム設計の再構築が必要です。この際、数多くのソフト/ハードウェアを利用・連携させ、最適化していく必要があります。
業務オペレーションでは、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客管理システム)、会計・労務などの各種SaaS、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを利用・連携させたシステムを構築することで、デジタル化・ワークフローの一気通貫化を実現します。
SCでは、ERPやBI(ビジネス・インテリジェンス)、WMS(倉庫管理システム)、TMS(輸配送管理システム)などを活用し、自社およびSC前後のプレイヤーと連携させることで、SCのシームレス化を実現します(図4)。
他にも、SCの倉庫の自動化であれば自動倉庫やAGV(無人搬送車)など、需要予測に基づくSC最適化であればAIモデリング、工場の見える化であればIoTデバイス/プラットフォーム、調達の最適化であればB2Bマーケットプレイスなどのソフト/ハードウェアを利用することで実現します。
4.DXの組織体制:継続的にカイゼンできる体制・文化をつくる
冒頭で述べたよう、DX実現には「社会や技術などの激しい変化に対応できる組織・企業文化をつくる」ことが大事なため、継続的にサービス・システムをカイゼンできる体制・文化をつくる必要があります。
これ実現させるには、B2Cサービスであれば、顧客ニーズを知っているビジネスと開発チームが密に連携でき、自発的にカイゼンできるような体制・文化をつくるなどが考えられます。
B2Bの業務オペレーションやSCであれば、SaaS活用によるシステム標準化(脱カスタマイズオンプレミス)やIT人材の内製化(労働法の観点で限界がある模様...)、外部パートナーとのシステム運用の合弁会社設立(パートナーと利害が一致するスキームが必須)などが考えられます。ここ2-3年でアクセンチュアやIBMはDX施策で大手企業と合弁会社を設立しており、ベストプラクティスの1つになれば面白そうです。
おわりに
DXの実現には、現場にまだまだ紙・アナログ作業が残っている、経営のコミットメントが不十分、利害関係からSCを跨いだ連携が困難など、乗り越えないといけない課題が多いです。しかしながら、日本にとって、2020年代は人口減少の影響が深刻化していく時代であり、DXによる労働生産性向上は必要不可欠です。またコロナ対策として、オンラインでの顧客体験向上やSCの自動化・最適化も推進するべきだと思います。STRIVEでは、このような社会問題の解決に取り組む企業さまに積極的に投資して参りますので、事業の壁打ちや資金調達のご相談など、ご気軽にFacebook、TwitterでDMください!良ければフォローもよろしくお願いいたします!
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<参考文献>
・経済産業省:産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進
・IT Media:特集:DXを成功させるための組織論
・LayerX福島氏:LayerXが、電子契約・銀行API・クラウド会計と組む理由
・DMM.com松本氏:DX(デジタルトランスフォーメーション)とはなにか、そして何ではないのか
・下町柚子黄昏記(Twitter: @yuzutas0):DXに関する私的な殴り書き