【短話】鬼百合

「夜は鬼が出るよ！ 食べられちゃうよ」

母は冗談めかしてよく言った。幼い私は震え上がり、日が暮れ始めると足早に家に帰った。ビーフシチューの匂いが強張った体をほぐしてくれたっけ。父は夜勤だったので、夕飯を食べるとすぐに出かけた。

子供らを見ると思い出す。

今晩は何を食べようか。