iPhoneは本当にプロダクトアウト?#前編 ~2種類のニーズ~
ビジネスの勉強をしていると、たまに、「iPhoneはプロダクトアウト、スマホはマーケットイン」「プロダクトアウトの例は、ウォークマン(SONY)やiPhone」と書かれているのを見ます。
プロダクトアウトアプローチは、サービス提供側が「作れるものを作る」「作りたいものを作る」もの。
簡単に言えば、プロダクトアウトは大量生産時代の昭和の製造業、というイメージです。
マーケットインアプローチは、ニーズのあるところにサービス・商品を作り込んでいくものです。
たしかに、iPhoneのあとに登場したAndroid製のスマホはマーケットインの定義に当てはまりますが(iPhone登場前にもスマホと呼べそうなものはありましたが、ここでその歴史は割愛します)、本当にそうなのでしょうか?
レベル1のマーケットイン
マーケットインをもう少し詳しく説明すると、企業が製品やサービスを開発するときに、ユーザーや市場のニーズをしっかりと調査・分析して、それに合った商品を提供する戦略のことです。
この「ニーズをしっかりと調査」するというところに、じつは見落としがちなポイントがあります。
それは、ニーズには2種類あるということ。
たとえば、
これが一つ目のニーズ、顕在ニーズです。
このように顕在ニーズは、ユーザーが自分自身で欲しいものややりたいことを自覚している、ということ。
つまり、とてもわかりやすいものなんです。
マーケットイン戦略を使う場合、多くはこの顕在ニーズを調査して、製品やサービスをつくっていきます。
具体的には、「暑い日には何が欲しくなりますか?」というアンケートを取って、「冷たい飲み物」という回答を確認して、暑い日用にキンキンに冷えた飲み物を作って販売する・・・ということ。
しごく当たり前のように思えますが、これは初歩のマーケットイン。
基本中の基本です。
わかりやすくてやればできるレベルの基礎なので、さまざまな企業が行っています(BtoB業界(法人向け)など、まだまだできていない業界もありますが・・・)。
BtoC業界(消費者向け)はこのマーケットイン戦略が製品開発の基本となっているので、他社も同じことをしています。
つまり、同じ顧客の同じニーズを取り合っている状況なので、これでは競争が激しくて、あまりビジネスとしてのうまみ(利益)が少ないやり方でもあるということです。
隠れているニーズ
では、もっとうまみのあるところへ・・・ということで、次のレベルにステップアップできればいいのですが、これがカンタンではありません。
なぜなら、次のレベルは一気に10くらい飛ぶからです(笑)。
そして、いまだにわたしもうまくできません(笑)。
このレベル10のマーケットインに必要なのが、二つ目のニーズ、潜在ニーズです。
たとえば・・・
このとき彼は、元々おしぼりが欲しいとは思っていませんでした。
でもそれを受け取ってみると、不快さを感じていた自分にぴったりなものだど気づきました。
ユーザー自身が気づいていなかったけど、じつは必要なもの。
隠れているけどじつはユーザーに必要(需要も大きい)なものが、潜在ニーズです。
想像できないものは欲しくないわけではない
では、ウォークマンやiPhoneはどうだったのでしょうか?
もちろん、ウォークマンもiPhoneも、発売される前には「外出中も手軽に音楽が聴ける機械」や「パソコンのようにいろいろなことができる(ほぼ)全面タッチパネルの携帯電話」なんてものを欲しいと思う人はいませんでした。
でもそれは、ユーザーがそんなことができるとは知らなかったからで、欲しくないと思っていたわけではありません。
つまり、これらは潜在ニーズだったのです。
車を普及させたヘンリー・フォードは、
と言っています。
移動手段が馬だった時代に、ユーザーは車という移動手段は想像できませんでした。
でも、知らないもの・想像できないものは、欲しくないわけではありません。
馬より速く移動できるなら、車をめちゃくちゃ欲しがるのは当然の反応です。
長くなってきたので、前編はここまで。
次回は、次のレベルのマーケットインアプローチについてお話します。
▼後編〜究極のマーケットイン〜▼
▼プロダクトアウトじゃないiPhone▼
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