きっかけとなった派生開発プロジェクト① コーヒードリッパー開発秘話 #2-1
コーヒードリッパー開発に至る3つのきっかけ
これまで連載してきた工業用ポンプメーカー発のコーヒードリッパークラウドファンディングプロジェクト。
クラウドファンディング本編のお話は終わりましたが、時間はさらにさかのぼり、今回から4回に分けてきっかけ編をお送りします。
初BtoCのコーヒードリッパー開発、クラウドファンディング・・・じつはこのプロジェクトに至るまでは、3つのきっかけがあったのです。
ひとつは新型コロナウイルス。
ふたつ目は以前とん挫した派生品開発プロジェクトのなかでの体験。
みっつ目は、ある音声メディアでの言葉です。
ひとつ目は初回に配信しているので、今回はそのふたつめ。とん挫した派生品開発プロジェクトのお話です。
大元のストレーナー
わたしの会社は、もともとは工業用ポンプを販売しながら、最近では保安用ストレーナーも販売しています。
「ストレーナー」とは、直訳すると「ろ過器」のこと。
一般的には金網のメッシュ構造でろ過をするものが大半のなか、半導体業界でも使われるような「フォトエッチング」という技術を使って、ステンレスの板を溶かして孔をあけています。
このろ過器で「通常は異物が入ってこないところに保安的につけて異物混入を防ぐもの」が、販売している保安ストレーナーの役目であり、用途です。
金網の場合は、穴が広がってしまうことや、金属の線がとれてしまって流れていってしまうことがあります。
溶かして孔をあけているストレーナーだと、このどちらのリスクもないので、飲料や化粧品、医療品など、異物混入が絶対NGな製品を作る工程で使っていただいています。
この製品を販売しているなかで、じつは「業務用コーヒーメーカー(機械の話です)用にステンレスフィルターが使えないか?」と話を進めていたことがありました。
その業務用コーヒーメーカーは、コーヒーをつくる過程で紙フィルターを使うタイプ。
それを、ステンレスフィルターに置き換えれないか?という話です。
紙フィルターとステンレスフィルターの構造的なちがい
そもそも、紙とステンレスでは、コーヒーの粉をろ過する構造がまったくちがいます。
紙はいろいろな形・大きさの繊維でできているので、大きな粒子も小さな粒子も、「適度に」つかまえます。
フォトエッチング技術を使ったステンレスフィルターは(ほかの手法のステンレスフィルターもあります)、孔以上に大きい粒子はしっかりつかまえて、これより小さな粒子はそのまま通します。
このちがいから、紙フィルターはオイルをつかったコーヒーは滑らかな舌触りで飲んだ後にカップの底にあまり粉が残らないのにたいして、
ステンレスフィルターをつかったコーヒーはすこしざらざら感があり、飲んだ後にカップの底に粉が残ります。
(海外の方にはこのざらざら感が「ちゃんとコーヒーを飲んでいる」という感覚があって好まれるのにたいして、日本人は逆の傾向にあるとの話も。)
でもその代わり、ステンレスフィルターはコーヒーの香りが強くなります。
香りはコーヒーオイルに含まれますが、紙フィルターはこのオイルを吸着してしまうからです。
コーヒーは嗜好品なので好みの問題もありますが、良くも悪くもこのような違いがあることから、紙フィルターからステンレスフィルターに変更するとどうしても味が変わってしまいます。
この変化をできるだけ少なくできるよう、ステンレスフィルターをできるだけ紙フィルターに近づけられないか・・・と試行錯誤していました。
ステンレスフィルターを紙フィルターに近づける逆転の発想
コーヒーは味と同時に香りも楽しむものでもあるので、ステンレスフィルターをつかうことによって香りが強くなることは良いことです。
あとは、紙フィルターのように大きい粒子と小さい粒子をほどよくつかまえることが課題でした。
そこで対策として行われたのが、金属の網目化。
ようするに、金属を紙フィルターみたく金網形状にしてしまおう、ってことです。
フォトエッチング技術はいずこへ・・・(笑)。
結局金網になってしまう、という逆転の発想です(笑)。
実際にはふつうの金網ではないすごい技術を使ったのですが、それは企業秘密。
これによって、味をはじめより紙フィルターに近づかせることができました。
・・・と、ひとつめの課題をクリアしたところで本日はいったんここまで。
つづきはまた明日配信します。
▼クラウドファンディングと連載リンク▼
▽クラファンで目標188%達成したドリッパーはこちら▽
▽開発秘話 本編▽
#1 閉塞感から始まったコーヒードリッパー開発
#2 ひとつめの落とし穴
#3 科学的な味の追及方法
#4 クラウドファンディング出品ではどのサービスがいいのか?
#5 プロダクト開発で問われる〇〇力
#6 カンタンにユーザーの声を集計する方法
#7 プロトタイプのチカラ
#8 デザインに"賭ける"のはコストの無駄遣い
#9 素人とプロの違い
#10 食品プロダクトの壁
#11 プロモーションがもっとも効果をあげるタイミング
#12 達成率95%と29%のボーダーライン
#13 設定ミスで失ったメリット
#14 プロダクト販売に使うECサービスはどれがいい?
▽開発秘話 きっかけ編▽
#2 -1 きっかけとなった派生品開発プロジェクト①(本記事)
#2-2 きっかけとなった派生品開発プロジェクト②
#2-3 きっかけとなった音声メディアの言葉
#2-4 体系化されているアイデアのつくりかた