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印刷物は画素の集合体・意外と理解されない「dpi」

最初からちょっと専門的な話をします。
「dpi」という単位があります。日本語では解像度と言われる場合が多いかな。dots per inchの略です。

オフセット印刷の場合、dpiは350~400dpiです。モノクロ新聞紙の写真は200~250dpi。テレビやモニター画面にも解像度があります。モニター画面の一般的な解像度は72dpi。

「dots per inch」とは、1インチの幅の中にどれだけのドットを表現できるかと言うことです。
解像度が高い=dpiの数値が大きいほど高品質な印刷ができます。
モニター画面では高品質・高機能と言われます。

何故ドットが…という考え方を理解されてない人が意外と多いので、少し解説をします。
画素(ピクセル・pixel)とは、表示する最小単位の点(ドット)です。
写真にせよ文字にせよ図形にせよ、すべて画素で表示されます。
今回は特に写真の表示を中心に説明します。

画素をその解像度でモニター画面を構成したものが、「数百万画素のテレビ」と呼ばれます。
ハイビジョン(HD)…1280×720pixel…92万1600画素
フルハイビジョン(フルHD)…1920×1080pixel…207万3600画素
4K/Ultra HD(UHD)…3840×2160pixel…829万4400画素
小生最初のパソコン、NEC・PC98XLのモニター画面は640×400pixelでした。25万6000画素です。

私たちが生きている世界は、何処を見てもドットはありません。
投手が投げ空中にある野球ボールは孤立して存在しますが、それでも画素は見えません。

同時に印画紙に現像された写真も、すべてのグラデーションがアナログとして繋がっています。
しかしそれをデジタルの世界に持ってくるには、画素を使う必要があります。画素とはドット、それが解像度「dpi」です。

いま手元にある写真10×10cmを、72dpiのモニター画面で10×10cmで表示させるには、72dpiの分解能でスキャニングします。

1inch=2.54cmだから、10cmは約4inchと換算して72×4=1ライン288画素で、画像を表現する必要があります。
モニター画面の写真部分には、8万3000画素が必要となります。

400dpiのオフセット印刷の場合、10×10cmの写真は400×4=1ライン1600画素のデータが必要になります。印刷物にプリントする写真部分には、256万画素が必要となります。

B全のポスター(728×1030mm)なら一体何画素いるんだ?となりそうですが、遠くから見る前提のポスターは、通常約200dpi程度でOKと言われています。

スマホカメラの解像度は1200万画素が主流です。自分が撮った写真のデータは、画素数不足ということはほとんど起きません。
対して、ネットで見て「いい絵だな」と思い、絵のデータをコピーして印刷に使用すると、多くの場合に画素数不足になります。

ボヤけて見えます。72dpiの画面できれいに見えても、400dpi必要な印刷では画素数不足なのです。(もちろんプライベート以外で使用する場合は著作権のことも考えなくてはなりませんね…)

PhotoShopなどの画像を扱うソフトでは、「画像解像度」のメニューで、当該画像は……ピクセル数=600×300pixel(21.27×13.72cm)・解像度72pixel/inch……という風に表示してくれます。

600×300pixelが総画素数で、72dpiで表示なら(つまりモニターなら)21.27×13.72cmになるという意味です。
この入力画面で解像度72を400にすると、ピクセル数=3334×2161pixelに表示が変わりリターンキーを押すと、3334×2161pixelのボヤけた画像が表示されます。これは単純計算で画素を5.56倍にしたためです。

これがネットではきれいに見えていたのに、印刷ではボヤけた原因です。
ボヤけた写真データのノイズを取る、シャープにするなど多様なフィルターもありますが、ここら辺の話は本来、画像レタッチ・オペレーターの仕事でしょう。今回は省きます。

逆のパターンもあります。オーバースペック。過剰性能・過剰品質ですね。
昔、まだアナログデザイナーが幅を効かせていた頃の話です。「dpi」を理解していないデザイナー・A氏がいました。
そのデザイナーさんが仕事した、パンフレットの修正を任されたことがあります。40頁ほどの学校案内。きれいな写真で構成された、格調高い学校案内でした。

その印刷の修正の話です。例えば20×20cmの写真…400dpiなら3150×3150pixelです。これをCMYKモードにして、印刷仕様のepsファイル(JPEG圧縮)で保存すると、2.6MB程の容量になります。

これが本来の適正容量です。しかしこの画像を古くからあるTIFFファイルで保存すると30MBになります。(JPEG圧縮ができません)

さらに悪夢は続きます。この20×20cmの写真を、A氏は5×5cmにIllustrator上で縮小していたのです。それを4枚並べてレイアウト……分かりますか? 本来は2.6MBの写真と少しの文字データのはずの1頁が、30MBのTIFFファイル4枚=合計120MBのデータが1頁に貼り付いていました。それが40頁です。

まずQuarkXPressファイルを開くのに10分くらい掛かりました。小生はQuarkXPressで、暫く作業して諦めました。普通、私たちは何かの作業をした場合、ちょくちょくセーブします。動きません…。仕事になりません…。

結局諦めた小生は、まず全部の写真データを適正dpiに設定し、epsファイル(JPEG圧縮)に保存し直し、再配置しました。
これだけでその後は見事なほど、QuarkXPressがスムースに動くようになりました……とさ(笑)。

新しい技術が生まれ発展していく時には、こういうことが起きますよね。みんなが1から勉強し始める訳ですから。知ったかぶりする人が得をするのか、損をするのか?

今回は専門的な話でうまく伝わったか不安ですが、「dpi」に関しての古今の話でした。

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