スランプ? 単にブレの範疇じゃないですか? という話~応用(標準偏差)~
■標準偏差
最初に書いておきます。 ちょいとややこやしい話になりますので、数字に弱い人はここは読み飛ばしてもOK です。 内容はブレを数字で表すぜ、という話。
「いや、大数の法則は分かるけどさ、ホントに数字のブレかどうか分からんの よ。。」
と思われる方もいるかもしれません。そういう方は「標準偏差」について覚えておくとよりいっそうこの「ブレ」に 関して理解が深まるでしょう。 以下、かなり小難しい内容ですが、気合いで概念だけでも覚えておいて下さい。 この概念を覚えておくと、ブレに関して心の余裕が増えます。 もう少し平たくいうと、結果に神経質にならずに平静でいられるようになります。
「あぁ、先月、今月と●件しか取れなかったよ。。スランプじゃね、、はぁ、憂鬱だ」
なんていう不安が、かな~~り解消されます。
「え?それくらいの事しか期待出来ないの??」 という方は、、恐らく殆どいないでしょう。 えぇ、心の持ちようが営業結果に与える影響が非常に大きいのは皆さんもきっとご存じでしょうから、ね。
【そもそも安定しているとは?】
「この人の成績は安定しているよな~」という人、間近にいないですか? 毎月コンスタントに契約を取り続けている、と。
そもそも安定しているというのは営業の世界でどういう意味か? というと…
「契約数のばらつきが少ない、ブレの少ないもの」
という意味になるんですね。 以下、ちょいと例を。
<テストの成績比較(5回テストをした)>
A君 100点 50点 100点 70点 30点
平均=(100点+50点+100点+50点+30点)÷5=350 点÷5=70点
B君 75点 65点 70点 70点 70点
平均=(75 点+65 点+70 点+70 点+70 点)÷5=350 点÷5=70点
はい、共に平均点は70点となりますね。 が、B君は安定して平均点の70点近くの成績をコンスタントに出しているの に対し、A君は平均よりズバ抜けていい時もあれば悪い時もある~という波があるという事が分かると思います。
どちらの方がより安定した力を発揮するか? という見方をすると…明らかにB君になりますね。このように、バラツキが大きい事を「ブレが大きい」という事が出来ます。
【ブレとは何?】
バラツキが大きい、小さいというのが存在するのはお分かりに頂けたかと思いますが、じゃぁ「何に対してのバラツキなのよ?」と疑問が出るかもしれません。 答えは…「平均からどれだけズレるか(ブレるか?)」 と、平均を主軸に考えるのですね。 はい、上記のテストの例ならば「70点という平均点からのブレの大きさ」 に なる訳でして。
これが営業となると「平均契約件数からのブレの大きさ」になるんですね。 年間平均48 件月平均4件の人の場合は、月ベースで考えるなら4件という平 均件数からのブレの大きさ、という感じ。
以下具体例を。
【具体例】
<A君(5ヶ月の成績)>
5件 10 件 3件 1件 1件 (月平均契約件数4件)
<B君(5ヶ月の成績)>
5件 4件 3件 4件 4件 (月平均契約件数 4 件)
はい、共に月平均契約件数は4件となりますが、A君はジェットコースターのように増減し、B君は安定した成績を残しているという事がお分かりになるかと。
まぁ、感覚的に理解するだけでも特に問題ないですが、このブレの大きい・小 さいを見極める数字というもの、存在するんですね。
以下、それをちょいと書いていきたいと思います。
【標準偏差の計算】
まぁ詳しい説明は除きますが、以下のように計算されます。
$$
標準偏差=\sqrt\frac{平均件数と実際の件数の差)^2の和}{データ数}
$$
これに当てはめ、B君の標準偏差を計算。
$$
\begin{array}{}x&=&\sqrt\frac{(5-4)^2+(4-4)^2+(3-4)^2+(4-4)^2+(4-4)^2} {5}\\&=&\sqrt\frac{1+0+1+0+0}{5}\\&=&\sqrt{0.4}\\&=&0.632455532\end{array}
$$
同様にA君の標準偏差を計算すると3.34664011になります。
※まぁA君を3.3、B君を0.6とします。
はい、ここで非常に頭が混乱したかもしれませんね笑 この計算式にて実際に自己で計算を~という事はまずないと思うのでご安心を。 取りあえずここでは「標準偏差とは、バラツキの事をいっているんだ」という事が頭に入ればOKです。
はい、ぱっと見ても分かったでしょうが、A君の成績は異様にバラツキがある訳ですな。でもって標準偏差も 3.3 という数字に。 B君の成績もぱっと見て分かるように逆に非常に安定している訳ですな。でもって、標準偏差は 0.6 という数字に。
こむずかしい事を書いて何がいいたかったか? というと…
『パっと成績を見たらバラツキがあるか安定しているか分かるのと同様、標準偏差のみ見てもバラツキがあるか安定しているかが判断出来る』
という事ですね。
イメージで分かったかもしれませんが、標準偏差の数字が大きくなればなる 程「バラツキが激しい」人になる訳で、逆に小さければ小さい程「安定した成績を残している」人になるんですな。まぁ、ここの点のみおさえておけば実はいいのですが、もうちょい突っ込んで標準偏差は知っておいて損はないでしょう。
σ=68.26%が標準偏差の数字内の増減に当てはまる
2σ=95.44%が(標準偏差の数字)*2 の増減に当てはまる
3σ=99.73%が(標準偏差の数字)*3 の増減に当てはまる
※σ=シグマと読む。標準偏差のこと =シグマと読む。標準偏差のこと
細かい証明は割愛しますが、これをB君の0.6の標準偏差で表すと…
68.26%が4件±0.6 件に当てはまる(3.4-4.6件)
95.44%が4件±(0.6*2)件に当てはまる(2.8-5.2件)
99.73%が4件±(0.6*3)件に当てはまる(2.2-5.8件)
当然、絶対とはいえませんが、99%以上B君は月2.2件以上になるもの、とい う事が出来るんですね。
A君に同じように当てはめてやっていくと……ふははは、プラスマイナス、どう転ぶか分からないよ~という訳でして笑(計算するまでもなく分かりますな)
まぁ、一つの目安として「平均契約件数-標準偏差」にてマイナスになるようだと、かなりハイリスクな人、どう転ぶか分からないよ~と見てしまっても問題 ないでしょう。
逆に3σを引いてもプラスになるような人は素晴らしいですね。
何はともあれ、標準偏差の概念を知っていれば「ここ3ヶ月程、数字取れてないけど、単なるブレの範疇内に過ぎないよな」と解釈できるようになるので、精神的にかな~りラクになるよ~という話でした。
$${2^2=2*2}$$、$${3^2=3*3}$$
√a とは、2乗して a になるような数。√4なら 2^2で2、√9 なら 3^2で3
ここの内容は数学1(高校数学)になります。興味ある方は古本屋あたりでチャート式を購入、読んでみることをオススメします。
■長期に見るデータ
最初に書いておきますが、この内容が今回自分が書く内容の中で一番難しいです。数式の証明までは、、まぁ興味ある方は覚えて貰って結構ですが、「もう頭痛いよ、、」という方は、概念だけ頭に入れておいて下さいませ。
月間標準偏差から年間標準偏差を求める式というのは…
標準偏差*√12
という式になります。 これを応用して「2 ヶ月の標準偏差」という変則的なものを求めてみますと月標準偏差が仮に2件ならば、 2 件×√2=2.8284271 となります。 ※計算上面倒なので 2.8 とする
月平均契約件数が4件となるのなら「2 ヶ月の平均契約件数」を出すと、これ は単純、8 件(2 ヶ月)となりますね。
1 ヶ月の場合ならば…
σ=2~6件の間に入る
2σ=0~8件の間に入る
となるのが、2ヶ月となると
σ=5.2~10.8 件の間に入る
2σ=2.4~13.6 件の間に入る
うぅ、2 ヶ月だと分かりづらいかも。
一気に 5 ヶ月としてみましょう。
2 件*√5=7.07(計算上面倒なので 7 とする) 5ヶ月単位での平均=20 件
σ=13~27 件の間に入る
2σ= 6~34 件の間に入る
ま、何が言いたいか?というと、月平均4件(ブレ2件)の人が5ヶ月で取れる数字は13-27件であり、これに当てはまるようなら「スランプでも何でもなく単なるブレの範疇内」と解釈するのが正解だよ~という話でした。(ぶっちゃけ2σまではよくある話です)
■まとめ
毎月の契約件数から月平均件数を算出
月平均を出したら気合で標準偏差を求める
ここまでやれば成績に一喜一憂しなくなる(スランプに異様になりにくくなる)
ま、ぶっちゃけ確率の収束までで十分のような気もしますが、標準偏差は何かと応用が利くので覚えておいて損はないでしょう。(特に投資の世界とかに有効)
■補足?
ここ数回だけみると「おいおい、たくみさんは理系かよ……」と思われる方もいるかもしれませんが、自分は理系出身でも何でもないバリバリの文系出身です。
ただ、こういう数字での解釈が出来ると出来ないとでは精神的にかなり違う事に気づき、保険屋になってから高校数学の教科書を引っ張り出して勉強を1からやりなおしたのでした。(生保研修で一番最初に学んだ「大数の法則」に感銘 を受けて、標準偏差まで勉強したのは自分くらいであろう笑)
何とかいって、営業は「メンタル面がかなり大きく影響する」ものですからね。 知っている事で不安が一つ解消されるならば、それに越した事ないですし。